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プラッツ Research Memo(6):ベトナムの現法を生産委託会社に譲渡、効率アップでコストダウン目指す

注目トピックス 日本株
■中期経営計画と中長期の成長戦略

4. 生産性の向上・業務効率アップによる製品コストダウン
製品の製造コストの低さがプラッツ<7813>の競争力の源泉であることは、創業以来これまでの同社の歴史が如実に物語っている。したがって製品コストダウンへの取り組みは同社にとって永遠のテーマと言うことができる。

今般同社は、ベトナムの生産体制を大きく見直して、生産性向上と業務効率アップを図り、製品コストダウンを実現する取り組みを発表した。それがベトナムの現法であるPLATZ VIETNAM CO., LTD.の全株式を持分法適用会社であるSHENGBANG METALに譲渡するという施策だ。元来、ファブレス企業の同社は企画・開発・設計を同社自身で行い、実際の製造をSHENGBANG METALに外注していた。その後同社の現法が最終アッセンブリと品質検査を行い、日本に輸出するという体制となっていた。

PLATZ VIETNAM CO., LTD.がSHENGBANG METALの子会社となることの直接のメリットは間接部門の統合による合理化が挙げられる。また、上工程の鉄鋼部品製造ラインと下工程のアッセンブリライン、及び品質検査ラインの一貫化による生産性向上も期待される。同社はこれらの効果として売上総利益率の2%〜3%の上昇は十分に期待できるとしている。また、統合後の新生産体制に関しても、ブラッシュアップにより更なる利益率向上を視野に入れている。

弊社では今回の生産体制の見直しによる製品コストダウンの取り組みは、同社のこれからの数年間において、非常に大きな影響をもたらす可能性があると期待している。同社は2018年11月に介護用ベッドのボリュームゾーン製品であるMioletシリーズの新製品として「Miolet III」をリリースした。これは機能面での充実もさることながら、設計や資材・パーツの見直しなどでコストダウンを図った点にポイントがある。2019年6月期は8ヶ月の貢献ではあったが狙いどおりのコストダウン効果を発揮して全社ベースの利益底上げに貢献した。また、2020年6月期の大幅増益予想の主因の1つともなっている。

今回のベトナムにおける生産体制見直しにより、Miolet IIIの利益率は一段と高まることが期待される。同社は介護ベッドにおいてMioletとRafio(高級品ライン)の2つのシリーズを展開しており、それぞれ4年に1度のペースでモデルチェンジを行うことで、2年に1度のペースで新製品をリリースする体制としている(夏季と冬季のオリンピックの関係と同じ)。この基本方針のもと2021年にはRafioの新製品投入が予定されているが、これについても設計の刷新と生産体制見直しの効果により利益率の改善が期待される。前述のように、同社は2022年6月期において10%の営業利益率を目指しているが、Miolet IIIとRafio新製品が出そろうことはその実現の大きな原動力となると弊社ではみている。


高齢者人口と高齢化スピードが圧倒的な中国を主体に、アジア地域全般で介護用ベッドの販売を展開
5. 海外市場の強化
同社の海外展開は、地理的に近いアジア地域を対象としている。そのアジア地域において、中国と東南アジアという地域軸と、介護施設と病院という市場軸の2つの軸で優先順位を考えながら段階的に拡大を図る方針だ。同社の企業体力などを考えれば極めて合理的な判断ということができるだろう。

地域軸に関しては、中国の市場開拓を優先的に進める方針だ。これは言うまでもなく市場規模が圧倒的に大きいことが背景にある。医療用ベッドの市場規模の目安となる病床数を例にとると、中国は日本の約7倍の規模がある。一方、東南アジアは主要3ヶ国(タイ、ベトナム、インドネシア)合計でも日本の6割の水準だ。また介護用ベッドの市場に関しても、高齢者人口の絶対数と増加ペースの両面において、中国が日本や東南アジア諸国を大きく凌駕している。

一方、市場軸では、国内同様、介護市場を中心にしながらも、同時に病院市場も積極的に開拓を目指す方針だ。海外では介護分野の成長が期待されるものの、日本と比較して制度面で整備がされていないなど、まだ未成熟な状態であり、医療分野がそれを補っている。そうした中で国内市場と同様に、海外においても介護と病院両方を同時に攻略していくという同社の戦略は妥当な判断と言えるだろう。

中国では従来から、現地法人・プラッツ上海を通じて現地の代理店経由で販売をしている。それに加えて2018年6月には、上海中心に介護施設を運営する上海偉賽との間で業務提携を行った。内容は2018年からの約3年間で同社の介護用ベッド10,000台を、上海偉賽が運営する介護施設(サービスブランドは「愛照護」)130ヶ所に供給するというものだ。1台10万円とすれば、総額10億円の大型商談となる。

この業務提携の進捗は、当初の計画から大きくスケジュールが遅れているもようだ。理由は、資金源のファンドからの資金供給が米中貿易摩擦やそれに伴う中国国内の景気減速などの影響で予定よりも細っていることにある。業務提携契約自体は現在も有効ではあるが、10,000台納入までの時間軸が大幅に伸びるような状況となっているとみられる。

弊社では、同社の海外市場戦略において、中国を中心に医療・介護両市場を対象に拡大するという方針自体は合理的だと評価している。一方で、上海偉賽の事例にあるように、中国ではヘルスケア領域のビジネスであっても(日本とは異なり)決して“ディフェンシブ(安定的)”なビジネスではないということを前提に進める必要がある。理由は正に上海偉賽の事例が雄弁に物語っているが、あらゆるところにファンド資金が関わっていることだ。表面のビジネスが何であれ、資金的裏付けが国際情勢に影響されやすいファンドである以上、そのビジネスは景気敏感型ビジネスということだ。同社の海外事業を見守るうえでもこの点はリスク要因として考慮する必要がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)




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