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KLab Research Memo(2):人気IPによるヒットタイトルの創出を得意とするモバイルオンラインゲーム会社

注目トピックス 日本株
■会社概要

1. 事業内容
KLab<3656>は、「世界と自分をワクワクさせろ」をビジョンに掲げ、スマートフォン向けアプリを中心にモバイルオンラインゲームの企画、開発を手掛けている。主要タイトルは、「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」(スクフェス)、「BLEACH Brave Souls」(ブレソル)のほか、2017年にリリースした「キャプテン翼〜たたかえドリームチーム〜」(キャプ翼)および「うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live」の4タイトルで売上高の大部分をバランスよく構成しており、特定のヒットタイトルへの依存度が高い業界においては非常に安定的な収益構造と言える。4月23日には自社IPによる新作タイトル「禍つヴァールハイト」をリリースしている。

日本の人気漫画やアニメーションをゲーム化し、運用するところに強みがあり、海外への展開にも積極的である。

事業セグメントは、主力の「ゲーム事業」のほか、創業来の大規模・高負荷対応インフラサービスの提供などによる「その他」に区分されるが、「ゲーム事業」が売上高のほとんどを占める。

主要タイトルの概要は以下のとおりである。

(1) 「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」
「ラブライブ!」とは、架空の女子高校生をスクールアイドルとして売り出していくメディアミックスプロジェクトであり、TVアニメを始め、アニメーションPV(DVD)付き音楽CDのリリースのほか、インターネットラジオやライブイベント、雑誌、トレーディングカードゲームなど、様々なメディアに展開する人気シリーズである。この「ラブライブ!」をゲーム化した「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」は、2013年4月にブシロード<7803>との共同開発により提供を開始したリズムアクション&アドベンチャーゲームである。提供開始から1日で国内App Storeトップセールスランキング5位を獲得するなど順調に立ち上がり、その後もロングランのヒットタイトルとして業績貢献を続けている。全世界ユーザー数が4,500万人を超えており、2019年9月には国内ユーザー数でも2,500万人を達成している。また、2019年12月期中には、新作タイトルとして「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS」(以下、スクスタ)のリリースも予定している。

(2) 「BLEACH Brave Souls」
2015年7月に配信を開始した爽快3Dアクションゲームである。題材となる「BLEACH」とは、(株)集英社が発行する少年漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』で人気連載されていた剣戟バトルアクションコミックであり、TVアニメのほか、劇場版も公開されている。また、日本だけでなく海外での人気も非常に高い。2019年5月には全世界で4,000万ダウンロードを突破した。3周年を迎えた2018年12月期の売上高は過去最高を更新しており、リリースから一定期間経過後も成長を持続できているところは、同社ならではの運用力によるものと評価できる。

(3)「キャプテン翼〜たたかえドリームチーム〜」
2017年6月13日に配信を開始した対戦型サッカーシミュレーションゲームである。事前登録の段階から注目を集めていたが、国内版のリリースから3週間で200万ダウンロードを突破するなど、想定を上回るペースで立ち上がった。世界的な人気を誇ってきたIPとしての認知度に加え、ゲームとしての作り込みの良さ(育成要素の強さ、対戦ゲームとしての醍醐味、世界中のプレイヤーによるドリームチームの編成、課金ポイントの充実など)や効果的なプロモーション展開などが高い評価や業績寄与につながっている。2017年12月5日にはグローバル版をリリース。こちらも2週間で200万ダウンロードを記録すると、その後も2018年開催のFIFAワールドカップ・ロシア大会の効果もあって大きく拡大。2019年8月には全世界で2,000万ダウンロードを突破している。

(4) 禍つヴァールハイト
2019年4月23日に配信を開始した同社完全オリジナル・モバイルオンラインRPGである。自社IPについては、しばらくヒット作品を生みだしていない同社であるが、本作については社外の有力クリエイターが参画し、人気声優がキャラクターボイスを担当する注力タイトルとなっており、独特の世界観を醸し出している。早い段階から様々なプロモーション活動を展開したことで、リリース前から高い知名度とファンを獲得。サービス開始後わずか6日で100万DLを突破するとともに、同社計画に沿うペースで売上を創出している。同社は、他の主要タイトルと同様、今後もブラッシュアップを続けていく方針である。

2. 企業特徴
(1) 成長モデル
同社の収益源はゲームユーザーによるアプリ内課金によるものである。すなわち、基本的にはヒットタイトルの創出によるユーザーの獲得と課金収入の向上が業績の伸びをけん引する成長モデルである。また、モバイルオンラインゲームのヒットタイトルは、運用次第で比較的ライフサイクルの長期化が見込めるものの、年々縮小していく傾向(自然減)は避けられない。したがって、ヒットタイトルの自然減を新作タイトルでいかにカバーしていくのかが最大のテーマとなっており、開発パイプラインの積み上げ(新作タイトルのリリース数)とヒット率の向上が成長のカギを握ると言える。もっとも、同社の場合には、長期運用力や海外展開における強みに加え、ゲーム周辺領域への事業拡大(マルチデバイスやメディアミックス展開)などにより1タイトル当たりの収益(ライフタイムバリュー)の最大化にも取り組んでおり、他のゲームメーカーとは一線を画する成長モデルの進展にも注目すべきである。

(2) 同社の優位性
a) 人気IPをヒットタイトルに結び付ける力
同社は日本の人気漫画やアニメーションなどをゲーム化し、運用するところに強みがある。主要タイトルの「スクフェス」や「キャプ翼」を始め、数々の人気IPを手掛けてきた実績は、有力IPの獲得から、そのIPを生かす企画・開発、更にはリリース後の運営及びマーケティングにおけるノウハウを蓄積しており、それが同社の強みを支えている。特に、日本のポップカルチャー(オタク文化)は、アジアや欧米など世界でも人気を高めており、海外展開を進めるうえでも大きなアドバンテージとなっている。また、有力IPをゲームでヒットさせてきた実績と経験、ネットワークは、更なる有力IPの獲得に向けて有利に働くとともに、自社IPの育成にも生かされており、好循環が生み出されている。

b) 独自のマーケティング力
精密なKPI分析や効果測定による効率的な広告宣伝活動を展開するほか、同社ならではのオンライン動画配信※等により、コアとなるユーザー層を囲い込む(ファンコミュニティの醸成)、効果的なマーケティングを展開している。また、これらの草の根的なユーザー接点(ネットワーク)は、新作タイトルの企画・開発におけるヒントや、リリース後の運用においても大きな支えになるとともに、他社が簡単にはまねできない財産となっている。

※国内向けは「KLab Games放送局+Plus」(2015年11月より放送されていた「KLab Games放送局」のリニューアル版。2018年8月に放送開始し、2019年8月に放送50回を突破)、海外向けは「KLab Games Station」(英語/フランス語/アラビア語で放送)を展開し、国内外でファンコミュニティ醸成に貢献している。


c) 運営力
前述のとおり、一般的なモバイルオンラインゲームには年々縮小していく傾向(自然減)がある上、ユーザーの移り変わりも激しいところに課題がある。一方、同社の場合、最近の業績推移を見ると、時間が経過しても増収となる事例が見られることから、その運営力の高さも強みになってきた。その一例に「ブレソル」があり、国内版はリリース4周年を迎えた2019年7月に、iOS国・地域別最高セールスランキングにおいて過去最高の3位にランクインした。コアファンを有する人気IPの特徴をうまく生かし、ユーザーが離れないようなイベント及び商材をタイミングよく投入することで、継続率及び課金率の向上を図っているところに秘訣があると考えられる。

d) 海外展開力
海外展開力にも強みがある。2018年12月期の海外売上高は11,508百万円となり過去5年間で10倍以上に急拡大してきた。国内スマートフォンゲーム市場が成熟化しつつあるなかで、拡大余地が大きい海外への展開力は、同社の最大の強みと言える。特に、「ブレソル」については、多言語化(フランス語版の投入)を図ったことも奏功し、グローバル版が日本版を上回る状況が続いている。また、2017年12月にグローバル版をリリースした「キャプ翼」が想定以上に急拡大し、ここ数年の業績の伸びをけん引してきた。海外でも人気の高い日本のIPを展開する力に加えて、多言語化対応や広告運用スキル(地域別及び言語別に訴求軸を意識した制作やターゲット別の適切な配信)、ファンコミュニティの醸成(海外向けのオンライン動画配信を始め、欧米のリアルイベントにも出展・参加)、App Store/Google Playのフィーチャー※などが、同社の海外展開力の源泉となっていると考えられる。

※App Store/Google Playとは、アップルやGoogleが運営するダウンロードサービスであるが、その特設ページに掲載(推奨アプリとして紹介)されることにより絶大な広告宣伝効果を期待できる。「ブレソル」や「キャプ翼」についてもApp Store/Google Playのフィーチャーが効果的(かつ効率的)なプロモーションを実現したと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)



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