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日本調剤 Research Memo(7):2019年の薬機法改正を機に、調剤薬局業界が大きく動き出す可能性(2)

注目トピックス 日本株
■中長期成長戦略の進捗状況

(3) 同社の成長戦略と進捗状況
日本調剤<3341>(及び同業他社も同じだが)の成長戦略は、前述のような法令・制度の変化と無関係では成り立たないことは言うまでもない。上記の懸念は同社にもそのまま当てはまる。しかしながら、同社は「患者のための薬局ビジョン」に込められた国(厚労省)の考え方をしっかりと読み込み、それへの備えを従前から進めてきた。したがって、今回の薬機法改正による影響は相対的には小さいものと弊社では考えている。

同社の成長戦略の基本骨格は従来から一貫しておりぶれはない。簡潔にまとめると以下のa)〜f)のようになるだろう。

a) 業界再編は不可避であり、その中で『勝ち残りによるシェア拡大』を目指す。
b) そのための具体的な方法論として、『店づくり』と『店舗網の拡大』を着実に進める。
c) 店づくりにあっては国が掲げる『患者のための薬局ビジョン』に沿った店づくりを推進する。
d) 店舗網の拡大に際しては、自社出店(オーガニック出店)とM&Aを活用していく。
e) KPI(重要経営評価指標)としては『1店舗当たり売上高』で、c)及びd)の項目と密接に関わる
f) 中期成長戦略を実行に移すうえでは人材が不可欠なのは言うまでもなく、『人財投資』を先行して推進する

今回の薬機法改正によってc)のところで“薬機法における2類型の認定薬局を拡大する”といった表現へと変わる可能性もあるが、本質的には大きな違いはない。

成長戦略の構成要素としては、店舗網・店舗数、店づくり、人財投資、などがあるが、その詳細は前回レポート(2019年6月10日付)で述べたところから大きく変わっていない。以下では三津原庸介新社長を迎えた初めての決算説明会で浮かび上がったポイントを紹介する。

1) 店舗数について
同社は売上高では業界2位であるが、店舗数では5位〜6位のポジションにある。その差を埋めるのは1店舗当たり売上高で、同社はこの1店舗当たり売上高をKPIと位置付け、様々な経営判断の基礎としてきた。

今回の決算説明会において三津原庸介新社長は店舗数についてももう少し積極的に考えていく可能性について言及してきた。これはこれまで同社が維持してきた自力出店やM&Aの基準を緩和するということではなく、“姿勢”としてもう少し積極的に取り組むということだ。基準を維持したままであっても、検討の俎上に上がってくるM&Aの案件数は今よりも増えそうだとの手応えを感じていることが背景にあるようだ。

同社は年間50店の新規出店(自力出店とM&Aの合計)を1つの基準としている(2020年3月期は45店舗の新規出店を計画)。この数が今後見直される可能性があるが、スタンスの変化を確認するうえで、より分かりやすいのは同社のM&Aによる出店数が従来よりも明確に増加するかどうかだろう。

これまでのところ、同社は各個店の店舗運営を非常にうまくやってきたと弊社では考えている。しかし前述のように、薬機法改正により個店単位での店舗マネジメントは一段と難しくなることが想定される。投資家の視点としては、どのタイミングで店舗数増加のアクセルを踏むのが最も効率的なのか、今回の薬機法改正によってM&Aや新規出店の基準が変わるのか、等について改めて検討や(会社側との)議論をすることが重要と弊社では考えている。

2) 人材獲得と育成について
同社では、薬剤師の質向上を重視し、様々な研修制度や社内教育・社内資格の制度を設けている。この点をアピールポイントとして新卒を含めた人材獲得の成功へつなげ、それによって収益を拡大して、さらに人材投資を行って質と収益を向上させる、という好循環の確立に取り組んできた。現在までにその好循環は確立したと言える状況となっており、その具体的成果の1つが、2019年4月の新卒採用数約400人という結果だと弊社では考えている。同社はこのサイクルを今後、さらにブラッシュアップして継続させることを目指す方針だ。

2020年4月の新卒者については、350名を予定しており、ピークアウト感を明確にさせている。代わりに、既存社員の定着率の一段の向上と、研修強化による質の向上に取り組む方針だ。同社のこの判断は正鵠を射たものと弊社では考えている。薬剤師に求められる業務・スキルについては、対物業務から対人業務へと移行することが明確になっている。また薬機法改正による認定薬局の導入は、薬剤師のスキル、質の向上のステージが一段高まることを示唆していると考えられる。したがって、傘下に抱える薬剤師の数もさることながら、年齢やスキルレベルでどのような構成になっているかがこれまで以上に重要になってくるとみている。その大前提として高い定着率の実現はさらに重要と言える。同社が言うところの「人材の好循環サイクルは第2ステージへ」とはこうしたことを意図しているものと弊社では理解しており、今後打ち出される施策や、他社との差別化や収益拡大にどうつなげていくかについて見守りたいと考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)




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