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芙蓉リース Research Memo(4):事業本来の業績を示す「差引利益」は増益基調で推移(2)

注目トピックス 日本株
■決算動向

3. 2019年3月期決算の概要
芙蓉総合リース<8424>の2019年3月期の業績は、売上高が前期比4.7%増の6,181億円、営業利益が同9.3%増の357億円、経常利益が同11.3%増の392億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同17.1%増の257億円と増収増益となり、売上高、利益ともに過去最高を連続更新した。

インボイスの連結効果(6ヶ月分)などが増収に寄与した。また、事業本来の業績を示す「差引利益」についても、前期比11.0%増の753億円と順調に拡大。「不動産」や「航空機」など戦略分野における「営業資産」の積み上げや「資産粗利益率」の改善、ノンアセット収益※の拡大が「差引利益」の伸びに大きく寄与した。さらに、「契約実行高」についても、アクリーティブを中心としたファクタリングが大きく伸びたほか、航空機の新規実行や新たな太陽光発電所の稼働などにより順調に拡大している。

※資産回転型ビジネス(リース資産の入れ替え等を目的とした流動化取引)に伴う売却益の計上や手数料収入の増加。


経常利益についても、外貨借入の増加(航空機事業の拡大に伴うもの)による資金原価増やインボイス連結化などがコスト増加要因となったものの、「差引利益」の伸びや持分法投資利益※の増加により増益を確保した。

※2018年3月に持分法適用関連会社となったカナダのピックアップトラック(法人向け小型商用車)のレンタル・リース会社の通年寄与などによるもの。


これらの結果、ROA(営業資産経常利益率)については1.77%(前期は1.67%)に大きく改善。コア分野案件の選別による利回り改善や収益性の高い戦略分野の積み上げに加え、インボイス(BPOサービス)を含めた、ノンアセットビジネスの拡大がROAの改善につながったと言える。

財政状態については、「営業資産残高」や「現金及び預金」の増加等により総資産が前期末比6.7%増の2兆5,922億円に拡大。一方、自己資本も内部留保の積み上げにより同5.1%増の2,618億円に増加したことから、自己資本比率は10.1%(前期は10.2%)とほぼ横ばいで推移した。また、有利子負債は同6.7%増の2兆970億円に増加したが、有利子負債(リース債務を除く)の長期比率は37.7%(前期末は37.3%)、流動比率も133.7%(前期末は141.1%)と安定しており、財務の健全性は維持されている。

各戦略分野における業績や活動実績は以下のとおりである。

(1) 不動産
2019年3月期末の「営業資産残高」は前期末比16.5%増の4,219億円と順調に拡大し、中間目途値(2020年3月期末の営業資産残高3,800億円)を1年前倒しで達成した。また、「契約実行高」は前期比32.9%減の1,274億円と減少したものの、過去2番目の高い水準を維持している。特に、長期不動産リースとブリッジ案件がともに好調に推移。長期不動産リースについては建物用途の分散(ホテル、介護・居住、レジャー・サービス、物流、その他)も進んでいる。一方、ROAについては1.7%(前期は1.8%)と若干低下しており、ROAの改善は今後の課題と言える。同社では、遊休不動産を保有する企業のCRE戦略※がますます重要となるなかで、同社の強みとする土地情報持込型提案営業をさらに強化し、同社主導型案件の推進により収益性の向上を図る方針である。

※企業が保有する不動産の有効活用。


(2) 航空機
2019年3月期末の「営業資産残高」は前期末比53.5%増の1,498億円と大きく拡大した。アジアを中心とした取引エアラインの拡大により、保有機体数も35機(前期末比11機増)と順調に増加している。ただ、ROAが1.4%(前期は1.9%)に低下したのは、期末にかけて新規実行が重なったことが理由であり、一時的な要因として捉える必要がある。今後も英国ALMの更なる活用を含め、取引エアライン・取引国の拡大を推進する方針である。

(3) 海外
2019年3月期末の「営業資産残高」(海外事業における関連会社への出資額を含む)は前期末比7.0%増の999億円に増加した。ROAも0.8%(前期は0.6%)に改善。海外は、オーガニック(自律的成長)とインオーガニック(M&Aや提携等)の2つの成長軸を進めているが、2018年3月に持分法適用関連会社となったピックアップトラックのレンタル・リース会社(カナダ)が通年寄与したほか、2019年1月にはマテハン機器のオペレーティング・リース会社(米国)を持分法適用関連会社としており、インオーガニック戦略において一定の成果を残すことができたと言える※。今後の事業拡大やROAの改善に向けては、インオーガニック成長が不可欠とみており、更なるM&Aにも積極的に取り組む方針である。一方、オーガニック戦略についても、シンガポール現地法人の恒常有人化を実施。ASEAN地域のクロスボーダー営業拠点として、当面はシンガポール及びインドマーケットへの営業に注力する方針である。

※海外事業における関連会社の営業資産残高(同社持分割合)についても前期末比55.2%増の194億円(概算)に増加している。


(4) エネルギー・環境
2019年3月期末の営業資産残高(太陽光発電事業)は前期末比41.6%増の279億円と大きく拡大した。福島・宮城で2ヶ所(発電量合計38MW)が新たに稼働したことにより、現在は全国32ヶ所においてメガソーラー(合計140MWdc)が発電中である。したがって、発電容量は中間目途値(2020年3月末の発電容量135MWdc)を1年前倒しで達成した。加えて、発電容量60MWの超大型事業(福島地区)も着工済みである。ただ、ROAが4.4%(前期は5.1%)に低下しているのは、新規サイト稼働に伴うコスト増によるものであり、一時的な要因と捉える必要がある。また、ポストFIT(固定価格買取制度後)に向けて自家消費型発電の取り組みを強化するとともに、市場拡大が見込まれる蓄電池についても、ベンチャー企業への出資を含めた連携を推進している。さらに、2019年4月には東京電力エナジーパートナー(株)及び(株)ファームシップとの合弁会社の設立により、植物工場(静岡県藤枝市)の運営にも参画した。単一の植物工場としては国内最大規模の生産能力となる見込みである。操業開始は2020年春頃を予定している。

(5) 医療・福祉
具体的な数値目標は掲げていないが、診療報酬債権ファクタリング※1については、アライアンス先との連携強化により、2019年3月期末の営業資産残高が104億円(前期末は58億円)に拡大。中古医療機器※2についても、公的病院(病床数約600床)や都内大学病院(病床数約1,000床)など、同社グループの顧客基盤に対する中古医療機器の買取や解体・撤去、処分案件の受注が伸びている。また、「ヘルスケアアドバイザリー室(現ヘルスケア・アドバイザリー部)」を新設し、医療法人向け経営支援型アドバイザリー業務を開始。幅広い商品ラインアップやサービス機能により様々なソリューション提案をワンストップで実施し、病院経営層が抱える課題解決に向けたコンサルティング業務を強化するところに狙いがある。特に、競合厳しいリース単品のセールスからソリューション提案への転換により収益性の改善を目指す方針であり、提携地域金融機関や特色あるパートナー企業との協業により事業拡大を目指す。

※1 2017年1月に連結子会社となったアクリーティブが展開。
※2 2016年12月に業務提携(2018年1月に連結子会社化)した(株)FUJITAが展開。


(6) 新領域(BPO事業)
アクリーティブが展開するFPS(売掛債権早期支払サービス)及びFPSメディカル(診療・介護報酬債権早期支払サービス)が業績の底上げに貢献。特に、FPSメディカルがグループ連携(提携地域金融機関との協業)により大きく伸びた。また、2018年10月に連結子会社となったインボイス(一括請求サービス)も上乗せ要因(6ヶ月分)となっている。なお、インボイスとアクリーティブの経常利益は、それぞれ47億円及び13億円となっており、単純に足し合わせると60億円の規模に上る。2019年4月には新領域における中核分野として「BPOドメイン」を新たに立ち上げた。同社の従来の取引窓口(総務・経理部門)は、BPOサービスの提案窓口となるケースが多いことから、既存の顧客基盤を生かし、BPOサービスのマーケットを開拓するとともに、「経理・決済業務のBPOと言えばFGL(芙蓉総合リース)」と言われるポジショニングの確立を目指す。

以上から、2019年3月期の実績を総括すれば、業績面で好調に推移したことに加え、各戦略分野についてもおおむね順調に進展したと言ってもよいだろう。特に、新領域であるBPO事業の強化を始め、「ヘルスケアアドバイザリー室(現ヘルスケア・アドバイザリー部)」の新設(医療・福祉)、大型植物工場事業への参画(エネルギー・環境)など、今後の事業拡大に向けても大きな成果を残すことができたと評価できる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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