アイエスビー Research Memo(3):過去から積み重ねたM&Aの成功が、効果的なグループ経営戦略の実現に貢献
[19/09/09]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■中期経営計画の進捗状況
アイ・エス・ビー<9702>は現在2020年12月期を最終年度とする「中期経営計画2020」に取り組んでいる。その中で同社が取り組む重点戦略は、1)プロダクト事業の展開と拡大、2)高付加価値業務へのシフト、3)コスト競争力強化、4)グループ経営戦略強化、の4点だ。その詳細については過去のレポートでも何度か紹介してきた。これらの重点戦略はいずれも順調に進捗しているが、第2四半期では、グループ経営戦略強化が収益上振れに大きく寄与したと同社自身では分析している。
同社のグループ経営戦略強化とは、グループ企業の立地や得意分野を生かして、協業・分業を進め、コスト競争力を高めて受注拡大や利益率の改善につなげる取り組みのことだ。『ニアショア・オフショア戦略』と称することもある。詳細は2019年3月25日付レポートにあるため、そちらを参照されたい。この成功は、同社がこれまでの発展の中で効果的にM&Aを行い、なおかつPMI(Post Merger Integrationの略、M&Aの後の経営管理のこと)にしっかりと意を注いできたことが大きく貢献している。そこで今回は、そもそもの同社グループを形成するうえで重要な役割を果たしてきた、同社のM&Aの実績について紹介したい。
同社グループは現在、同社本体と主要8子会社で形成されているが、そのうち5社はM&Aで取得したものだ。時期的には同社がM&Aに注力したのが2010年代に入ってからであり、現在の5子会社はすべて2012年以降にグループ入りしている。M&Aに際してはしっかりと利益が出ていて、かつ、M&A後にシナジーを出せる企業を厳選して実施してきた。M&A後は前述のようにPMIを強く意識しながら経営した結果、のれん償却をカバーしてなお営業利益の黒字を一貫して達成している。2012年から2019年(第2四半期まで)の累計では、営業利益(各子会社の単純合算値、グロス額)が1,843百万円、割安購入益(負ののれん。利益押し上げ要因)が438百万円となっている一方、のれん償却額が504百万円で、連結決算における営業利益貢献額(ネット額)は1,777百万円となっている。
同社はこれまでも効果的なM&Aを実践してきたが、2019年1月にコンピュータハウスとテイクスの2社を子会社化したことは、同社グループ内の収益構成という点でこれまでにない明確な変化をもたらした。2018年12月期までは、同社本体がグループ全体の売上高の約60%、営業利益の約50%を占め、セキュリティシステムを手掛けるアートがそれに続く構図だった。しかしながら2019年12月期第2四半期は、テイクスの業容が大きく、またアートが順調に成長を続けた結果、売上高こそ同社本体が約50%をしているものの、営業利益は同社本体とアート、テイクスの3社がそれぞれ30%弱を占める鼎立状態となっている。
得意分野や事業ドメインの点でも、同社本体は情報サービスセグメントの中の組込みソフト分野(及び全般)、テイクスが同セグメント内の業務システムとフィールドサービス、アートがセキュリティシステムセグメントと分散されている。M&Aによって収益構造の多角化・重層化が進み、収益の安定化が実現された形だ。
同社が過去のM&Aで高い実績を上げてきたことは、1つには運と縁に恵まれた部分はもちろん否定できないが、同社がオーナー企業の強みを生かして素早い経営判断ができる体制にあったことや、企業カルチャーとして、チームワークの重視や中堅IT企業らしく合理的な考えに基づいて素早い行動を実践する気風にあふれていたことが有効に働いたことが大きかったものと弊社ではみている。
M&Aということの性質上、同社は2019年12月期業績予想や「中期経営計画2020」の業績計画の中にはM&Aによる収益拡大を織り込んではいない。しかしながら、同社には常にM&A案件が持ち込まれ、それについて検討することが常態化している状況にあるため、今後もM&Aの発表とそれに伴う見通し修正が起こる可能性は十分にあると弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<ST>
アイ・エス・ビー<9702>は現在2020年12月期を最終年度とする「中期経営計画2020」に取り組んでいる。その中で同社が取り組む重点戦略は、1)プロダクト事業の展開と拡大、2)高付加価値業務へのシフト、3)コスト競争力強化、4)グループ経営戦略強化、の4点だ。その詳細については過去のレポートでも何度か紹介してきた。これらの重点戦略はいずれも順調に進捗しているが、第2四半期では、グループ経営戦略強化が収益上振れに大きく寄与したと同社自身では分析している。
同社のグループ経営戦略強化とは、グループ企業の立地や得意分野を生かして、協業・分業を進め、コスト競争力を高めて受注拡大や利益率の改善につなげる取り組みのことだ。『ニアショア・オフショア戦略』と称することもある。詳細は2019年3月25日付レポートにあるため、そちらを参照されたい。この成功は、同社がこれまでの発展の中で効果的にM&Aを行い、なおかつPMI(Post Merger Integrationの略、M&Aの後の経営管理のこと)にしっかりと意を注いできたことが大きく貢献している。そこで今回は、そもそもの同社グループを形成するうえで重要な役割を果たしてきた、同社のM&Aの実績について紹介したい。
同社グループは現在、同社本体と主要8子会社で形成されているが、そのうち5社はM&Aで取得したものだ。時期的には同社がM&Aに注力したのが2010年代に入ってからであり、現在の5子会社はすべて2012年以降にグループ入りしている。M&Aに際してはしっかりと利益が出ていて、かつ、M&A後にシナジーを出せる企業を厳選して実施してきた。M&A後は前述のようにPMIを強く意識しながら経営した結果、のれん償却をカバーしてなお営業利益の黒字を一貫して達成している。2012年から2019年(第2四半期まで)の累計では、営業利益(各子会社の単純合算値、グロス額)が1,843百万円、割安購入益(負ののれん。利益押し上げ要因)が438百万円となっている一方、のれん償却額が504百万円で、連結決算における営業利益貢献額(ネット額)は1,777百万円となっている。
同社はこれまでも効果的なM&Aを実践してきたが、2019年1月にコンピュータハウスとテイクスの2社を子会社化したことは、同社グループ内の収益構成という点でこれまでにない明確な変化をもたらした。2018年12月期までは、同社本体がグループ全体の売上高の約60%、営業利益の約50%を占め、セキュリティシステムを手掛けるアートがそれに続く構図だった。しかしながら2019年12月期第2四半期は、テイクスの業容が大きく、またアートが順調に成長を続けた結果、売上高こそ同社本体が約50%をしているものの、営業利益は同社本体とアート、テイクスの3社がそれぞれ30%弱を占める鼎立状態となっている。
得意分野や事業ドメインの点でも、同社本体は情報サービスセグメントの中の組込みソフト分野(及び全般)、テイクスが同セグメント内の業務システムとフィールドサービス、アートがセキュリティシステムセグメントと分散されている。M&Aによって収益構造の多角化・重層化が進み、収益の安定化が実現された形だ。
同社が過去のM&Aで高い実績を上げてきたことは、1つには運と縁に恵まれた部分はもちろん否定できないが、同社がオーナー企業の強みを生かして素早い経営判断ができる体制にあったことや、企業カルチャーとして、チームワークの重視や中堅IT企業らしく合理的な考えに基づいて素早い行動を実践する気風にあふれていたことが有効に働いたことが大きかったものと弊社ではみている。
M&Aということの性質上、同社は2019年12月期業績予想や「中期経営計画2020」の業績計画の中にはM&Aによる収益拡大を織り込んではいない。しかしながら、同社には常にM&A案件が持ち込まれ、それについて検討することが常態化している状況にあるため、今後もM&Aの発表とそれに伴う見通し修正が起こる可能性は十分にあると弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<ST>