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安田倉庫 Research Memo(4):作業が伴うサービスは高付加価値(1)

注目トピックス 日本株
■事業概要

2. 物流事業
近年の物流事業は、保管して出荷するという単純な物流サービスだけでなく、顧客や商品に合わせてカスタマイズしたソリューションサービスが求められている。ソリューションにフォーカスして安田倉庫<9324>の物流サービスを区分すると、一般的な国内物流サービス、メディカルサービス、ITサービス、オフィスサポートサービス、海外・国際物流サービス??の5つの事業区分(不動産サービスを加えると6つの事業区分)に分けることができる。ソリューションの中でも、メディカルやITサービスなど作業が伴うサービスは、相対的に付加価値が高い。一方、輸配送ネットワークは物流事業者にとってなくてはならないものだが、なかでも陸上運送は人手不足の上競争が厳しく相対的に利益率が低くなっている。同社はソリューションサービスを強化する一方、輸配送でアライアンスを広げることで、物流事業の収益を向上させていこうと考えている。

(1) 国内物流サービス
同社は首都圏や関西圏を中心に利便性の高い物流施設を保有し、顧客の多様な保管・配送ニーズに対し、保管や倉庫作業、陸運、国際貨物取扱、物流賃貸など同社の有する機能を組み合わせた物流サービスを提供している。特に首都圏では、横浜港や東京港、羽田空港に至近の京浜地域に倉庫を集中、競合に対して強いアドバンテージのある倉庫ネットワークになっており、効率的で高品質な物流を実現している。また、豊富な実績やノウハウ、独自の倉庫管理システム、さらには顧客の利便性や効率化を考えてカスタマイズしたサービスを積極的に導入することで、顧客のサプライチェーンを支えている。

倉庫・物流センター運営に関しては、引き受けた後も継続的に業務改善や効率化、最適化を進めている。保管設備においては、顧客の商品特性に合わせた最適な保管環境や効率的なレイアウトを提案、各種温度帯倉庫や空調設備、燻蒸庫、危険品倉庫などの要望にも対応することができる。流通加工の経験も豊富で、入庫前の受入検品から倉庫内におけるラベル貼り・値札付け、梱包・包装、セット組み、通電検査など、顧客の要望に応じて専門スタッフがきめ細かく柔軟に対応している。なかでも同社の倉庫管理システムは、独自の総合物流管理システム「YOURSII(Yasuda Original Useful & Reliable System II)」で、各物流センターをオンラインで結び、物流オペレーションを効率的かつ正確にコントロールすることができる。また、物流の基本となる入出庫や在庫ロケーション情報、ロットやシリアルナンバーのコントロールができるほか、EDIやインターネット、ファイル転送によって顧客のシステムと容易にリンクすることが可能で、物流情報の共有化を実現している。危機管理面では、地震などの災害に備え、「YOURSII」を支えるホストコンピュータとネットワークの二重化体制を構築しており、1台がシステムダウンした場合でも、即座に2台目に処理が移され、1時間以内に復旧することが可能である。委託先のデータセンターも耐震設備や監視機能が徹底しており、常に安全かつ正確な管理がなされている。このような同社の倉庫・物流センターは、顧客が安心してアウトソーシングできるため、年々保管能力を拡大している。

同社の輸配送は、小型・中型車による首都圏と関西圏での区域配送、大型車による関東・関西・九州間の幹線長距離輸送など、高品質な自社一貫輸配送の体制を構築している。一方、商品の特性や配送量、納品リードタイムといった条件に基づいて最適な輸送方法を選択、自社拠点・自社車両に加え、アライアンス先の輸送機能を使うことで全国どこへでも配送することができる。例えば、精密機器の輸送には、特殊車両(エアーサスペンション・パワーゲート・空調付き)を使用、納品先での設置作業も可能である。メディカル(医薬品・ヘルスケア・試薬など)では保冷車、家電・食品にはドライ車を利用した、自社輸配送ネットワークによる共同配送サービス(「Y's LINER」)を行っている。また、顧客の販売情報に基づいた各拠点在庫の適時配分と全国配送といった複数拠点管理、商品特性や環境対応を考慮して設計・開発された包装資材による包装設計など、顧客のサプライチェーンをサポートしている。グループ会社の日本ビジネスロジスティクス(株)では米国ISTA認定の包装設計試験ラボを保有するほか、JISやISO、ASTMなど公的試験規格を評価試験する設備も有している。

(2) メディカル
同社は、医療用医薬品から一般用医薬品、試薬、医療機器までを扱っており、メーカーの海外展開の拠点となっている倉庫もある。専用設備の導入や認証・許可の取得、専用輸配送網の整備など、専門性の高いサービスを提供している。かねてよりメディカルにカスタマイズした物流サービスを行ってきたが、2016年の第一三共<4568>の東京物流センター取得を機に、医薬品関連商品の取扱いを拡大させた。同社では、メディカル分野を将来的に大きな成長が期待できる分野と位置付けている。

同社は、医療用医薬品や一般用医薬品の製造・販売を行う顧客のために、GMP※1で要求されるGDP※2を見据えた設備・保管管理、センター運営、配送インフラなどの物流体制を構築している。設備・保管管理に関しては、医薬品に最適な倉庫設備や保管環境を関東と関西に有し、GDPへの適合やアウトソーシングを検討している顧客に対応している。また、地震や停電など不測の事態に備え、BCP※3を意識した倉庫構造となっている。センター運営では、薬剤師などメディカル専門スタッフによる高品質な作業体制をとっており、記録管理が重要となるGDP対応を見据えて管理薬剤師による各種手順書の整備も行っている。配送に関しては、共同配送によって東西の物流センターから全国の卸・医療施設へ毎日商品を届けている。なかでも首都圏と関西圏では自社車両による配送を行っており、配送ルートの固定化による安定・迅速・高品質で繁閑を問わない納品が可能となっている。また、生産工場から物流センターを経由して全国の卸・医療施設まで、温度記録管理が可能な医薬品専用車両による一貫輸配送サービスも提供している。さらに、製品情報や包装の変更案内や患者向け冊子のオンデマンド印刷サービスなどにも対応し、加えて、販促資材の製作管理や進捗管理を行うことができる。

※1 GMP(Good Manufacturing Practices):医薬品製造における製造管理と品質管理の基準。
※2 GDP(Good Distribution Practices):GMPを補完する、保管や輸送までを含む流通過程での品質管理基準。
※3 BCP(Business Continuity Plan):地震、津波、大雨、大雪といった自然災害や、事故、停電など予測不可能な緊急事態の際に取る施策で、重要業務の被害を最小限に抑え、企業運営を滞らせないための行動指針。


同社は、医療機器や試薬、診断薬などの取扱いについても長年の経験があり、各種の許可やライセンスを取得して商品の取扱いに万全を期している。医療機器や試薬、診断薬でも医薬品同様に高度な保管・管理体制が要求されることから、温度管理や冷蔵庫設備など商品特性に応じて保管環境を整備する一方、自家発電設備や衛星電話を備えることで非常時の運用も可能となっている。メディカル製品に対する添付文書封入や薬事ラベルの貼付など流通加工や、入荷検査、預託品の返却受入センターの運営といった高付加価値サービスについても多くの実績があり、同社のメディカルサービスは、医薬品・医療機器メーカーなどにとって、究極のソリューションサービスということができる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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