イルグルム Research Memo(1):「アドエビス」は広告効果測定ツール業界1位。オプトより「ADPLAN」譲受
[19/12/12]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
イルグルム(旧株式会社ロックオン)<3690>は、現代表取締役CEOの岩田進(いわたすすむ)氏が大学時代の2000年に自宅で創業した関西発のITベンチャー企業である。広告効果測定システム「アドエビス」、ECオープンプラットフォーム「EC-CUBE」をヒットさせたことで、事業が成長軌道に乗った。クラウド型広告効果測定システムの「アドエビス」は年々機能を拡張し、2015年にはマーケティングプラットフォーム「アドエビス」として進化し、その利便性が高く評価される。広告効果測定市場における同社の市場シェアは44.2%と圧倒的なNo.1(2018年度、4年連続)である。2014年に東証マザーズ市場に上場を果たした。2018年10月には、(株)EVERRISEより運用型広告レポート自動作成ツール「アドレポ」を事業承継。2019年8月には、株式会社イルグルムへ商号変更し、次のステージに向けて再スタートを切った。
1. 事業概要
同社はマーケティングPF事業として、顧客企業のデジタルマーケティング活動を支援する様々な商品・サービスをクラウドベースで提供している。顧客企業は、マスメディアや広告に対する反応(上流)から、リスティング広告のクリック履歴(中流)を経て、自社サイトでの申し込み(下流)に至るまで一気通貫で顧客行動やマーケティング施策の効果を把握できる。同社の商品ラインナップの中で中核となるのが、「アドエビス」と「アドレポ」である。「アドエビス」は広告効果測定システムを中心とした「測定」機能に強く、そこで蓄積されたマーケティングデータを「活用」する機能により、一気通貫したマーケティングを実現する、“マーケティング効果測定プラットフォーム”である。このツールは、各広告の成果を一元管理・可視化できるため、費用対効果の良し悪しを簡単に把握することができる。「アドレポ」は、これまで手作業で行われることが多かった運用広告のレポート作成を自動化。あらゆる媒体を横断したレポートを瞬時に出力することができる。つまり、同社の基盤技術は、測定したビッグデータを解析し、データ活用を自動化するというものである。
2. 業績動向
2019年9月期通期の業績は売上高2,204百万円(前期比22.1%増)、営業利益84百万円(前期は98百万円の損失)、経常利益79百万円(同115百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失34百万円(同88百万円の損失)となり、20%を超える増収を維持するとともに黒字化を達成した。売上高に関しては、主力のマーケティングPF事業が前期比27.5%増と成長をけん引した。主力サービス「アドエビス」での2018年からの新価格体系への移行により第3四半期には平均単価が10万円を超え、増収につながった。結果としては、狙いどおり単価向上が寄与して大幅増収となった。商流PF事業ではEC受託開発業務(ソリューション)の移管の影響が残り微減となったが、全社としては同22.1%増と増収基調が鮮明になった。営業利益に関しては、2019年9月期は利益回収期の始まりという位置付けどおり、黒字化を達成した。人件費の131百万円増、サーバー費等の売上原価の増加75百万円増などのコスト増があったものの、マーケティングPF事業の増収効果が上回った。なお、2019年9月期は訴訟関連損失60百万円等を特別損失に計上したため、親会社株主に帰属する当期純損失34百万円となったが、一過性であり2020年9月期以降は発生しない。
3. 今後の見通し
同社は、期初の時点では、2020年9月期の業績に影響を与える未確定な要素が多いため、第2四半期(累計)及び通期の業績予想を公開していない。合理的な算定が可能となった時点で速やかに公表する予定である。目標値としては、同社が中期経営計画で公開している2020年9月期の売上高計画30億円がある。
売上面では、主力のマーケティングPF事業が引き続きけん引する予想である。2018年にアドエビスが新価格体系へ移行した影響が残るため、アクティブアカウント数の停滞はしばらく続くことが予想されるが、平均単価の上昇により増収が期待できる。中期経営計画で取り組んできた開発及びマーケティング施策が進捗し、解約率を抑制しつつ新規を獲得し続けるビジネスモデルが完成に近づいている。近年事業の整理のため減収が顕著だった商流PF事業は、ソリューション部分の移管が完了したためEC-CUBE部分のみとなり、今後は維持予想。オーガニックな成長以外にも、M&Aや新規サービス展開などをからめて売上高計画30億円の達成を目指す。利益面では、利益回収フェーズの2年目に当たるため、増益も期待できる。過去数年は、開発及びマーケティング&セールス、カスタマーサクセスの人員の増加が著しかったが、2020年9月期は増加傾向ではあるものの、そのペースが落ち着く予想。本来10〜20%程度の営業利益率をあげるビジネスモデルを持つ同社であり、最大のコストである人件費の伸びが落ち着けば、増収効果により利益はついてくる。弊社では、営業利益率で10%以上(営業利益額で300百万円以上)を見込んでいる。
4. 成長戦略
同社は2019年11月に(株)オプトより広告効果測定ツール「ADPLAN」を提供する事業を譲受する基本合意を締結した。オプトの「ADPLAN」は同社「アドエビス」の競合サービスの1つ。この事業を譲り受けることにより、広告効果測定領域における市場競争力を強化し、マーケティングプラットフォーム事業をさらに成長させることを狙う。譲受する事業の2018年12月期の売上高は286 百万円。2020年9月期の売上高目標30億円達成にも大きく前進した。なお、事業譲受日は2020年1月を予定する。
■Key Points
・株式会社ロックオンから株式会社イルグルムへ商号変更
・主力の「アドエビス」は広告効果測定ツール業界1位。サブスクリプションモデルのため安定増収が見込める。新価格体系により2019年3月期第3四半期には月単価10万円超え
・2019年9月期は利益回収期に入る。20%超えの成長を維持しつつ、公約通り営業利益・経常利益の黒字化を達成
・ 2020年9月期は中期経営計画最終年度の売上計画30億円達成を目指す。人員増が落ち着くため、増益幅が大きくなる可能性
・オプトより、広告効果測定ツール「ADPLAN」を提供する事業を譲受
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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イルグルム(旧株式会社ロックオン)<3690>は、現代表取締役CEOの岩田進(いわたすすむ)氏が大学時代の2000年に自宅で創業した関西発のITベンチャー企業である。広告効果測定システム「アドエビス」、ECオープンプラットフォーム「EC-CUBE」をヒットさせたことで、事業が成長軌道に乗った。クラウド型広告効果測定システムの「アドエビス」は年々機能を拡張し、2015年にはマーケティングプラットフォーム「アドエビス」として進化し、その利便性が高く評価される。広告効果測定市場における同社の市場シェアは44.2%と圧倒的なNo.1(2018年度、4年連続)である。2014年に東証マザーズ市場に上場を果たした。2018年10月には、(株)EVERRISEより運用型広告レポート自動作成ツール「アドレポ」を事業承継。2019年8月には、株式会社イルグルムへ商号変更し、次のステージに向けて再スタートを切った。
1. 事業概要
同社はマーケティングPF事業として、顧客企業のデジタルマーケティング活動を支援する様々な商品・サービスをクラウドベースで提供している。顧客企業は、マスメディアや広告に対する反応(上流)から、リスティング広告のクリック履歴(中流)を経て、自社サイトでの申し込み(下流)に至るまで一気通貫で顧客行動やマーケティング施策の効果を把握できる。同社の商品ラインナップの中で中核となるのが、「アドエビス」と「アドレポ」である。「アドエビス」は広告効果測定システムを中心とした「測定」機能に強く、そこで蓄積されたマーケティングデータを「活用」する機能により、一気通貫したマーケティングを実現する、“マーケティング効果測定プラットフォーム”である。このツールは、各広告の成果を一元管理・可視化できるため、費用対効果の良し悪しを簡単に把握することができる。「アドレポ」は、これまで手作業で行われることが多かった運用広告のレポート作成を自動化。あらゆる媒体を横断したレポートを瞬時に出力することができる。つまり、同社の基盤技術は、測定したビッグデータを解析し、データ活用を自動化するというものである。
2. 業績動向
2019年9月期通期の業績は売上高2,204百万円(前期比22.1%増)、営業利益84百万円(前期は98百万円の損失)、経常利益79百万円(同115百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失34百万円(同88百万円の損失)となり、20%を超える増収を維持するとともに黒字化を達成した。売上高に関しては、主力のマーケティングPF事業が前期比27.5%増と成長をけん引した。主力サービス「アドエビス」での2018年からの新価格体系への移行により第3四半期には平均単価が10万円を超え、増収につながった。結果としては、狙いどおり単価向上が寄与して大幅増収となった。商流PF事業ではEC受託開発業務(ソリューション)の移管の影響が残り微減となったが、全社としては同22.1%増と増収基調が鮮明になった。営業利益に関しては、2019年9月期は利益回収期の始まりという位置付けどおり、黒字化を達成した。人件費の131百万円増、サーバー費等の売上原価の増加75百万円増などのコスト増があったものの、マーケティングPF事業の増収効果が上回った。なお、2019年9月期は訴訟関連損失60百万円等を特別損失に計上したため、親会社株主に帰属する当期純損失34百万円となったが、一過性であり2020年9月期以降は発生しない。
3. 今後の見通し
同社は、期初の時点では、2020年9月期の業績に影響を与える未確定な要素が多いため、第2四半期(累計)及び通期の業績予想を公開していない。合理的な算定が可能となった時点で速やかに公表する予定である。目標値としては、同社が中期経営計画で公開している2020年9月期の売上高計画30億円がある。
売上面では、主力のマーケティングPF事業が引き続きけん引する予想である。2018年にアドエビスが新価格体系へ移行した影響が残るため、アクティブアカウント数の停滞はしばらく続くことが予想されるが、平均単価の上昇により増収が期待できる。中期経営計画で取り組んできた開発及びマーケティング施策が進捗し、解約率を抑制しつつ新規を獲得し続けるビジネスモデルが完成に近づいている。近年事業の整理のため減収が顕著だった商流PF事業は、ソリューション部分の移管が完了したためEC-CUBE部分のみとなり、今後は維持予想。オーガニックな成長以外にも、M&Aや新規サービス展開などをからめて売上高計画30億円の達成を目指す。利益面では、利益回収フェーズの2年目に当たるため、増益も期待できる。過去数年は、開発及びマーケティング&セールス、カスタマーサクセスの人員の増加が著しかったが、2020年9月期は増加傾向ではあるものの、そのペースが落ち着く予想。本来10〜20%程度の営業利益率をあげるビジネスモデルを持つ同社であり、最大のコストである人件費の伸びが落ち着けば、増収効果により利益はついてくる。弊社では、営業利益率で10%以上(営業利益額で300百万円以上)を見込んでいる。
4. 成長戦略
同社は2019年11月に(株)オプトより広告効果測定ツール「ADPLAN」を提供する事業を譲受する基本合意を締結した。オプトの「ADPLAN」は同社「アドエビス」の競合サービスの1つ。この事業を譲り受けることにより、広告効果測定領域における市場競争力を強化し、マーケティングプラットフォーム事業をさらに成長させることを狙う。譲受する事業の2018年12月期の売上高は286 百万円。2020年9月期の売上高目標30億円達成にも大きく前進した。なお、事業譲受日は2020年1月を予定する。
■Key Points
・株式会社ロックオンから株式会社イルグルムへ商号変更
・主力の「アドエビス」は広告効果測定ツール業界1位。サブスクリプションモデルのため安定増収が見込める。新価格体系により2019年3月期第3四半期には月単価10万円超え
・2019年9月期は利益回収期に入る。20%超えの成長を維持しつつ、公約通り営業利益・経常利益の黒字化を達成
・ 2020年9月期は中期経営計画最終年度の売上計画30億円達成を目指す。人員増が落ち着くため、増益幅が大きくなる可能性
・オプトより、広告効果測定ツール「ADPLAN」を提供する事業を譲受
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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