サン電子 Research Memo(1):足元業績は厳しいが世界各地で伸びているDI向けは順調に拡大。V字回復目指す
[19/07/26]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
1. 会社概要
サン電子<6736>は、情報通信関連事業とエンターテインメント関連事業を2本柱とするIT機器メーカーである。2007年に買収したイスラエルのCellebrite Mobile Synchronization Ltd.(以下、Cellebrite)が展開する携帯端末関連機器が、米国市場中心からグローバル展開へと大きく成長してきた。特に、世界中で需要が拡大している犯罪捜査機関(以下、DI※)向けが同社の成長をけん引している。一方、厳しい事業環境に置かれているエンターテインメント関連は減退傾向にあるものの、創業時から脈々と受け継がれるベンチャースピリッツと開発力を武器として、実証実験含む導入事例が増えてきたM2MやAR関連(AR技術を生かした業務支援ソリューション)、O2Oソリューションなど、情報通信分野における新たな成長市場への参入により成長軌道に乗せる方針である。2019年6月には社長交代による新体制への移行を決定。前代表取締役社長の山口正則(やまぐちまさのり)氏は取締役として経営陣に残り、ポテンシャルの大きなモバイルデータソリューションの成長に専念する方針である。
※Digital Intelligenceの略。裁判等の証拠に用いられるデータ抽出やデータ分析等を展開している。
2. 2019年3月期の業績
2019年3月期の業績は、売上高が前期比4.0%減の25,243百万円、営業損失が200百万円(前期はは1,074百万円の損失)と減収ながら大幅な損益改善により、営業損失が縮小した。また、期初予想(レンジ形式)に対しても、売上高、営業損失ともにレンジ内(営業損失はレンジ上限)での着地となっている。世界各地で需要が伸びているモバイルデータソリューション(DI)が計画を上回るペースで大きく拡大している。ただ、売上高全体で減収となったのは、規則改正の影響等によりエンターテインメント関連が落ち込んだことが理由である。また、新規IT関連(M2M等)やその他(ゲームコンテンツ)についても低調であった。損益面では、利益率の高いモバイルデータソリューションの伸びに伴って売上原価率が大きく改善し、営業損失の縮小に寄与した。したがって、エンターテインメント関連の落ち込みなどにより2期連続の営業損失を計上したものの、モバイルデータソリューションの伸びが確認できたところは、今後のV字回復に向けて明るい材料となった。
3. 2020年3月期の業績予想
2020年3月期の業績予想について同社は、レンジ形式での予想開示を採用しており、売上高を27,500百万円(前期比8.9%増)〜28,800百万円(同14.1%増)、営業利益を100百万円〜600百万円(前期は200百万円の損失)と増収増益(黒字転換)を見込んでいる。売上高は、引き続きDIが大きく拡大するほか、前期に落ち込んだエンターテインメント関連も底打ちする見通しである。また、M2Mも大型案件を見込んでいるようだ。損益面でも、利益率の高いモバイルデータソリューションを軸に、エンターテインメント関連事業、新規IT関連事業の売上の回復が収益の押し上げに貢献し、黒字転換を実現する見通しである。
4. 成長戦略
同社の中期的な成長戦略は、これまでのDI、M2M、ゲームコンテンツに加えて、需要拡大が予想されるAR関連、O2Oソリューションなどの新たな成長ドライバーの確立により、成長を加速するものである。弊社でも、既にリーディングカンパニーとして世界開拓を進めているDIはもちろん、圧倒的な技術力と業務用途ごとの共通プラットフォームの確立により産業分野でのデファクトスタンダートを目指すAR関連、同社ならではのソリューション提供により裾野拡大への対応を図るM2M関連が、市場の拡大とともに同社の成長をけん引する可能性が高いとみている。今後の成長加速に向けて、DIの更なる拡大はもちろん、M2MやAR関連がどのようなペースで業績貢献してくるのか、今後の動向に注目していきたい。
■Key Points
・2019年3月期の業績は減収ながら大幅な損益改善により、営業損失が縮小
・規則改正等の影響によりエンターテインメント関連が落ち込んだものの、世界各地で伸びているDI向けが順調に拡大した
・2020年3月期も引き続きDIの伸びを中心に増収増益(黒字転換)を見込む
・社長交代による新体制へ移行。よりグリップできる体制に見直しを行い、DIの更なる拡大に加えて、M2MやARなどの確立により成長軌道に乗せる方針
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<SF>
1. 会社概要
サン電子<6736>は、情報通信関連事業とエンターテインメント関連事業を2本柱とするIT機器メーカーである。2007年に買収したイスラエルのCellebrite Mobile Synchronization Ltd.(以下、Cellebrite)が展開する携帯端末関連機器が、米国市場中心からグローバル展開へと大きく成長してきた。特に、世界中で需要が拡大している犯罪捜査機関(以下、DI※)向けが同社の成長をけん引している。一方、厳しい事業環境に置かれているエンターテインメント関連は減退傾向にあるものの、創業時から脈々と受け継がれるベンチャースピリッツと開発力を武器として、実証実験含む導入事例が増えてきたM2MやAR関連(AR技術を生かした業務支援ソリューション)、O2Oソリューションなど、情報通信分野における新たな成長市場への参入により成長軌道に乗せる方針である。2019年6月には社長交代による新体制への移行を決定。前代表取締役社長の山口正則(やまぐちまさのり)氏は取締役として経営陣に残り、ポテンシャルの大きなモバイルデータソリューションの成長に専念する方針である。
※Digital Intelligenceの略。裁判等の証拠に用いられるデータ抽出やデータ分析等を展開している。
2. 2019年3月期の業績
2019年3月期の業績は、売上高が前期比4.0%減の25,243百万円、営業損失が200百万円(前期はは1,074百万円の損失)と減収ながら大幅な損益改善により、営業損失が縮小した。また、期初予想(レンジ形式)に対しても、売上高、営業損失ともにレンジ内(営業損失はレンジ上限)での着地となっている。世界各地で需要が伸びているモバイルデータソリューション(DI)が計画を上回るペースで大きく拡大している。ただ、売上高全体で減収となったのは、規則改正の影響等によりエンターテインメント関連が落ち込んだことが理由である。また、新規IT関連(M2M等)やその他(ゲームコンテンツ)についても低調であった。損益面では、利益率の高いモバイルデータソリューションの伸びに伴って売上原価率が大きく改善し、営業損失の縮小に寄与した。したがって、エンターテインメント関連の落ち込みなどにより2期連続の営業損失を計上したものの、モバイルデータソリューションの伸びが確認できたところは、今後のV字回復に向けて明るい材料となった。
3. 2020年3月期の業績予想
2020年3月期の業績予想について同社は、レンジ形式での予想開示を採用しており、売上高を27,500百万円(前期比8.9%増)〜28,800百万円(同14.1%増)、営業利益を100百万円〜600百万円(前期は200百万円の損失)と増収増益(黒字転換)を見込んでいる。売上高は、引き続きDIが大きく拡大するほか、前期に落ち込んだエンターテインメント関連も底打ちする見通しである。また、M2Mも大型案件を見込んでいるようだ。損益面でも、利益率の高いモバイルデータソリューションを軸に、エンターテインメント関連事業、新規IT関連事業の売上の回復が収益の押し上げに貢献し、黒字転換を実現する見通しである。
4. 成長戦略
同社の中期的な成長戦略は、これまでのDI、M2M、ゲームコンテンツに加えて、需要拡大が予想されるAR関連、O2Oソリューションなどの新たな成長ドライバーの確立により、成長を加速するものである。弊社でも、既にリーディングカンパニーとして世界開拓を進めているDIはもちろん、圧倒的な技術力と業務用途ごとの共通プラットフォームの確立により産業分野でのデファクトスタンダートを目指すAR関連、同社ならではのソリューション提供により裾野拡大への対応を図るM2M関連が、市場の拡大とともに同社の成長をけん引する可能性が高いとみている。今後の成長加速に向けて、DIの更なる拡大はもちろん、M2MやAR関連がどのようなペースで業績貢献してくるのか、今後の動向に注目していきたい。
■Key Points
・2019年3月期の業績は減収ながら大幅な損益改善により、営業損失が縮小
・規則改正等の影響によりエンターテインメント関連が落ち込んだものの、世界各地で伸びているDI向けが順調に拡大した
・2020年3月期も引き続きDIの伸びを中心に増収増益(黒字転換)を見込む
・社長交代による新体制へ移行。よりグリップできる体制に見直しを行い、DIの更なる拡大に加えて、M2MやARなどの確立により成長軌道に乗せる方針
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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