イメージワン Research Memo(5):事業構造改革を断行、特別損失計上後も財務体質は極めて健全
[19/07/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. フロー利益は順調とは言えないが、2019年9月期第2四半期の特別損失計上後も財務体質は健全
2004年3月、イメージ ワン<2667>は伊藤忠商事<8001>を第2位の大株主として迎える第三者割当による新株発行(2008年3月に国際航業(株)グループが全株取得)を実施した。これが奏効し、2008年9月のリーマン・ショックや2011年3月の東日本大震災といった厳しい経済環境を乗り越えた後、2015年以降、エクイティファイナンスを活発化させ、事業構造改革と財務体質強化を加速させている。
むろん、株主価値の希薄化には十分留意する必要があるものの、パートナー戦略を伴ったエクイティファイナンスは、財務基盤の強化、事業構造改革や新規事業領域開拓、バリューチェーン強化を通じて、中長期的な企業価値増大を目指すものであり、今後の成果を見守りたい。
同社のフロー利益は、過去10期中(2009年9月期-2018年9月期)、5期において当期純損失を余儀なくされるなど、冴えない状況にあった。繰越利益剰余金は水面下にあるものの、財務体質の安全性を測る代表的な指標の推移を見ると、自己資本比率が2009年9月期末31.8%→2018年9月期末75.5%、流動比率が2009年9月期末140.9%→2018年9月期末407.1%、といずれも大幅に良化している。
この財務体質の良化は、2015年5月のEBMへの資本業務提携を伴う第三者割当による新株発行とマイルストーン・キャピタル・マネジメント(株)への純投資としての第三者割当による新株予約権発行によるところが大きいわけだが、1)厳しいながらも更新需要を迎えつつある国内PACS市場における競争力確保、2)医療分野での新規事業開発、3)GEOソリューション事業の事業構造改革、を推進する原動力となったばかりでなく、新たなパートナー戦略実現につながるものであった。
2016年11月、同社は新たなパートナー戦略として、光通信の子会社EPARKとの合弁でイメージワン ゼロットを設立した。その原資として、EBM等への第三者割当増資で得た資金が活用され、2018年5月のエンパワープレミアムへの出資(この原資は、純投資目的のSBIグループ(SBIホールディングス<8473>)及び事業パートナーである光通信グループへの第三者割当による新株予約権発行)につながったわけである。
そして2019年9月期第2四半期、新経営陣による経営改革が進行するなかで、「duranta」事業の譲渡とエンパワープレミアムの減損処理による特別損失が計上されたわけだが、2019年9月期第2四半期末の自己資本比率は78.7%、流動比率は580.9%といずれも極めて健全な水準を保っている。現行の新中期経営計画では、「財務健全性を維持しつつ、成長戦略に沿った投資を惜しまない」という財務戦略のもと、戦略的資金調達、資金効率、復配といったキーワードが明記されている。復配実現のためには、11億円強にまで積み上がった利益剰余金マイナス幅の大幅圧縮が必須であり、課題を直視した新たな財務戦略が有言実行されることに期待したい。
2. ヘルスケアソリューション事業の収益性が改善、GEOソリューション事業は量的拡大局面に
エクイティファイナンスを活用した事業構造改革の効果が、セグメント情報から明確に読み取れる。まず、ヘルスケアソリューション事業のセグメント利益率(全社費用負担前)を見ると、厳しい価格競争や「duranta」関連等の先行投資を吸収してプラスサイドを堅持、2018年9月期には14.3%と消費税増税による駆け込み需要が発生した2014年9月期の16.6%に迫るまで向上している。これまでの収益性向上は1)VNAという自社製品の強みを訴求した営業強化策、2)モダリティメーカー等との協業という新たなマーケティング戦略、3)システム導入工程の効率化、によるものであったが、事業構造改革を加速した2019年9月期第2四半期(累計)においても10.3%を維持しており、今後は経営改革効果の顕在化が加わるだろう。
次に、GEOソリューション事業のセグメント利益率(同)を見ると、継続課金型事業モデルのPix4D製ソフトウェアと売り切りモデルながら高収益のMalvern Panalytical可視・赤外分光放射計への集中に踏み切った結果、2015年9月期に大幅減収のなかで底打ちを果たした後、2016年9月期から2期連続で20%水準を実現し筋肉質への転換を果たした。2018年9月期以降は、量的拡大を目指す事業戦略のもと、Pix4D製ソフトウェアの戦略的価格改定(引下げ)や契約代理店網の組成・活用(直販に比べ利益率は劣る)、販売促進を目的とした広告展開に踏み切ったことで費用先行局面を迎えているが、直近の四半期推移を見ると、2019年9月期第2四半期のセグメント利益率は5.7%と同第1四半期の4.8%から0.9%ポイント改善している。
同社の場合、全社費用が大きいため、各セグメント利益に事業部門に負わせられない全社費用が含まれないことには留意する必要があるものの、こうした事業構造改革の進展は、2015年5月のエクイティファイナンスの成果として評価してよいだろう。
3. 2019年9月期第2四半期(累計)は減収・営業損失ながら想定の範囲内、通期では増収・営業増益を見込む
2019年9月期第2四半期(累計)は売上高が前年同期比4.3%減の733百万円、営業損失が同60百万円損失拡大の61百万円、四半期純損失は関連会社の減損処理もあり同341百万円損失拡大の352百万円となった(前年同期比は参考値ベース)。セグメント別に見ると、主力のヘルスケアソリューション事業は売上高が前年同期比4.9%減の656百万円、セグメント利益が同19.6%減の67百万円、GEOソリューション事業については売上高が同1.1%増の76百万円、セグメント利益が同59.9%減の4百万円となり、セグメント利益では全社費用をカバーできず、全体としては営業損失となった。ただ、セグメント別売上高の通期計画に対する進捗率は、ヘルスケアソリューション事業が43%、GEOソリューション事業については48%となっており、会社側は2019年9月期第2四半期までの業績推移は想定の範囲内としている。
こうしたなかで、2019年9月期通期業績の会社計画は3月と7月に上方修正され、売上高が前期比2.8%増の1,700百万円、営業利益が同150.0%増の100百万円、当期純利益が同52倍の437百万円と、増収・増益が見込まれている。なお、会社計画では、新規事業による業績貢献を売上高で300百万円、営業利益56百万円と見込んでおり、計画達成のためには、新規事業の垂直立ち上げが不可欠と言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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1. フロー利益は順調とは言えないが、2019年9月期第2四半期の特別損失計上後も財務体質は健全
2004年3月、イメージ ワン<2667>は伊藤忠商事<8001>を第2位の大株主として迎える第三者割当による新株発行(2008年3月に国際航業(株)グループが全株取得)を実施した。これが奏効し、2008年9月のリーマン・ショックや2011年3月の東日本大震災といった厳しい経済環境を乗り越えた後、2015年以降、エクイティファイナンスを活発化させ、事業構造改革と財務体質強化を加速させている。
むろん、株主価値の希薄化には十分留意する必要があるものの、パートナー戦略を伴ったエクイティファイナンスは、財務基盤の強化、事業構造改革や新規事業領域開拓、バリューチェーン強化を通じて、中長期的な企業価値増大を目指すものであり、今後の成果を見守りたい。
同社のフロー利益は、過去10期中(2009年9月期-2018年9月期)、5期において当期純損失を余儀なくされるなど、冴えない状況にあった。繰越利益剰余金は水面下にあるものの、財務体質の安全性を測る代表的な指標の推移を見ると、自己資本比率が2009年9月期末31.8%→2018年9月期末75.5%、流動比率が2009年9月期末140.9%→2018年9月期末407.1%、といずれも大幅に良化している。
この財務体質の良化は、2015年5月のEBMへの資本業務提携を伴う第三者割当による新株発行とマイルストーン・キャピタル・マネジメント(株)への純投資としての第三者割当による新株予約権発行によるところが大きいわけだが、1)厳しいながらも更新需要を迎えつつある国内PACS市場における競争力確保、2)医療分野での新規事業開発、3)GEOソリューション事業の事業構造改革、を推進する原動力となったばかりでなく、新たなパートナー戦略実現につながるものであった。
2016年11月、同社は新たなパートナー戦略として、光通信の子会社EPARKとの合弁でイメージワン ゼロットを設立した。その原資として、EBM等への第三者割当増資で得た資金が活用され、2018年5月のエンパワープレミアムへの出資(この原資は、純投資目的のSBIグループ(SBIホールディングス<8473>)及び事業パートナーである光通信グループへの第三者割当による新株予約権発行)につながったわけである。
そして2019年9月期第2四半期、新経営陣による経営改革が進行するなかで、「duranta」事業の譲渡とエンパワープレミアムの減損処理による特別損失が計上されたわけだが、2019年9月期第2四半期末の自己資本比率は78.7%、流動比率は580.9%といずれも極めて健全な水準を保っている。現行の新中期経営計画では、「財務健全性を維持しつつ、成長戦略に沿った投資を惜しまない」という財務戦略のもと、戦略的資金調達、資金効率、復配といったキーワードが明記されている。復配実現のためには、11億円強にまで積み上がった利益剰余金マイナス幅の大幅圧縮が必須であり、課題を直視した新たな財務戦略が有言実行されることに期待したい。
2. ヘルスケアソリューション事業の収益性が改善、GEOソリューション事業は量的拡大局面に
エクイティファイナンスを活用した事業構造改革の効果が、セグメント情報から明確に読み取れる。まず、ヘルスケアソリューション事業のセグメント利益率(全社費用負担前)を見ると、厳しい価格競争や「duranta」関連等の先行投資を吸収してプラスサイドを堅持、2018年9月期には14.3%と消費税増税による駆け込み需要が発生した2014年9月期の16.6%に迫るまで向上している。これまでの収益性向上は1)VNAという自社製品の強みを訴求した営業強化策、2)モダリティメーカー等との協業という新たなマーケティング戦略、3)システム導入工程の効率化、によるものであったが、事業構造改革を加速した2019年9月期第2四半期(累計)においても10.3%を維持しており、今後は経営改革効果の顕在化が加わるだろう。
次に、GEOソリューション事業のセグメント利益率(同)を見ると、継続課金型事業モデルのPix4D製ソフトウェアと売り切りモデルながら高収益のMalvern Panalytical可視・赤外分光放射計への集中に踏み切った結果、2015年9月期に大幅減収のなかで底打ちを果たした後、2016年9月期から2期連続で20%水準を実現し筋肉質への転換を果たした。2018年9月期以降は、量的拡大を目指す事業戦略のもと、Pix4D製ソフトウェアの戦略的価格改定(引下げ)や契約代理店網の組成・活用(直販に比べ利益率は劣る)、販売促進を目的とした広告展開に踏み切ったことで費用先行局面を迎えているが、直近の四半期推移を見ると、2019年9月期第2四半期のセグメント利益率は5.7%と同第1四半期の4.8%から0.9%ポイント改善している。
同社の場合、全社費用が大きいため、各セグメント利益に事業部門に負わせられない全社費用が含まれないことには留意する必要があるものの、こうした事業構造改革の進展は、2015年5月のエクイティファイナンスの成果として評価してよいだろう。
3. 2019年9月期第2四半期(累計)は減収・営業損失ながら想定の範囲内、通期では増収・営業増益を見込む
2019年9月期第2四半期(累計)は売上高が前年同期比4.3%減の733百万円、営業損失が同60百万円損失拡大の61百万円、四半期純損失は関連会社の減損処理もあり同341百万円損失拡大の352百万円となった(前年同期比は参考値ベース)。セグメント別に見ると、主力のヘルスケアソリューション事業は売上高が前年同期比4.9%減の656百万円、セグメント利益が同19.6%減の67百万円、GEOソリューション事業については売上高が同1.1%増の76百万円、セグメント利益が同59.9%減の4百万円となり、セグメント利益では全社費用をカバーできず、全体としては営業損失となった。ただ、セグメント別売上高の通期計画に対する進捗率は、ヘルスケアソリューション事業が43%、GEOソリューション事業については48%となっており、会社側は2019年9月期第2四半期までの業績推移は想定の範囲内としている。
こうしたなかで、2019年9月期通期業績の会社計画は3月と7月に上方修正され、売上高が前期比2.8%増の1,700百万円、営業利益が同150.0%増の100百万円、当期純利益が同52倍の437百万円と、増収・増益が見込まれている。なお、会社計画では、新規事業による業績貢献を売上高で300百万円、営業利益56百万円と見込んでおり、計画達成のためには、新規事業の垂直立ち上げが不可欠と言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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