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窪田製薬HD Research Memo(1):革新的遠隔診断ソリューションの「PBOS」は2020年の商品化を目指す

注目トピックス 日本株
■要約

窪田製薬ホールディングス<4596>は革新的な眼疾患治療薬及び医療デバイスの開発を進める米アキュセラ・インクを子会社に持つ持株会社で、2016年12月に東証マザーズに上場した。現在は、加齢黄斑変性症や糖尿病黄斑浮腫等の網膜疾患患者向けの遠隔眼科医療モニタリングデバイス「PBOS (Patient Based Ophthalmology Suite)」と、スターガルト病及び網膜色素変性を適応対象とした治療薬候補品の3つのパイプラインを中心に開発を進めている。また、2019年3月にNASA(米航空宇宙局)と、宇宙飛行士の眼疾患診断用小型OCT(光干渉断層計)※に関する開発受託契約を締結し、開発をスタートしている。

※OCT(Optical Coherence Tomography)は赤外線を利用して網膜の断面を精密に撮影する検査機器のことで、緑内障や加齢黄斑変性症等の網膜疾患患者の診断用として使用される。


1. 開発パイプラインの進捗状況
主要開発パイプラインのうち、最も早く商用化が見込まれる「PBOS」については、2020年内の米国での販売開始に向けた開発が進んでいる。製品仕様に関しては客観的データである網膜の厚み測定をする小型OCTと、主観的データとなる視力測定を行う専用端末をキットにして販売することになる。まずは、視力測定用端末で510(k)※申請を行い、2020年中頃を目途に小型OCTと合わせたシステムでの510(k)認証を取得し、2020年内の販売開始を目指す。販売戦略に関しては現在検討中だが、眼科を通じて患者にサービス提供していくことになるため、医療機器または医薬品メーカーと販売提携して展開していく可能性が考えられる。ただ、米国で保険適用されるためには別途臨床試験を行う必要があるため、本格的な市場の立ち上がりはさらに1〜2年の時間を要するものと予想される。米国での事業が軌道に乗ればその他地域への展開も視野に入れている。全世界の網膜疾患患者数が1億人を超えることを考えれば、眼科疾患における革新的診断ソリューションとして成長ポテンシャルは大きいと言え、今後の動向が注目される。

※510(k)申請:市販前届出制度。米国内で医療機器を販売する際に、既に販売されている類似製品があれば安全性や有効性において同等以上であることを確認できるデータをFDA(米国食品医薬品局)に提出することで、販売の許認可が得られる制度。申請後、FDAが90日以内に販売承認の可否判断を行う(質問・追加データ要請等の時間を除く)。


スターガルト病※を適応症とするエミクススタトの臨床第3相試験(被験者数約160名)については、2018年11月より欧米を中心に約11ヶ国で開始されているが、稀少疾患ということもあり登録の進捗状況がやや遅れ気味となっており、当初想定していた2019年内の被験者登録終了及び2021年内の試験終了については半年から1年程度先送りされそうだ。一方、網膜色素変性を対象とした遺伝子治療薬候補品についても、導入ウイルスベクターの最適化に取り組んでいる段階で、非臨床試験の開始時期は2021年、IND(臨床試験用の新医薬品)申請時期は2022年を見込んでいる。

※スターガルト病:遺伝性の若年性黄斑変性で、症状の進行とともに視力の低下や色覚障害を引き起こし、有効な治療法がいまだ確立されていない稀少疾患。患者数は欧米、日本で合計約15万人弱と少ない。


なお、NASAとの宇宙飛行士向けの小型OCT開発プロジェクトについては、複数の協力企業とグローバルなバーチャルチームを組み、2022-2023年頃の完成を目指している。2020年初頭に第1フェーズ(プロトタイプのデモンストレーション)の評価を行い、結果が良好であれば、第2フェーズに移行することになる。また、第1フェーズの開発費用についても金額はわずかではあるものの2020年12月期に売上計上される見込みとなっている。

2 業績動向
2019年12月期第3四半期累計の連結業績は、事業収益の計上がなく、営業損失で2,408百万円(前年同期は2,341百万円の損失)となった。人件費を中心に一般管理費が前年同期比182百万円減少したが、スターガルト病の臨床試験費用や「PBOS」の開発費用等を中心に研究開発費が同250百万円増加した。2019年12月期の営業損失は3,200百万円(前期は3,273百万円の損失)を見込んでおり、予定どおりの進捗となっている。

■Key Points
・「PBOS」は眼疾患領域における革新的な遠隔診断ソリューションとなる可能性
・視機能の再生を図る画期的な遺伝子治療薬候補品は2021年以降に非臨床試験の開始を目指す
・研究開発費の増加を一般管理費の抑制で相殺、2019年12月期は会社計画どおりの進捗

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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