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アドクリ Research Memo(2):国内最大級の保険選びサイト「保険市場」を運営する独立系保険代理店の大手(1)

注目トピックス 日本株
■事業概要

1. 事業の内容
アドバンスクリエイト<8798>は保険代理店事業、メディア事業、再保険事業の3つの事業に加えて、新たに保険代理店事業からASP事業を独立して開示した。事業別の構成比(2019年9月期実績)で見ると、保険代理店事業が売上高の76.3%、営業利益の57.9%を占める主力事業となっているが、2013年9月期の時点では売上高、営業利益ともに保険代理店事業が90%以上を占めていたことからすると、この数年間でメディア事業や再保険事業が成長し、また、新たにASP事業も加わるなど収益ポートフォリオの多様化が進んでいる。連結子会社としては、メディア事業を展開する(株)保険市場と再保険事業を展開するAdvance Create Reinsurance Inc.の2社がある。

(1) 保険代理店事業
保険代理店事業では、同社の保険選びサイト「保険市場」を通じて資料請求や問い合わせなどがあった見込み客に対して、通信販売やネット完結型の非対面販売、同社直営店舗であるコンサルティングプラザ「保険市場」での対面販売、提携代理店での販売など多様な販売チャネルを通じて、保険商品の販売を行っている。

販売する保険商品は生命保険や損害保険、少額短期保険など個人が利用する保険商品のほか、法人向け保険商品も取扱っており、2019年11月時点の「保険市場」での取扱保険会社数は85社(生命保険28社、損害保険29社、少額短期保険28社)、保険商品数では200点を超え業界最大規模を誇っている。

保険代理店事業における売上げの主な内容は、保険会社から支払われる手数料収入となる。保険契約者が保険会社に支払った保険料に対して、定められた手数料率を乗じたものが保険会社から同社に支払われる。生命保険など支払いが複数年にわたるものは、初年度と次年度以降で手数料率が変動するタイプの商品もある。手数料率に関しては、会社ごと、保険商品ごとに様々だが、傾向的には貯蓄性の高い商品の手数料率が低く、逆に掛け捨て型の商品は高くなる。

なお、提携先の代理店で販売契約したものに関しては、手数料収入を約半分ずつにシェアする格好となっている。販売契約のための人件費等が掛からないため、利益率は直営店で販売した場合と比較して大きく変わらない。

販売拠点としては、2019年9月期末時点で直営店が12拠点、提携代理店社数が87社297店舗となっている。直営店に関しては、交通至便な都市部のランドマーク的ビルに出店し、金融商品に対するリテラシーが高いアッパーミドル層を中心に販売していく戦略で、営業スタッフは2019年9月時点で117人となっている。また、直営店でカバーしきれないエリアの見込み顧客に対しては、提携代理店に送客している。なお、提携代理店社数に関しては、改正保険業法の施行(2016年5月)後も各社のガバナンスやコンプライアンス体制、セキュリティ管理体制等のチェックを継続して実施したため施行前(2015年9月期末時点)の170社から2018年9月期末は78社まで減少していたが、久しぶりに増加に転じている。また、提携代理店における保険募集人については前期末の5.2万人から5.6万人と約8%増加しており、販売ネットワークとしては広がってきている。

(2) ASP事業
ASP事業では、salesforce.comのクラウドサービスを活用して自社開発した顧客管理システム「御用聞き」の外販を2018年11月より開始したほか、2019年6月には顧客情報一括登録システム「丁稚」の外販を開始、事業規模が大きくなったことから保険代理店事業から分離独立させた。

「御用聞き」の特徴は、クラウドサービスにより低コストで利用が可能なこと、保険業法や個人情報保護法等の関係法令に準拠しており、スムーズな顧客情報の管理・共有が可能なこと、各保険商品の手数料データの取込みと比較・分析ができること、歩合外務員の歩合率を設定する機能や報酬計算機能などを備えていること、などが挙げられる。乗合代理店では多くの保険商品を取り扱っており、保険商品ごとに手数料やインセンティブが異なるなど複雑な仕組みとなっている。業務効率の面から利便性の高い顧客管理システムが求められているため、同社システムの潜在需要は大きいと言える。

また、「丁稚」は同社が構築する共通プラットフォームシステム「ACP(Advanced Create Cloud Platform)」と保険会社の基幹システムを連携させることで、複数社にまたがる保険商品の申込み手続きを1度の記入で完結できるシステムとなる。乗合代理店では、申し込み手続きに時間が取られるケースが少なくなく、「丁稚」を導入することによる生産性向上の効果は大きいと言える。また、「丁稚」は「御用聞き」を利用していない代理店でもCRMシステムを「ACP」と連携することで利用が可能となる。2019年9月末時点で連携している生命保険会社は12社となっており、今後も連携先を広げていくことで導入効果をより高めていく取り組みを進めていく。

販売ターゲットは提携代理店のほか、複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店や他の金融機関となる。保険募集人の数は国内で100万人規模となり、このうち乗合代理店で数十万人規模、同社の提携代理店だけでも5.6万人の規模となる。料金は月額課金制でIDごとに数千円/月の水準となっており、現在の平均売上単価は約3千円/月と見られる。注目すべき点は同システムが社内利用を目的に開発されたため、開発費負担がほとんどかからず高い収益性が期待できることにある。ASP事業の費用としては、営業の人件費を保険代理店事業と折半して計上しているほか、開発費の一部(外販用の機能のみ)を計上している。競合サービスとしては、NTTデータ<9613>が2002年より販売している「保険会社共同ゲートウェイ」があるが、積極的に売り込んでいるわけでもなく、今のところ同社にとって脅威とは見ていないようだ。

(3) メディア事業
メディア事業は、保険選びサイト「保険市場」を広告媒体とした広告枠の販売が主な収入源となっている。保険選びサイトという特性上、保険への関心が高い顧客層に直接アプローチできるため、広告主も保険会社や保険代理店が大半で広告単価も上昇傾向にある。また、2〜3年前より自社で蓄積してきた広告運用業務のノウハウを用いて、保険会社向けにSEO対策を中心とした広告運用を受託するメディアレップ事業にも注力している。保険会社からは費用対効果が高いとの好評価を受けているようで、顧客数、取引額ともに年々増加傾向にある。

(4) 再保険事業
再保険事業は、同社が保険代理店として獲得した保険契約の一部について、元受保険会社と同社の子会社であるAdvance Create Reinsurance Inc.との間で再保険契約を結ぶスキームとなっている。主に生命保険の再保険を中心に引き受けており、2019年9月末時点の契約先企業は11社(生命保険8社、損害保険2社、少額短期保険1社)となっている。ストック型のビジネスモデルであるため、期初段階でほぼ年間の収入見通しが把握可能であることが特徴で、大きな自然災害や環境変化によって保険会社の保険金支払い額が大きく増えない限りは、営業利益率で15%前後の高収益性と安定性が期待できる事業となる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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