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日本調剤 Research Memo(8):生産と販売の両面で高効率モデルが実現し、利益が急拡大するステージに

注目トピックス 日本株
■日本調剤<3341>の中長期成長戦略の進捗状況

3. 医薬品製造販売事業の中長期成長への取り組みと進捗状況
医薬品製造販売事業については、『2030年に向けた長期ビジョン』の中で、シェア15%の獲得を目標に掲げている。15%という数値の意味は、ジェネリック医薬品メーカーが将来的に5、6社に集約されるとの見方のもと、勝ち残りの1社となることを意味している。この目標設定や、それに向けた成長戦略は前回レポートで述べたところから大きな変化はない。

2020年3月期第2四半期を終えたところで弊社が注目するのは、生産体制面における生産コスト低下への取り組みで、とりわけ、その具体的戦略としての受託製造品目拡大の取り組みだ。業績の動向の項で述べたように、2020年3月期第2四半期において、販売面では、グループ内に国内トップクラスの調剤薬局チェーンを抱える強みを生かして収益成長を実現するという、同社グループならではの事業モデルの確立に成功した。次の課題は生産(製造)面ということになる。ここでも事業モデルを確立できれば、同社の医薬品製造販売事業は製販両面で“成功の方程式”が出そろい、その収益性はさらに一段アップすることが期待される。

同社は2018年4月につくば第二工場を完成させ、同年11月から製品出荷開始し、その後順調な稼働を続けてきた。つくば工場とつくば第二工場の2工場体制が完成したのを受けて、2019年3月に春日部工場を売却し、ぜい肉をそぎ落とした状況となっている。

“絞り込み”は財務面でも同じで、設備投資は2017年3月期の187億円をピークに2019年3月期は15億円にまで低下した。今後は保守・メンテナンス、一部の更新投資などで年間30億円〜50億円のレンジで推移するのが基本になると弊社ではみている(2020年3月期は38億円の設備投資計画)。一方、減価償却費は2019年3月期に前期比9億円増の35億円に急拡大したが、2020年3月期は前期比1億円増の36億円が計画されている。2021年3月期以降はそこから横ばいでの推移となる見込みだ。

こうした状況にあっては、工場の設備稼働率が収益、とりわけ利益の変動に大きな影響を及ぼすことになる。医薬品工場は、同じ製造プラントとはいえ鉄鋼メーカーの高炉や石油化学メーカーのナフサクラッカーとは異なり、100%に近い稼働率が実現できるわけではない。供給余力を保持することが重要視されるためだ。とはいえ、稼働率を一定水準以上に維持することが重要な点では同じであり、同社はその実現に向けて医薬品の受託製造の拡大に注力している。つくば第二工場の完成から現在までの1年半で、17品目の受託製造契約を獲得している。さらに水面下ではこれに続く受託製造契約の交渉が進んでいるもようだ。

つくば第二工場の特長は同一品目を大量生産する点に強みを有することにある。したがって受託製造においても、少量多品種生産、すなわち品目数を追うのではなく、生産数量の多い品目の受託製造契約の獲得に取り組んでいるとみられる。

受託製造の本格的な稼働は、2020年3月期下期からとなるもようだ。これまで医薬品製造販売事業の収益改善は販売面での業況改善に負うところが大きかったが、今後は生産面が収益成長要因としてフォーカスされることが期待される。これが順調に進めば同社は製販両面で高効率の事業モデルを確立することになり、医薬品製造販売事業の収益は急拡大期に向かうと弊社では期待している。


次代の成長けん引役と期待される医師紹介事業が本格的に始動
4. 医療従事者派遣・紹介事業の中長期成長への取り組みと進捗状況
医療従事者派遣・紹介事業はこれまで薬剤師の派遣事業を中核事業として成長を実現してきたが、今後の成長については薬剤師事業における派遣から紹介へのシフトと、取扱職種拡大における医師(紹介)と登録販売者(紹介)の強化で成長を目指す方針を打ち出しており、2020年3月期もこれに継続して取り組んでいる。

同社はここ数年、医師紹介事業の強化に向けて営業拠点の整備や人員増強などの先行投資を行ってきたが、2019年3月期までに完了させた。2020年3月期からは本格的な事業展開及び収益拡大による回収期へと移行するという認識で臨み、前述のように、第2四半期のセグメント業績は増収増益で着地した。

ただし、医師紹介事業だけを切り出した場合に想定どおりで推移しているかについては注意が必要だろう。医師紹介の領域では先行企業の市場シェア、認知度が圧倒的に大きいため、同社がこの分野で一足飛びに急成長することに過度な期待は禁物だ。

同社は薬剤師派遣で強固な営業基盤を確立している。それとの連携などを活用しながら、ある程度時間がかかっても、医師紹介の分野でも着実にプレゼンス(存在感)を高めていくことができると弊社では考えており、今後の成長を見守りたいと考えている。

医師紹介事業は他の事業に比べて高単価・高収益であるため、一旦事業が軌道に乗ってくれば収益インパクトは非常に大きいと期待される。

同社はまた、登録販売者の紹介事業を本格的に展開する計画だ。登録販売者については総数が20万人で、求人数が1万人前後で推移する市場となっている。紹介先はコンビニエンスストア、スーパー、ドラッグストアなどだ。薬剤師、医師に続く3本目の柱として早期に事業基盤の確立を目指すとみられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)




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