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イルグルム Research Memo(3):「アドエビス」は新価格体系により第3四半期には月単価10万円超え

注目トピックス 日本株
■事業概要

1. マーケティングPF事業
(1) 事業特性、商品特性
イルグルム<3690>はマーケティングPF事業として、顧客企業のデジタルマーケティング活動を支援する様々な商品・サービスをクラウドベースで提供している。顧客企業は、マスメディアや広告に対する反応(上流)から、リスティング広告のクリック履歴(中流)を経て、自社サイトでの申し込み(下流)に至るまで一気通貫で顧客行動やマーケティング施策の効果を把握できる。同社の商品ラインナップの中で中核となるのが、「アドエビス」と「アドレポ」である。「アドエビス」は広告効果測定システムを中心とした「測定」機能に強く、そこで蓄積されたマーケティングデータを「活用」する機能により、一気通貫したマーケティングを実現する、“マーケティング効果測定プラットフォーム”である。このツールは、各広告の成果を一元管理・可視化できるため、費用対効果の良し悪しを簡単に把握することができる。「アドレポ」は、これまで手作業で行われることが多かった運用広告のレポート作成を自動化。あらゆる媒体を横断したレポートを瞬時に出力することができる。つまり、同社の基盤技術は、測定したビッグデータを解析し、データ活用を自動化するというものである。

(2) 顧客・流通
顧客はデジタルマーケティングを行う企業・団体・広告代理店などである。デジタル広告費用が月50万円を超えるようになると、「アドエビス」などのツールを使い効果・効率を求めるニーズが高まる傾向にある。営業に関しては、約300社の代理店経由と自社による直接販売がある。ちなみに、公開可能な導入実績(「アドエビス」及びDMP活用)として、ライオン<4912>(トイレタリー)、(株)ECC(教育)、(株)やずや(通販)、アイフル<8515>(金融)、NTTデータ<9613>(通信)など多様な業種で活用されている。同社はアドエビスの専門知識を持つパートナーを認定する制度「EBiStar」を新設しており、 (株)電通ダイレクトマーケティング、トランスコスモス<9715>、フルスピード<2159>などを含む87社が認定されている。

(3) 市場・競合
インターネット広告市場は継続的に成長しており、同社には追い風となっている。2018年のインターネット広告市場規模は1兆7,589億円と推定され、広告市場の4分の1を超えて益々存在感を増している。スマートフォン広告の増加、動画広告の増加、SNS広告の増加、アドテクノロジーの進化を背景にした運用型広告の拡大などが主な要因である。出稿するメディアの多様化は一元管理のニーズを高めていると考えられ、この点でも一気通貫のプラットフォームを持つ同社にとっては追い風である。

広告効果測定に限定して市場及び競合状況整理をすると、3つのセグメント(ローエンド顧客、ミドルエンド顧客、ハイエンド顧客)に分けることができる。ローエンド顧客は、ネット広告出稿量が少なく、Googleアナリティクスなどの無料サービスでニーズが満たされている。ミドルエンド顧客は、同社の対象顧客であり、月額50万円以上のネット広告出稿を多様なメディアに行っており、一元管理や効果・効率を求めている層である。ハイエンド顧客は、さらに大規模な広告出稿を行い、カスタマイズの自由度が高く専門性が高い。Adobe Analyticsがこのニーズに応える代表的なツールであり、同社の月額単価とは数倍の価格差がある。同社は、ミドルエンド市場に特化して展開しているため、競合サービスとは棲み分けが成されている。同社は、広告効果測定市場において市場シェア44.2%を獲得し、2位に2倍以上の差を付けている。

(4) 重要な経営指標(KPI)
マーケティングPF事業の重要な経営指標(KPI)は、「アドエビス」のアクティブアカウント数と月額平均単価である。2019年9月期末のアクティブな顧客数は1,425件(前期末比で93件減少)となった。件数減少の背景には新価格体系への移行がある。一連の開発による機能充実に合わせ、2018年より価格体系の移行を順次行っている。その結果、2019年3月期第4四半期の顧客単価(平均月単価)は、107,143円(前年同期比22,225円増)と10万円を超えてなお上昇している。価格体系の移行は新規顧客から開始され、既存顧客においても移行がほぼ完了した段階だ。マーケティングPF事業の売上高は「アカウント数」×「月額平均単価」で算出されるため、2019年9月期に入ってからの単価の上昇が増収に貢献している。

(5) サブスクリプションモデル
マーケティングPF事業の事業特性は、ライフタイムが長いサブスクリプションのビジネスモデルである。顧客獲得のためのマーケティング及びセールス投資が先行するものの、回収後の長いライフタイムを通じて、安定収益を獲得していくモデルとなっている。1回契約すると平均で3年以上継続するため、顧客数が積み上がる傾向にある。したがって、同社はマーケティングやセールスへの積極的な投資を先行させ、中長期的な収益拡大を目指す方針を取っている。マーケティング及びセールス部門費用の対売上比は理想値である30%をやや下回り26%(2019年9月期通期)である。

2. 商流PF事業(EC-CUBE部門)
「EC-CUBE」は同社がプロデュースするECサイト構築ツールである。「高いカスタマイズ性」と「低コスト/簡単」を両立し、ECサイトの質を求めるユーザーから高い支持を得てきた。現在、国内シェアNo.1のオープンソースとしてWeb制作に欠かせないプラットフォームとなっている。

特筆すべきはそのビジネスモデルで、1)無料配布、2)開発は外部コミュニティが行う(一部は同社も担当)、3)営業はパートナー企業が行う、4)物流や決済などは外部のEC関連事業者が行う、5)同社はEC関連事業者からのマージンを収入とする、などの特徴が挙げられる。同社は人材や設備などの大きな投資は行わず、顧客を含めたプレーヤーすべてが満足するエコシステムを構築している。

EC市場全体としては、アマゾン・ドット・コムなどの大手事業者に取引が集中する傾向にあるため、中小EC事業者の自社サイトの取引は伸び悩む会社もある。同社としても、EC-CUBE部門の売上は横ばいである。今後も大きな投資などはしないものの、デザイン性やセキュリティの強化策を着実に行っていく。2019年1月には、子会社(株)イーシーキューブによる独立した事業運営体制がスタートし、更なる成長を模索する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)




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