城南進研 Research Memo(7):M&Aの実施により、英語教育と乳幼児教育の成長ポテンシャルが大きく拡大
[19/07/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略と進捗状況
3. 「戦略的なM&A、アライアンスによる企業価値の向上」の進捗状況
戦略的なM&Aやアライアンスは手法の問題であって、事業領域としてはどの分野でも活用できる。城南進学研究社<4720>の歴史を振り返ると、2009年2月に「くぼたのうけん」のライセンスを取得したのが初のアライアンスの取り組みで、以降は(株)ジー・イー・エヌや久ケ原スポーツクラブなどの買収を行ってきている。2019年3月期は英語教育のアイベックと乳幼児教育のリトルランド(買収時の主婦の友リトルランドから社名変更)を子会社化したほか、英語教育の分野でiaeグローバルジャパンと業務提携を実施した。
これらの結果現在では、英語教育関連と乳幼児・児童教育関連でそれぞれ4つの連結子会社、スポーツ部門で1社の、合計8つの事業子会社を擁するに至っている(これらのほかに(株)イオマガジン=非連結子会社がある)。そして、これらのM&Aの成果として、英語教育関連と乳幼児・児童教育関連のそれぞれで、成長ポテンシャルが大きく拡大している状況となっている。特に乳幼児・児童教育関連では、保育事業と育脳教室事業の2つがともに拡大期にあるほか、両者のシナジー追求も期待できる状況となっている。
(1) 英語教育関連の状況
同社は自社を『英語の城南』でブランディングすることを目指している。英語教育関連ではこれまで、ジー・イー・エヌ、(株)リンゴ・エル・エル・シー、アイベックの3社をM&Aで獲得している。それぞれ領域が全く異なっており、ジー・イー・エヌの幼児教育からアイベックのビジネスマンへの英語教育まで、カバーする年齢の幅は約30年にも達することになる。
このカバー年齢の広さを1つの強みということはできる。少子化への対応の1つにLTV(ライフタイムバリュー)の最大化ということがある。顧客1人当たりの売上高を最大化する取り組みだ。そのためには長期間にわたって顧客を囲い込むことが最も有効であり、顧客サービスのカバー年齢が30年というのはまさに理想的と言える。
しかしこれはあくまでも理想論で、実際に1人の顧客を30年にわたって囲い込むことが非常に難しいのは直感的にわかることだ。その難しい命題に同社は真剣に取り組んでいる。ポイントの1つは、人生で最も英語に接する年代(中学・高校生)のところに、同社自身が存在するということだ。これにより、乳幼児から社会人までシームレスに(切れ目なく)『英語の城南』で完結できるプラットフォームが出来上がっている。
今後の課題は、それぞれをどう有機的につなげるか、だろう。比喩的に言えば、幼児から大人まで、同社グループで英語教育を一貫して行うという“線路”はおおむねできており、その線路を走る“列車”をどう編成するかということだ。
同社は放課後ホームステイ「E-CAMP」や、大学入試制度改革を見据えた4技能習得法「5 Codes English」、プロジェクト「英検1000」などを展開しているが、いずれも、言わば短距離列車で、同社グループの長い線路に顧客をとどめておくものではない。あえて長距離列車を運行しないという選択もあるのかもしれないが、一般的に考えればやはり、世界一周とまではいかずとも、“インターコンチネンタル”程度に、世代間をつなぐ中距離列車は必要だと思われる。今後の展開に注目したい。
大学入試制度改革対応という点では、中期経営計画の基本戦略の中で『4技能を伸ばす英語教育の推進』を打ち出し、具体的成果として、子会社のリンゴ・エル・エル・シーと共同で『5 Codes English』を制作し、リリース済みとなっている。今後の入試においてこれが所期の成果を上げることができれば、同社が目指す『英語の城南』のブランドづくりが大きく進展するものと弊社では期待している。
(2) 乳幼児・児童教育関連の状況
乳幼児・児童教育関連では、JBSナーサリー(株)など3社が子会社となっている。これ以外にも同社本体が運営する「くぼたのうけん」や、城南ルミナ保育園、英語教育ジー・イー・エヌが手掛ける「ズー・フォニックス・アカデミー」、スポーツ事業の久ケ原スポーツクラブ(スイミングクラブ、学童保育)などがあり、乳幼児・児童教育関連は同社の中で存在感のある事業領域へと成長してきている。
保育園事業ではJBSナーサリーとフェアリィーの2社が合計19園(2019年6月末現在)の保育施設を有しており、同社本体が運営する城南ルミナ保育園(立川)を含めるとグループで20園を擁することになる。これらの施設からの売上高は、2019年3月期で6億を超えており、2020年3月期には8億円を超えるとみられる(数字は弊社の推定。2019年3月期はフェアリィーの寄与が半年であるため2020年3月期の伸びが大きくなる)。
乳幼児・児童教育関連においても目指すところはシナジー効果だ。この点については、例えば英語教育などに比べて、比較的短期間にシナジー効果を実現できるものと弊社では期待している。
リトルランドは久保田競・久保田カヨ子先生の脳科学研究に基づく育脳プログラム「クボタメソッド」を展開している。同社自身が2009年から展開する「くぼたのうけん」とルーツは同じだ。「クボタメソッド」については直営4教室、FC2教室の合計6教室を展開しているほか、全国のピアノ教室260ヶ所に「クボタメソッド」を販売している。一方、「くぼたのうけん」では、直営7教室を運営するほか、全国14園(2019年6月現在)に「くぼたのうけん」のノウハウを販売している。こうしたソリューション提供による事業拡大というアプローチは両社に共通している。両社はそれぞれブランドが確立しているため、両社が融合するメリットは少ないとみられるが、“くぼた”ブランドを同社が一元管理することになり、無用な混乱や摩擦を避けて事業拡大を遂行できると期待される。同社が言う「ワン・くぼた」実現のメリットだ。
保育園については、JBSナーサリーとフェアリィーは地域的にすみ分けているので、両社のシナジーは期待しにくい。しかし保育園事業と「くぼたのうけん」、あるいは保育園事業とジー・イー・エヌという組み合わせは十分あり得ると弊社では考えている。現実の事例として同社自身が立川市で城南ルミナ保育園(東京都認証保育所)がある。2011年4月から運営しているが、くぼた式育脳法を導入しているほか英語レッスンや体操指導も行っており、ほぼ満員での運営が続いている状況だ。JBSナーサリーやフェアリィーの保育園においても同様の試みは可能であり、それによる集客力のアップや客単価の向上が期待される。実際に、JBSナーサリーは2019年4月にルミナ保育園川崎を開園したが、これは同社に蓄積されている乳幼児教育についての特長を詰め込んだものであり、今後のシナジー追求に向けたモデルケースに位置付けられていると弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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3. 「戦略的なM&A、アライアンスによる企業価値の向上」の進捗状況
戦略的なM&Aやアライアンスは手法の問題であって、事業領域としてはどの分野でも活用できる。城南進学研究社<4720>の歴史を振り返ると、2009年2月に「くぼたのうけん」のライセンスを取得したのが初のアライアンスの取り組みで、以降は(株)ジー・イー・エヌや久ケ原スポーツクラブなどの買収を行ってきている。2019年3月期は英語教育のアイベックと乳幼児教育のリトルランド(買収時の主婦の友リトルランドから社名変更)を子会社化したほか、英語教育の分野でiaeグローバルジャパンと業務提携を実施した。
これらの結果現在では、英語教育関連と乳幼児・児童教育関連でそれぞれ4つの連結子会社、スポーツ部門で1社の、合計8つの事業子会社を擁するに至っている(これらのほかに(株)イオマガジン=非連結子会社がある)。そして、これらのM&Aの成果として、英語教育関連と乳幼児・児童教育関連のそれぞれで、成長ポテンシャルが大きく拡大している状況となっている。特に乳幼児・児童教育関連では、保育事業と育脳教室事業の2つがともに拡大期にあるほか、両者のシナジー追求も期待できる状況となっている。
(1) 英語教育関連の状況
同社は自社を『英語の城南』でブランディングすることを目指している。英語教育関連ではこれまで、ジー・イー・エヌ、(株)リンゴ・エル・エル・シー、アイベックの3社をM&Aで獲得している。それぞれ領域が全く異なっており、ジー・イー・エヌの幼児教育からアイベックのビジネスマンへの英語教育まで、カバーする年齢の幅は約30年にも達することになる。
このカバー年齢の広さを1つの強みということはできる。少子化への対応の1つにLTV(ライフタイムバリュー)の最大化ということがある。顧客1人当たりの売上高を最大化する取り組みだ。そのためには長期間にわたって顧客を囲い込むことが最も有効であり、顧客サービスのカバー年齢が30年というのはまさに理想的と言える。
しかしこれはあくまでも理想論で、実際に1人の顧客を30年にわたって囲い込むことが非常に難しいのは直感的にわかることだ。その難しい命題に同社は真剣に取り組んでいる。ポイントの1つは、人生で最も英語に接する年代(中学・高校生)のところに、同社自身が存在するということだ。これにより、乳幼児から社会人までシームレスに(切れ目なく)『英語の城南』で完結できるプラットフォームが出来上がっている。
今後の課題は、それぞれをどう有機的につなげるか、だろう。比喩的に言えば、幼児から大人まで、同社グループで英語教育を一貫して行うという“線路”はおおむねできており、その線路を走る“列車”をどう編成するかということだ。
同社は放課後ホームステイ「E-CAMP」や、大学入試制度改革を見据えた4技能習得法「5 Codes English」、プロジェクト「英検1000」などを展開しているが、いずれも、言わば短距離列車で、同社グループの長い線路に顧客をとどめておくものではない。あえて長距離列車を運行しないという選択もあるのかもしれないが、一般的に考えればやはり、世界一周とまではいかずとも、“インターコンチネンタル”程度に、世代間をつなぐ中距離列車は必要だと思われる。今後の展開に注目したい。
大学入試制度改革対応という点では、中期経営計画の基本戦略の中で『4技能を伸ばす英語教育の推進』を打ち出し、具体的成果として、子会社のリンゴ・エル・エル・シーと共同で『5 Codes English』を制作し、リリース済みとなっている。今後の入試においてこれが所期の成果を上げることができれば、同社が目指す『英語の城南』のブランドづくりが大きく進展するものと弊社では期待している。
(2) 乳幼児・児童教育関連の状況
乳幼児・児童教育関連では、JBSナーサリー(株)など3社が子会社となっている。これ以外にも同社本体が運営する「くぼたのうけん」や、城南ルミナ保育園、英語教育ジー・イー・エヌが手掛ける「ズー・フォニックス・アカデミー」、スポーツ事業の久ケ原スポーツクラブ(スイミングクラブ、学童保育)などがあり、乳幼児・児童教育関連は同社の中で存在感のある事業領域へと成長してきている。
保育園事業ではJBSナーサリーとフェアリィーの2社が合計19園(2019年6月末現在)の保育施設を有しており、同社本体が運営する城南ルミナ保育園(立川)を含めるとグループで20園を擁することになる。これらの施設からの売上高は、2019年3月期で6億を超えており、2020年3月期には8億円を超えるとみられる(数字は弊社の推定。2019年3月期はフェアリィーの寄与が半年であるため2020年3月期の伸びが大きくなる)。
乳幼児・児童教育関連においても目指すところはシナジー効果だ。この点については、例えば英語教育などに比べて、比較的短期間にシナジー効果を実現できるものと弊社では期待している。
リトルランドは久保田競・久保田カヨ子先生の脳科学研究に基づく育脳プログラム「クボタメソッド」を展開している。同社自身が2009年から展開する「くぼたのうけん」とルーツは同じだ。「クボタメソッド」については直営4教室、FC2教室の合計6教室を展開しているほか、全国のピアノ教室260ヶ所に「クボタメソッド」を販売している。一方、「くぼたのうけん」では、直営7教室を運営するほか、全国14園(2019年6月現在)に「くぼたのうけん」のノウハウを販売している。こうしたソリューション提供による事業拡大というアプローチは両社に共通している。両社はそれぞれブランドが確立しているため、両社が融合するメリットは少ないとみられるが、“くぼた”ブランドを同社が一元管理することになり、無用な混乱や摩擦を避けて事業拡大を遂行できると期待される。同社が言う「ワン・くぼた」実現のメリットだ。
保育園については、JBSナーサリーとフェアリィーは地域的にすみ分けているので、両社のシナジーは期待しにくい。しかし保育園事業と「くぼたのうけん」、あるいは保育園事業とジー・イー・エヌという組み合わせは十分あり得ると弊社では考えている。現実の事例として同社自身が立川市で城南ルミナ保育園(東京都認証保育所)がある。2011年4月から運営しているが、くぼた式育脳法を導入しているほか英語レッスンや体操指導も行っており、ほぼ満員での運営が続いている状況だ。JBSナーサリーやフェアリィーの保育園においても同様の試みは可能であり、それによる集客力のアップや客単価の向上が期待される。実際に、JBSナーサリーは2019年4月にルミナ保育園川崎を開園したが、これは同社に蓄積されている乳幼児教育についての特長を詰め込んだものであり、今後のシナジー追求に向けたモデルケースに位置付けられていると弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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