クオールHD Research Memo(10):マンツーマン薬局と親和性の高い「地域連携薬局」認定取得を進める方針(2
[19/12/13]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略と進捗状況
(2) 薬機法改正に対する同社グループの対応
薬機法改正(認定薬局の出現)に対する直接的な対応策については、その認定基準の厚労省令が発表されていないため、クオールホールディングス<3034>(他社も同様であるが)は具体的な方針や施策などを発表していない。しかしながら、「患者のための薬局ビジョン」において大きな方向性は従来から示されており、それに沿った店づくりや体制づくりを進めていくことが薬機法改正への対応にもつながると考えられ、同社自身もそうしたスタンスで臨んでいる。
具体的アクションや施策を策定する大前提として、認定薬局の2つのタイプのうち、主としてどちらを目指すのかが決定される必要があると考えられる。この点について、同社のスタンスは明快で、「地域連携薬局」としての認定を目指すことになるだろう。その最大の理由は同社が推進する“マンツーマン薬局”のコンセプトが地域連携薬局と親和性が高いと考えられることにある。
会社概要の項で述べたように、マンツーマン薬局のポイントは処方元医療機関とクオール薬局との深い連携関係にある。医療機関との1対1対応という意味では、いわゆる門前薬局と共通するが、門前薬局は一般には特定の“病院”を対象としているのに対し、マンツーマン薬局は特定の“診療所(クリニック)”を対象にしている。その差は、規模(処方箋応需枚数)はもちろんであるが、それ以上に顧客層の違いが大きい。病院には様々な地域から(あるいは、より広範囲から)患者が訪れるが、クリニックの場合は、近隣に住居や職場がある等、病院に比べて対象が絞り込まれる。したがって、処方元医療機関、患者、同社(薬局)の3社間で緊密な連携を取りやすい状況がおのずと生まれることになる。この点を強みとして地域連携薬局の認定を取得し、生き残りを図るというのが、今般の薬機法改正に対する同社の基本スタンスだ。
同社はこれと同じ考え方に基づき、「患者のための薬局ビジョン」で掲げられた健康サポート薬局についても、積極的に推進してきている。健康サポート薬局は、かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能に加え、地域住民による主体的な健康の保持増進を積極的に支援する機能を備えた薬局が、届出によって“健康サポート薬局”として公表できることとしたものだ。同社は2019年11月末時点で100を超える健康サポート薬局の届出を済ませており、総店舗数に占める割合は12%〜13%となっている。2020年3月期末までにはさらに上積みを図る計画だ。
同社が健康サポート薬局に注力することは、認定薬局制度において地域連携薬局の認定取得に軸足を置く同社の戦略に沿ったものであり、合理的な施策と弊社では考えている。制度上も、健康サポート薬局の存在意義が今後高まる可能性があると考えられる。理由は、健康サポート薬局への期待の大きさにも関わらずその普及率が低いことについて国が満足していないためだ。同時にまた、健康サポート薬局の制度は認定薬局制度と並行して存続する見通しとなっている。そうなると将来的に、健康サポート薬局の普及率を上げるための施策として、健康サポート薬局の届出を地域連携薬局の認定条件とするようなケースも想定できる。そうなった場合にはまさに同社が進める健康サポート薬局強化策は、差別化要因、優位性確保要因として大きな意味を持つことになるだろう。
さらに言えば、今回の薬機法改正の主眼が薬剤師・薬局のあり方の見直しにある点も重要だ。認定薬局として2つの類型が設定されたものの、国の狙いとしては地域連携薬局の拡大に主眼が置かれている可能性が高い。専門医療機関連携薬局の数は、大学病院等がその連携先として想定されている可能性があり、仮にそうであるならばおのずと数は限定されることになる。すなわち、“市場性”という点では地域連携薬局の方が圧倒的に大きいことになり、ここにターゲットをおいて施策を展開する同社は、それだけ優位な位置にあるとの見方も可能だ。
(3) 「戦略的出店による規模拡大」の考え方と進捗
同社の成長戦略の中核とも言える店舗展開については前回レポート(2019年6月25日付)で詳述しているため、以下では要点を絞って述べる。
店舗数の考え方について、同社は店舗数を追うことはしないとしている。これは店舗数を増やさないという意味ではなく、店舗網拡大に当たっては収益成長に向けた効率性や戦略合致性を最優先に作業を進めるということだ。その結果としての店舗数の拡大があるという位置付けだ。したがって、全都道府県出店といったことは同社の目的にはまったく入っていない。
店舗網拡大におけるもう1つの重要テーマであるM&Aについては、順調に推移しているというのが弊社の印象だ。「順調」の意味は、耳目を集める超大型案件や、矢継ぎ早に多数のM&Aを実施するというようなことはないものの、自身の店舗展開戦略に沿って、ターゲット地域の優良な事業者を着実に子会社化しているという意味だ。また「優良」の意味は、買収された事業者の店舗規模の大きさや、買収された後も従来の枠組みの中で新規出店を行う体力や営業地盤を抱えている、という意味だ。
既述のように、2020年3月期第2四半期は、ナチュラルライフとセラ・メディックを子会社化した。いずれも競合が激しかったとみられるが、処方元の医療機関との連携を重視する経営姿勢(同社のマンツーマン薬局戦略)が被買収企業の経営者の共感を獲得したことにあるとみられる。こうした要因は、他社が簡単に真似したり覆したりできない性質のものであるため、これまでのM&Aの成功事例が再現される可能性は十分高いと弊社では考えている。
マンツーマン薬局と並ぶもう1つの特徴である、異業種連携による新業態薬局も、順調な拡大が続いている。2020年3月期第2四半期においてJR京都店、JR岸辺店がオープンし、下期に入った2019年11月1日に、東急<9005>との連携による初店舗を長津田駅に出店した。
駅ナカ・駅チカ店舗の処方箋応需枚数は年を追って(すなわち認知度の高まりに応じて)右肩上がりで増加している。こうした実績を踏まえ、今後も新業態店舗の開発には継続的に注力していく方針だ。
(4) 「既存店の価値創出」の考え方と進捗
これについては、薬機法改正への対応について述べたこととかなりの部分が重なる。店づくりの方向性がこのテーマの目的であり、その点について、薬機法改正を受けて地域連携薬局の認可取得に全力を挙げるという方向性が固まったというのが現在の状況だ。そのための“ベース”となる機能として、かかりつけ薬剤師・薬局や健康サポート薬局としての強化に取り組んでいる。
それに加えて、薬剤師の業務内容が、調剤作業などの対物業務から、患者へのきめ細やかな服薬指導などの対人業務へと移行することが求められている現状に対応し、対物業務の効率化や自動化に投資を進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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(2) 薬機法改正に対する同社グループの対応
薬機法改正(認定薬局の出現)に対する直接的な対応策については、その認定基準の厚労省令が発表されていないため、クオールホールディングス<3034>(他社も同様であるが)は具体的な方針や施策などを発表していない。しかしながら、「患者のための薬局ビジョン」において大きな方向性は従来から示されており、それに沿った店づくりや体制づくりを進めていくことが薬機法改正への対応にもつながると考えられ、同社自身もそうしたスタンスで臨んでいる。
具体的アクションや施策を策定する大前提として、認定薬局の2つのタイプのうち、主としてどちらを目指すのかが決定される必要があると考えられる。この点について、同社のスタンスは明快で、「地域連携薬局」としての認定を目指すことになるだろう。その最大の理由は同社が推進する“マンツーマン薬局”のコンセプトが地域連携薬局と親和性が高いと考えられることにある。
会社概要の項で述べたように、マンツーマン薬局のポイントは処方元医療機関とクオール薬局との深い連携関係にある。医療機関との1対1対応という意味では、いわゆる門前薬局と共通するが、門前薬局は一般には特定の“病院”を対象としているのに対し、マンツーマン薬局は特定の“診療所(クリニック)”を対象にしている。その差は、規模(処方箋応需枚数)はもちろんであるが、それ以上に顧客層の違いが大きい。病院には様々な地域から(あるいは、より広範囲から)患者が訪れるが、クリニックの場合は、近隣に住居や職場がある等、病院に比べて対象が絞り込まれる。したがって、処方元医療機関、患者、同社(薬局)の3社間で緊密な連携を取りやすい状況がおのずと生まれることになる。この点を強みとして地域連携薬局の認定を取得し、生き残りを図るというのが、今般の薬機法改正に対する同社の基本スタンスだ。
同社はこれと同じ考え方に基づき、「患者のための薬局ビジョン」で掲げられた健康サポート薬局についても、積極的に推進してきている。健康サポート薬局は、かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能に加え、地域住民による主体的な健康の保持増進を積極的に支援する機能を備えた薬局が、届出によって“健康サポート薬局”として公表できることとしたものだ。同社は2019年11月末時点で100を超える健康サポート薬局の届出を済ませており、総店舗数に占める割合は12%〜13%となっている。2020年3月期末までにはさらに上積みを図る計画だ。
同社が健康サポート薬局に注力することは、認定薬局制度において地域連携薬局の認定取得に軸足を置く同社の戦略に沿ったものであり、合理的な施策と弊社では考えている。制度上も、健康サポート薬局の存在意義が今後高まる可能性があると考えられる。理由は、健康サポート薬局への期待の大きさにも関わらずその普及率が低いことについて国が満足していないためだ。同時にまた、健康サポート薬局の制度は認定薬局制度と並行して存続する見通しとなっている。そうなると将来的に、健康サポート薬局の普及率を上げるための施策として、健康サポート薬局の届出を地域連携薬局の認定条件とするようなケースも想定できる。そうなった場合にはまさに同社が進める健康サポート薬局強化策は、差別化要因、優位性確保要因として大きな意味を持つことになるだろう。
さらに言えば、今回の薬機法改正の主眼が薬剤師・薬局のあり方の見直しにある点も重要だ。認定薬局として2つの類型が設定されたものの、国の狙いとしては地域連携薬局の拡大に主眼が置かれている可能性が高い。専門医療機関連携薬局の数は、大学病院等がその連携先として想定されている可能性があり、仮にそうであるならばおのずと数は限定されることになる。すなわち、“市場性”という点では地域連携薬局の方が圧倒的に大きいことになり、ここにターゲットをおいて施策を展開する同社は、それだけ優位な位置にあるとの見方も可能だ。
(3) 「戦略的出店による規模拡大」の考え方と進捗
同社の成長戦略の中核とも言える店舗展開については前回レポート(2019年6月25日付)で詳述しているため、以下では要点を絞って述べる。
店舗数の考え方について、同社は店舗数を追うことはしないとしている。これは店舗数を増やさないという意味ではなく、店舗網拡大に当たっては収益成長に向けた効率性や戦略合致性を最優先に作業を進めるということだ。その結果としての店舗数の拡大があるという位置付けだ。したがって、全都道府県出店といったことは同社の目的にはまったく入っていない。
店舗網拡大におけるもう1つの重要テーマであるM&Aについては、順調に推移しているというのが弊社の印象だ。「順調」の意味は、耳目を集める超大型案件や、矢継ぎ早に多数のM&Aを実施するというようなことはないものの、自身の店舗展開戦略に沿って、ターゲット地域の優良な事業者を着実に子会社化しているという意味だ。また「優良」の意味は、買収された事業者の店舗規模の大きさや、買収された後も従来の枠組みの中で新規出店を行う体力や営業地盤を抱えている、という意味だ。
既述のように、2020年3月期第2四半期は、ナチュラルライフとセラ・メディックを子会社化した。いずれも競合が激しかったとみられるが、処方元の医療機関との連携を重視する経営姿勢(同社のマンツーマン薬局戦略)が被買収企業の経営者の共感を獲得したことにあるとみられる。こうした要因は、他社が簡単に真似したり覆したりできない性質のものであるため、これまでのM&Aの成功事例が再現される可能性は十分高いと弊社では考えている。
マンツーマン薬局と並ぶもう1つの特徴である、異業種連携による新業態薬局も、順調な拡大が続いている。2020年3月期第2四半期においてJR京都店、JR岸辺店がオープンし、下期に入った2019年11月1日に、東急<9005>との連携による初店舗を長津田駅に出店した。
駅ナカ・駅チカ店舗の処方箋応需枚数は年を追って(すなわち認知度の高まりに応じて)右肩上がりで増加している。こうした実績を踏まえ、今後も新業態店舗の開発には継続的に注力していく方針だ。
(4) 「既存店の価値創出」の考え方と進捗
これについては、薬機法改正への対応について述べたこととかなりの部分が重なる。店づくりの方向性がこのテーマの目的であり、その点について、薬機法改正を受けて地域連携薬局の認可取得に全力を挙げるという方向性が固まったというのが現在の状況だ。そのための“ベース”となる機能として、かかりつけ薬剤師・薬局や健康サポート薬局としての強化に取り組んでいる。
それに加えて、薬剤師の業務内容が、調剤作業などの対物業務から、患者へのきめ細やかな服薬指導などの対人業務へと移行することが求められている現状に対応し、対物業務の効率化や自動化に投資を進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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