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Eストアー Research Memo(5):顧客売上高拡大に連動する商規模連動料金収入の拡大が成長戦略の中核

注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略と進捗状況

3. 販売システム事業の成長戦略
事業の概要の項で述べたように、販売システム事業はその収入の性質から2つに分けられる。1つはEC総合支援のASPサービスである「ショップサーブ」からの収入だ。これは月次利用料金が毎月入るストック型モデルの事業だ。もう1つはショップサーブの顧客企業の売上高拡大を支援し、その成果としてショップサーブ経由の売上高の一定割合を徴収する収入(商規模連動料金収入)だ。これはフロウ型モデルの事業となっている。Eストアー<4304>は、これらストック収入とフロウ収入とに分けて管理・開示している。

ストック型収入は減収基調が続いている。これは同社が顧客の大口シフトを進めるなか、一定割合で生じる解約(その多くは過去に獲得した個人商店や中小企業)に対して新規契約獲得が下回る状況が続いているためだ。この顧客数の純減が減収トレンドの直接の理由だが、「客数は追わない」という同社の経営のスタンスは一貫している。その理由は、同様のECシステム提供事業者の増加で競争が激化したことにある。

一方で、顧客単価の上昇には取り組んでいる。単価上昇をさらに突き詰めると、同一顧客における単価上昇と、顧客構成の変化による平均単価の上昇の2つが考えられるが、同社が現在目指しているのは後者だ。同社は“良品良店へのシフト”をスローガンに掲げ、新規契約の獲得においては大口顧客シフトを進めている。

新規大口顧客の獲得は月次料金収入であるストック収入の増大にあまりつながらない。顧客の規模でショップサーブの月次利用料に大きな差はないためだ。しかしフロウ売上高においては大きな差が出る。大口顧客シフトは販売システムの中の売上構成を、ストック収入からフロウ収入に切り替える取り組みと言うこともできるだろう。

ストック収入は元来収益の安定化につながるものだ。同社自身も過去にはショップサーブからの安定収入について、経営基盤を支え、次代の成長投資の原資を創出するものとして大きく期待していた時期があった。そこからフロウ収入への切り替えは、経営の安定性の観点からどうなのかと懸念する向きもあるだろうが、この点については、同社のノウハウや経験の蓄積で、顧客企業の売上拡大とそれに伴うフロウ売上高の安定的拡大に自信度が高まった結果の経営判断と弊社では理解している。

このように、成長が期待されているフロウ売上高だが、2017年3月期から伸び率が鈍化し、2019年3月期は減収に転じた。これは、1店舗当たりの売上高は着実に伸びてはいるものの、ショップサーブの契約顧客数の減少の影響の方が大きくなったためと考えられる。

この減収傾向は2020年3月期も続くと弊社ではみている。理由は2019年3月期において、前述のように組織改編の影響から大口顧客の新規獲得が大きく計画を下回ったためだ。しかしながら2020年3月期に入って大口顧客獲得が順調に進展していることから、早ければ2021年3月期にはフロウ売上高が前期比増収を回復してくる可能性があると弊社ではみている。


新規リリースのソフトウェアの有効性は認められているが、“時期尚早”の反応が強く、当面は低速運転が続く見通し
4. 販促システム事業の成長戦略
販促システム事業とは、販売促進支援システム、すなわち販促用ソフトウェアの開発と販売だ。目的は顧客の売上高拡大ということでマーケティングサービス事業とも重なるが、収益モデルは固定の月額基本利用料と、サービスの利用度数に応じた従量制課金から成り立っている。

同社は2017年秋までに『Eストアーコンペア』、『Eストアークエリー』の2つの商品をローンチした。これら2つはともに、MA(マーケティングオートメーション)ツールで、コンペアはECサイトについて、AB比較テストを行ってコンヴァージョン率(転換率、CVR)や成約数、LTV(生涯価値)の高い方をリアルタイムで突き止め、EC売上高の拡大につなげるツールだ。一方『クエリー』は、既存客を一定数有する事業者向けの、メールマーケティングツールで、顧客の属性を細分化し、パーソナライズしたメールを配信できる点に特長がある。

販促システム事業は2019年3月期から本格的に営業を開始した。ショップサーブの既存顧客を対象に販売を開始し、その販売状況を見ながら外部顧客に販売を拡げる計画で臨んだが、これまでのところは計画を下回った推移となっている。その要因について、端的には“時期尚早”ということのようだ。こうした状況を受けて、2020年3月期第1四半期では営業コストと販売先を見直しながら、低速運転を行っている。

以上のように、足元では当初の営業戦略の見直しを迫られた状況にあるが、中長期的には有効性が見直される可能性は十分あると弊社では考えている。短期的には人手がかかるマーケティングサービス事業において内部的に生産性アップのために活用するといったことも考えられる。そこで成果をアピールできれば販売に結び付く可能性につながるという流れだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)




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