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エリアリンク Research Memo(7):コンテナタイプに注力する“原点回帰”で安定的な収益拡大を目指す

注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略

以下では、ストレージ事業と多角化事業それぞれの具体的取り組み内容について詳述する。

2. ストレージ事業の取り組み
ストレージ事業の戦略転換は、土地付きストレージを中核とした成長戦略から、コンテナタイプの再強化による成長戦略への転換で、言わば事業の“原点回帰”と言うことができるだろう。会社概要の項で述べたように、土地付きストレージの事業モデルは土地をエリアリンク<8914>自身で一旦取得した上でストレージ不動産投資商品に仕立て上げて売却するというものであるため、同社のキャピタル(資本)が投下され、利幅も大きいがリスクも高いという収益構造となっている。それに対してコンテナタイプやトランクタイプは土地所有者と投資家をマッチング(仲介)するエージェンシー・モデルの事業であるため、同社の資本がリスクにさらされることはない低リスクモデルとなっている。

とはいえ、土地付きストレージ事業の持つ成長ポテンシャルは変わらない。ストレージに対する需要構造を考えれば、都市部住宅街におけるストレージ不動産投資商品の開発において、土地付きストレージという事業モデルは必要不可欠のピースと言うことができる。今回の“原点回帰”の動きは、事業環境の変化への対応策の1つに過ぎず、将来的に事業環境が好転すれば土地付きストレージについてアクセルを踏むことになるとみられる。

同社は、事業環境に左右されない安定成長実現に向けて以下の4つの重点施策をピックアップし、今下期から取り組みを強化する方針だ。

(1) 出店計画
コンテナタイプについては、移行期の2019年12月期はピーク時(2016年頃の年間純増数8,000室のイメージ)に対して70%程度の水準にとどまるものの、2020年12月期以降は早期にピーク時レベルの出店数を目指すとしている。地域的には、地方への出店の強化に取り組む方針で、具体的な都市・地域としては長野、新潟、山口等の名前が浮上している。出店に際しては、出店目標数ありき姿勢で取り組むのではなく、立地条件の精査を徹底し、高稼働率を維持できる体制作りを最優先に臨む方針だ。

土地付きストレージについては、都市部住宅街という事業モデルの本質に立ち返り、コンテナタイプとは異なる顧客ニーズの開拓を目指す方針だ。土地の仕入に当たっては、不景気を前提に、不景気のもとでも収益を見込めるような立地を厳選して臨む方針だ。また、後述する重点施策「新商品」にあるホビーストレージやビジネスストレージなどを導入して商品としての魅力度を高め、出口戦略の多様化やリスク低減を図る考えだ。

具体的な出店数については明確には開示されていないが決算説明資料や訪問取材で得られた情報を総合的に判断すると、2019年12月期は5,000室の出店を計画しており、その後段階的に出店数を増やして2021年12月期には10,000室の出店数を目指すとみられる。その内訳として、土地付きストレージについては年間1,000室をベースに状況を見ながら少しずつ増やすという慎重なスタンスで臨むとみられる。総出店数から土地付きストレージ出店数を引いた残りがコンテナタイプの出店(トランクタイプを含む)となる。これをわかりやすくまとめると以下のようになる。

(2) 新ビジネス
同社は新ビジネスとして中古コンテナの仲介ビジネスに乗り出す考えだ。同社のストレージ事業はこれまで、いわゆるプライマリーマーケット(新規のストレージ物件の開発・販売)に特化する形で展開してきた。総室数で10万室近くまで達した現状では、既存顧客(ストレージ投資家、不動産所有者)の中には早期の現金化を望む層が一定数積み上がった状況にある。そこで、そうした売りたいニーズと、中古物件をより安く買いたいというニーズを仲介するいわゆるセカンダリーマーケットを創出しようというのがこの新ビジネスだ。同社は仲介手数料を得ることになる。またその際に中古物件のメンテナンスやリノベーション等を受注することも収益機会となる。

この新ビジネスは2020年12月期からの本格開始を予定しており、現状はそのための準備を進めている状況だ。

(3) 新商品
ストレージ事業では、新商品を投入して稼働率向上を実現し、投資商品としての魅力度アップ、ひいては同社の収益拡大へとつなげる考えだ。新商品の具体的事例としては次のようなものが想定されている。

コンテナタイプでは、外観を周囲の状況にマッチしたデザインにしたものや、新規用途として店舗や宿泊施設、避難用シェルター向けなどに内装等を加工したもの等の投入が計画されている。

また新たなユーザー層の開拓に向けて、趣味部屋としての利用を想定したホビーストレージや、オフィス投資としての利用を想定したビジネスストレージなどの開発にも取り組んでいる。これらはコンテナタイプに限らず土地付きストレージでも展開される可能性がある。

新商品の具体的な事業開始も2020年12月期以降が予定されており、今期はその準備に注力する方針とみられる。

(4) コラボレーション
同社は、ストレージの活用事例の拡大策の一環で、大手企業を含めた様々な異業種企業とのコラボレーション企画にも取り組んでいる。

具体的なコラボレーション事例として、1)運送会社との提携で同社のストレージを一時的な倉庫として利用するケース、2)企業の遊休土地に対して同社が有効活用の提案をするケース(狭小地に屋内型トランクタイプのストレージを建築)、3)ストレージの一部スペースを事業用地として転貸するケース(屋内型トランクタイプの物件の1階部分をスーパーマーケット店舗向けに転貸)、4)ストレージREITの共同組成を目指す取り組み、などがある。今後の取り組み案としては、鉄道の高架下の活用などが俎上に上っているもようだ。

企業とのコラボレーションは、様々な制約条件が関わるため、再現性が低いのが課題だと弊社ではみている。上述の過去の事例を大量生産的にほかでも展開する形を狙うと、思うように進捗しない可能性が高いとみている。反対に、個々の物件の立地・特性を生かしてハンドメイド的にコラボレーション企画をまとめようという取り組みであるならば、同社の保有物件数の多さが奏功して、成約事例が増加する可能性があると考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)




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