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パイプドHD Research Memo(8):中期経営計画目標2020年2月期売上高、営業利益は変えず

注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略

1. 中期経営計画
パイプドHD<3919>は、2020年2月期を最終年度とする新しい中期経営計画を発表している。中期経営計画の目標は、2020年2月期に売上高7,300百万円、営業利益1,700百万円となっており、2017年2月期からの平均成長率(CAGR=Compound Average Growth Rate)は売上高で15.0%(前中期経営計画は24.0%)、営業利益は26.2%(同14.4%)となっている。

しかし一方で、公式な決算短信上の発表では現時点では2020年2月期の業績は前述のように売上高で前期比19.9%増の6,500百万円、営業利益で同204.5%増の1,200百万円と予想されている。これらの予想は、経営レベルにおいて様々なリスク等を考慮して計画したものであり、言い換えればやや弱気な予想と言える。

それに対して中期経営計画の目標(売上高7,300百万円、営業利益1,700百万円)は、各事業会社の計画を積上げたものである。そのため、社内的にはまだこの最終目標を修正していない。言い換えれば、全社的にこの社内目標に向かって進んでいると言える。非常に高い目標ではあるが、決して不可能な目標ではない。また繰り返しになるが、売上高さえ確保できれば、利益は容易に付いてくる。

計画どおり過去2年間で大量採用した人材を生かしきれるか、今後の同社の動向は大いに注目される。

2. 重点施策
会社は、今回の中期経営計画の標題として「リ・イノベーション」を掲げ、「明日のあるべき豊かな情報生活に貢献する企業集団」を目指すとしている。これの目標及び前述の定性的数値を達成するために、以下のような重点施策を実行していく方針だ。

(1) 「リアル×IT」の推進
リアルビジネスとITとの接点を強化し、イノベーティブな事業へ挑戦していく。その具体的な事例として新しい子会社を設立した。

a) VOTE FOR
以前から社内で行っていた政治・選挙情報サイト「政治山®」を活用してリアル×ITを実行していくために、2017年3月に設立された。今後は、「政治山®」+「ネット投票」を前面に押し出すことで、ネット投票の実現に向けてブロックチェーンなどの新技術を生かした投票システムの構築を目指していく。

b) アイラブ
こちらも以前から社内で行っていた地域活性化プロジェクト「I LOVE 下北沢」を一段と推進すると同時に、そのノウハウを生かして「ショッピングモールやテーマパークに負けない楽しいコトが提供できるまちづくり」を目指す。具体的には、電子地域通貨を活用した少額決済で、投げ銭やチップなどの新しい取引の創造を目指す。

(2) グループ採用・グループ育成
グループ各社におけるIT分野の初等教育を共通化し、全体のレベルの底上げと現場スタッフの育成の手間を削減する。これにより、2020年2月期の業績の最大化を目指し、2018年2月期に新卒+第2新卒合わせて90名、2019年2月期は76名を採用したが、これで大量採用は一服する。

このグループ採用・育成をバックアップするのが子会社ブルームノーツ(2016年10月設立)だ。本来の事業は、顧客企業独自のノウハウをプログラムとして体系化し、この運用を支援するオーダーメイドの人材育成代行事業であり、これを生かして同社グループ全体の人材育成業務も行う計画だ。

(3) グループ各社の情報資産の有効活用
グループ各社の顧客や商品・サービスマッチングを一段と推進し、新たな取引や事業の創出を目指す。

3. 資金調達
また同社は、今後の成長に向けて以下のような自己株式取得及び資金調達計画を実施した。

(1) 子会社から自己株式の取得
連結子会社であるパイプドビッツが保有する同社株式50万株を767百万円で取得した。ただし連結子会社が保有する自己株式の取得なので、所有権が移転しただけであり、連結決算上は何の変化もない。元々この株式は、持株会社化前のパイプドビッツが少数株主からの買取請求により取得したものだ。

(2) 第5回及び第6回の新株予約権の発行
さらに同社は、マッコーリー・バンク・リミテッドを割当先とする第三者割当による新株予約権(第5回250千株、第6回250千株)※を発行した。

※詳細についてはホームページ参照。


今回の発行の内容を要約すると、第5回の行使価格は1,800円(行使価格の修正は行われない)、第6回の行使価格は下限が1,800円だが、同社の決議により1,800円以上に修正が可能。この結果、割当てられる株数の上限は500千株に限られる一方で、同社は最低でも900百万円の調達が可能となる。さらに行使が行われた場合には、上記の子会社から取得した自己株式(500千株)を充当予定であることから総発行済株式数は増加せず、既存株主に対する希釈化は起こらない。

また今回の新株予約権の割当先であるマッコーリー・バンク・リミテッドは、新株予約権に対して対価(5,872千円)を支払っており、これを回収するためにも少なくとも株価が1,800円以上になってからでないと権利行使を行わないと推測される。さらに、権利行使後は取得した株式を少しずつ市場で売却するものと予想され、その結果、最終的にはこれらの株式は市場に放出され、株式市場での流動性増に寄与すると思われる。

以上から、今回の資金調達のスキームは、関係するステークホルダー(同社、既存投資家、割当先)すべてにとって好ましいスキームだが、その必要条件は株価が1,800円を上回ることだ。そのためにも、2020年2月期計画数値の達成が必須となるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)




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