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グローセル Research Memo(5):ルネサス製半導体の拡販が成長戦略の主軸であるのは不変

注目トピックス 日本株
■中長期成長戦略

3. ルネサスエレクトロニクス製品の売上、デザイン−インの強化・推進
グローセル<9995>はその設立の経緯(イーストンエレクトロニクスとルネサスデバイス販売が合併して誕生)から明らかなように、ルネサスエレクトロニクスの特約店として成長を遂げてきた。現状では、売上高の約8割をルネサスエレクトロニクス製品が占めており、ルネサスエレクトロニクスの側から見ても、同社は常に特約店トップ3の一角を占める重要な存在であった。そうした同社にとって、ルネサスエレクトロニクス製品の拡販を成長戦略のトップ項目として掲げるのは当然のことと言える。

ルネサスエレクトロニクスは、経営合理化の一環で保有してきた(同社を含む)取引先の株式を売却した。また、特約店の数を大きく絞り込むとの一部報道もあった。こうした状況から、ルネサスエレクトロニクスと同社との距離感に不安を抱く向きもあるだろうが、弊社ではその懸念は不要だと考えている。後述するように、ルネサスエレクトロニクスが合理化をすればするほど、技術サポートなどを提供する同社のような存在の重要性が高まってくる。また特約店の絞り込みはルネサスエレクトロニクスから出た情報ではなく、これまでにまったく動きはない。両社の距離感は今後、ますます近づく方向にあると弊社ではみている。

(1) 販売戦略と「デザイン−イン」
売上拡大における具体的な戦略は「デザイン−イン」の強化・拡大だ。同社では顧客が新製品開発を進める初期段階で顧客ニーズを満たすようなソリューション提案を行うことが重要と考え、こうした営業手法のことを「デザイン−イン」と呼んでいる。ルネサスエレクトロニクスは、事業構造改革の一環でターゲット市場を自動車分野と産業分野に絞り込んでいるため、同社の営業活動のターゲットもこれらの2つの分野となる。こうした状況を踏まえて同社は、ターゲット市場をスマートカー(自動車分野)、スマートファクトリー(産業分野)、スマートインフラ(産業分野)の3つの領域に分け、それぞれの市場における技術的課題の解決に向けたソリューションを提案することでルネサスエレクトロニクス製品の売上拡大を図っている。

(2) 同社の強みと付加価値
商社についてはかつて不要論が叫ばれた時期もあったが、実際には商社の存在意義はその当時に比べて高まっている状況だ。理由はいくつかあるが、メーカー側が経営合理化の過程で原材料の調達や販売に関する機能を大きく削減し、社外にアウトソーシングする流れになったことがまず挙げられる。同社のようなエレクトロニクス商社にあっては、製品の高度化・高機能化も重要なポイントだ。同社が取り扱う半導体は注文どおりに納品して終わりというわけにはいかず、ユーザーが使いこなすところまで、しっかりとお膳立てする必要がある。また、“お膳立て”の中身も、ソフトウェアと一体化した提供や、SIer(システムインテグレーター)的な業務など、高度化・複雑化する方向にある。

従来はこうした機能は、ルネサスエレクトロニクス自身が有していた。しかし経営合理化の影響などもあり、その役割は同社のような商社(特約店)へと移った。同社は『半導体トレーニングセンター』を設立し、顧客側の技術者の育成にも注力している。これは同社にとって負担増にも見えるが、同社が付加価値を創造できるチャンスでもあり、ルネサスエレクトロニクス製品の売上拡大を図るうえではプラスに働くと弊社ではみている。

以上のケースは、商社の重要度が決して減少していないことの一例だ。2020年3月期は商社としての原点に立ち返り、1)秀でた営業力、2)安定した供給力、3)優れた技術力といった同社の強みを最大限に発揮して、仕入先(ルネサスエレクトロニクス)と販売先(顧客)の双方に付加価値を提供することを目指している。

(3) 2019年3月期の進捗と2020年3月期の計画
2019年3月期は、自動車分野421億円、産業分野他向けで153億円の合計574億円のデザイン−イン実績があった。2020年3月期については自動車分野で333億円、産業分野他で167億円の合計500億円のデザイン−インを予定している。自動車分野の金額が減少する計画であることについて、懸念する必要はないと弊社では考えている。デザイン−インはあくまで開発段階の初期から携わるプロジェクトを金額で表したに過ぎず、また、自動車業界は4〜5年のモデルチェンジサイクルで動くため年ごとの変動が大きいことが理由だ。

2019年3月期における主なデザイン−インの事例としては、自動車分野でのRH-850やR-CarをコアにしたADAS(先進運転支援システム)へのワンストップソリューションの提供や、自動駐車アシストシステムなどがある。また産業分野では、生体情報モニター、鉄道ホームドア、金融機関ATMなどがある。

2019年3月期におけるルネサスエレクトロニクス製品の売上高は606億円と、前期の639億円から約5%減少した。自動車分野向けは中国での生産台数減少や在庫調整の影響で減少したほか、産業分野他向けも中国向けのFA機器及びエアコン向けの需要減少の影響で減収となったことなどが主因だ。2020年3月期については、自動車・産業それぞれの分野向けに最先端マイコン等を軸に拡販を図り、前期比約4%増の628億円を計画している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)



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