エルテス Research Memo(3):年間契約による月額課金のストック型モデル
[19/12/04]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■会社概要
2. 企業特徴
(1) 成長モデル
エルテス<3967>の主力サービスは、大手食品会社等の有力ブランドを持つ企業を顧客基盤としている。リスク予防の観点から継続取引を前提とした月額課金(年間契約)によるものであるため、顧客数の拡大が業績の伸びをけん引する積み上げ型のストックビジネスを基本としている。主力の「ソーシャルリスクサービス」(モニタリングサービス)の月額課金は40万円程度、「内部脅威検知サービス」は50万円程度とみられる。なお、顧客数の拡大のためには、新規顧客の獲得と契約継続率の維持・向上が重要であるが、契約継続率は80%から90%の高い水準を確保しているもようである。また、将来的な電子政府の実現を含め、情報のデジタル化に伴う社会課題(テロ対策、本人認証技術の活用、ブロックチェーンの活用等)の解決にも取り組んでおり、官公庁や金融機関との取引拡大も進めている。
同一顧客内でのサービスブランドや商品ブランドへの横展開による顧客単価の向上(アップセル)も売上拡大に結び付く。特に、これまでのSNS上のオープンデータから企業内ログデータへと取り扱うデータの種類やリスクテーマの拡充を図っていることから、今後はさらに担当部署の拡がりにより、顧客単価の向上(顧客内シェアの拡大)を図る機会が増えることが想定され、顧客数の拡大と顧客単価の向上の両輪により成長が加速される可能性が高い。
(2) 同社の優位性
a) 独自のデータ解析技術
同社の強みは、オープンソースのほか、同社固有のテクノロジーによって収集したビッグデータ(炎上データベース、リスクワードデータベースなど、リスクに特化した独自のデータベースを構築)に対して、複数の大学等との共同研究により開発した形態素解析や画像解析による機械学習(AI)・データマイニングを行うことによってリスクを高精度で検知するところにある。さらには、現状の形態素解析等のレベルでは、誤検知が起こり得るため、アナリストによる分析(アナログ対応)との組み合わせにより、結果として費用対効果やリスク検知の精度を高めているところも特長となっている。また、データ解析技術は、幅広い領域での活用が見込まれるため、事業の拡張性があるほか、領域を広げることでリスクパターンの精度が高まり、同社固有の技術、ノウハウにつながる好循環も期待できる。
b) 他社を圧倒する教師データの蓄積
精度の高い機械学習を実現するためには、膨大な教師データ※が必要となるが、他社に先行してリスク検知に特化した教師データを蓄積してきたことにより、他社が簡単には追いつけないポジショニングを確立してきた。顧客とのコミュニケーションをクラウド上で実施することでデータを効率的に漏れなく収集することが可能となっている。今後もデータの蓄積を継続することでAIの精度をさらに高めることができ、その結果、業務の効率化による利益率の改善、付加価値の向上を行うことが可能である。
※ソーシャルメディア等から集めたビッグデータに対して、解答となる膨大な教師データ(リスク事例)を使って答え合わせをすることにより、精度の高いリスク検知が可能となる。
c) 企業リスクに特化したコンサルティング力
リスク検知後のコンサルティング力にも強みを有する。顧客企業にとって、ソーシャルリスクは新しい領域のリスクであることから、リスクの未然防止やリスク発生後の解決方法など対処法が確立できていないケースが多い。同社は、データを収集・分析し、リスクを検知した後、専門スタッフが解決までコンサルティングするハイブリッド型のスタイルにより、他の監視ツール会社や投稿監視会社との差別化を図っている。特に、早期に適切な初期対応を図ることが被害を最小限に食い止めるためのポイントとなるが、同社は、企業リスクに特化することで蓄積してきた豊富な事例をもとにコンサルタントによるサポートを行っている。
d) 圧倒的な実績
同社は、ソーシャルリスクへの対策ニーズの拡大や独自のポジショニングの確立により、有力ブランドを持つ大手企業を中心に圧倒的な実績を積み上げてきた。豊富な実績は、さらに新規顧客を獲得する際の強みになるとともに、顧客に対する交渉力を強めることで高い収益性にも貢献する。また、優良な顧客基盤やネットワークを有することは、他社との協業を進めるうえでも優位に働く可能性が高い。
e) サイバネティカとの提携による本人認証技術の活用
2017年3月に提携したサイバネティカ(エストニア)※が持つ情報共有技術「UXP」や本人認証技術「SplitKey」についても、同社サービスとの親和性が高い上、「情報銀行」や「電子政府」の実現に向けて大きな強みとなる可能性が高い。
※電子政府先進国であるエストニアにおいて、電子政府の基盤となるシステム「X-Road」でのデータベース連携のセキュリティシステムの構築、電子投票ソフトウェアの開発を行うなど、電子政府プロジェクトにおいて優れた実績を保有する。
口コミサイトやブログ等がブームに乗るなかで、それに伴うリスクに着目した事業を立ち上げ
3. 沿革
同社の前身の1つである旧株式会社エルテスは、現代表取締役社長である菅原貴弘(すがわらたかひろ)氏によって、2004年4月に企業のインターネット上でのブランディング支援を目的として設立された。その後、口コミサイトやブログ等がブームに乗るなかで、自ら口コミサイトを立ち上げる事業ではなく、そこに書かれている誹謗中傷等が企業経営に及ぼす影響等に着目し、2007年からその対策のためのソーシャルリスクコンサルティングサービス(検索エンジン関連サービス)を開始した。2010年からはTwitterやFacebook等、ソーシャルメディアの普及により新たに出現したネット炎上などのソーシャルリスクに関するデータの収集・蓄積を開始すると、2011年にはソーシャルリスクモニタリングサービス(ソーシャルメディアサービス)を立ち上げ、順調に事業を拡大してきた。
一方、もう1つの前身となるエヌアールピー株式会社(現在の同社)は、2012年4月にWebのモニタリングシステムの開発、保守、運用業務の受託を目的に設立された。事業上の連携を深めてきた両社であるが、2014年に経営基盤の強化による経営効率の向上を図ることを目的として経営統合を実施。エヌアールピーが旧エルテスを吸収合併し、商号を株式会社エルテスに変更することで現在の形となった。
2014年には、電通<4324>との資本業務提携により危機管理の分野におけるリアルとWebの棲み分けによる協業を開始。2015年10月には(株)産業革新機構(現(株)産業革新投資機構)等からの出資(534百万円)を受けると、2016年2月からは、これまでのソーシャルリスク領域からリスクインテリジェンス領域(情報漏えいなど内部脅威検知サービス)へと事業拡充を図っている。2016年11月29日に東証マザーズに上場した。
2017年8月には、新規事業の立ち上げに伴う戦略子会社2社の設立により、連結決算へと移行した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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2. 企業特徴
(1) 成長モデル
エルテス<3967>の主力サービスは、大手食品会社等の有力ブランドを持つ企業を顧客基盤としている。リスク予防の観点から継続取引を前提とした月額課金(年間契約)によるものであるため、顧客数の拡大が業績の伸びをけん引する積み上げ型のストックビジネスを基本としている。主力の「ソーシャルリスクサービス」(モニタリングサービス)の月額課金は40万円程度、「内部脅威検知サービス」は50万円程度とみられる。なお、顧客数の拡大のためには、新規顧客の獲得と契約継続率の維持・向上が重要であるが、契約継続率は80%から90%の高い水準を確保しているもようである。また、将来的な電子政府の実現を含め、情報のデジタル化に伴う社会課題(テロ対策、本人認証技術の活用、ブロックチェーンの活用等)の解決にも取り組んでおり、官公庁や金融機関との取引拡大も進めている。
同一顧客内でのサービスブランドや商品ブランドへの横展開による顧客単価の向上(アップセル)も売上拡大に結び付く。特に、これまでのSNS上のオープンデータから企業内ログデータへと取り扱うデータの種類やリスクテーマの拡充を図っていることから、今後はさらに担当部署の拡がりにより、顧客単価の向上(顧客内シェアの拡大)を図る機会が増えることが想定され、顧客数の拡大と顧客単価の向上の両輪により成長が加速される可能性が高い。
(2) 同社の優位性
a) 独自のデータ解析技術
同社の強みは、オープンソースのほか、同社固有のテクノロジーによって収集したビッグデータ(炎上データベース、リスクワードデータベースなど、リスクに特化した独自のデータベースを構築)に対して、複数の大学等との共同研究により開発した形態素解析や画像解析による機械学習(AI)・データマイニングを行うことによってリスクを高精度で検知するところにある。さらには、現状の形態素解析等のレベルでは、誤検知が起こり得るため、アナリストによる分析(アナログ対応)との組み合わせにより、結果として費用対効果やリスク検知の精度を高めているところも特長となっている。また、データ解析技術は、幅広い領域での活用が見込まれるため、事業の拡張性があるほか、領域を広げることでリスクパターンの精度が高まり、同社固有の技術、ノウハウにつながる好循環も期待できる。
b) 他社を圧倒する教師データの蓄積
精度の高い機械学習を実現するためには、膨大な教師データ※が必要となるが、他社に先行してリスク検知に特化した教師データを蓄積してきたことにより、他社が簡単には追いつけないポジショニングを確立してきた。顧客とのコミュニケーションをクラウド上で実施することでデータを効率的に漏れなく収集することが可能となっている。今後もデータの蓄積を継続することでAIの精度をさらに高めることができ、その結果、業務の効率化による利益率の改善、付加価値の向上を行うことが可能である。
※ソーシャルメディア等から集めたビッグデータに対して、解答となる膨大な教師データ(リスク事例)を使って答え合わせをすることにより、精度の高いリスク検知が可能となる。
c) 企業リスクに特化したコンサルティング力
リスク検知後のコンサルティング力にも強みを有する。顧客企業にとって、ソーシャルリスクは新しい領域のリスクであることから、リスクの未然防止やリスク発生後の解決方法など対処法が確立できていないケースが多い。同社は、データを収集・分析し、リスクを検知した後、専門スタッフが解決までコンサルティングするハイブリッド型のスタイルにより、他の監視ツール会社や投稿監視会社との差別化を図っている。特に、早期に適切な初期対応を図ることが被害を最小限に食い止めるためのポイントとなるが、同社は、企業リスクに特化することで蓄積してきた豊富な事例をもとにコンサルタントによるサポートを行っている。
d) 圧倒的な実績
同社は、ソーシャルリスクへの対策ニーズの拡大や独自のポジショニングの確立により、有力ブランドを持つ大手企業を中心に圧倒的な実績を積み上げてきた。豊富な実績は、さらに新規顧客を獲得する際の強みになるとともに、顧客に対する交渉力を強めることで高い収益性にも貢献する。また、優良な顧客基盤やネットワークを有することは、他社との協業を進めるうえでも優位に働く可能性が高い。
e) サイバネティカとの提携による本人認証技術の活用
2017年3月に提携したサイバネティカ(エストニア)※が持つ情報共有技術「UXP」や本人認証技術「SplitKey」についても、同社サービスとの親和性が高い上、「情報銀行」や「電子政府」の実現に向けて大きな強みとなる可能性が高い。
※電子政府先進国であるエストニアにおいて、電子政府の基盤となるシステム「X-Road」でのデータベース連携のセキュリティシステムの構築、電子投票ソフトウェアの開発を行うなど、電子政府プロジェクトにおいて優れた実績を保有する。
口コミサイトやブログ等がブームに乗るなかで、それに伴うリスクに着目した事業を立ち上げ
3. 沿革
同社の前身の1つである旧株式会社エルテスは、現代表取締役社長である菅原貴弘(すがわらたかひろ)氏によって、2004年4月に企業のインターネット上でのブランディング支援を目的として設立された。その後、口コミサイトやブログ等がブームに乗るなかで、自ら口コミサイトを立ち上げる事業ではなく、そこに書かれている誹謗中傷等が企業経営に及ぼす影響等に着目し、2007年からその対策のためのソーシャルリスクコンサルティングサービス(検索エンジン関連サービス)を開始した。2010年からはTwitterやFacebook等、ソーシャルメディアの普及により新たに出現したネット炎上などのソーシャルリスクに関するデータの収集・蓄積を開始すると、2011年にはソーシャルリスクモニタリングサービス(ソーシャルメディアサービス)を立ち上げ、順調に事業を拡大してきた。
一方、もう1つの前身となるエヌアールピー株式会社(現在の同社)は、2012年4月にWebのモニタリングシステムの開発、保守、運用業務の受託を目的に設立された。事業上の連携を深めてきた両社であるが、2014年に経営基盤の強化による経営効率の向上を図ることを目的として経営統合を実施。エヌアールピーが旧エルテスを吸収合併し、商号を株式会社エルテスに変更することで現在の形となった。
2014年には、電通<4324>との資本業務提携により危機管理の分野におけるリアルとWebの棲み分けによる協業を開始。2015年10月には(株)産業革新機構(現(株)産業革新投資機構)等からの出資(534百万円)を受けると、2016年2月からは、これまでのソーシャルリスク領域からリスクインテリジェンス領域(情報漏えいなど内部脅威検知サービス)へと事業拡充を図っている。2016年11月29日に東証マザーズに上場した。
2017年8月には、新規事業の立ち上げに伴う戦略子会社2社の設立により、連結決算へと移行した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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