窪田製薬HD Research Memo(4):PBOSは眼疾患領域における革新的な遠隔診断ソリューションとなる可能性
[19/12/23]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■窪田製薬ホールディングス<4596>の主要開発パイプラインの概要と進捗状況
2. 遠隔医療モニタリング機器(網膜疾患)
遠隔医療モニタリング機器となる「PBOS」は、ウェット型加齢黄斑変性や糖尿病黄班浮腫等の網膜疾患の患者の網膜の厚みを患者自身で測定し、撮影した画像をインターネット経由で担当医師に送り、治療の必要性の有無を診断するシステムとなる。前述したとおり視力測定装置もセットにして販売していくことになる。機器の仕様については、操作ボタンの大型化や操作方法を音声ガイダンスでサポートする機能を実装するなど、高齢者の患者に配慮した設計となっているほか、正確な測定を行えるようにするため、支持台を設けた固定式となっているのが特徴だ。
「PBOS」が商品化されれば、潜在需要は大きいと弊社では見ている。現状、加齢黄斑変性症等の網膜疾患治療の第一選択肢は抗VEGF薬による眼内注射であるが、適切な治療を実施するうえでいくつか課題があり、これら課題を解決するソリューションとして「PBOS」を位置付けている。現在課題となっているのは、1回当たりの治療費が15万円と高価であること、1〜2ヶ月間隔で継続的な治療が必要となるが、適切な治療タイミングは患者ごとに異なること(症状の進行スピードが違うため)、最適なタイミングで治療を行うためには網膜の状態をタイムリーに観察する必要があるが、そのためには通院検査(約3万円)を受ける必要があり、患者にとって身体的、経済的負担が大きくなること、などが挙げられる。また、医師側から見ても検査のみの患者が増えると経営効率が悪くなるため、治療が必要な患者をできるだけ増やしたいと考えている。「PBOS」が商品化されれば、患者は在宅で手軽に網膜の状態を測定し、インターネットを介して専門医に画像データをチェックしてもらうことで、適切なタイミングで治療を行うことが可能となる。また、「PBOS」の普及が進めば抗VEGF治療薬のメーカーにとってもプラスとなる。従来は自覚症状がなく治療を先延ばしにする患者も多かったが、治療が必要となるタイミングがわかるため、結果的に抗VEGF薬の需要も拡大する可能性が高いためだ。このように「PBOS」は、すべての関係者にとってメリットが享受できる遠隔診断ソリューションと言える。
今後はどのようにビジネスモデルを構築するかが課題となる。国によって医療行政や保険の仕組みが異なるためで、それぞれの地域に合わせた販売手法を展開していく必要がある。現在開発を進めている米国では、患者の初期負担が軽減されるレンタルサービスとして、毎月利用料を徴収する方法となる可能性が高い。保険適用されれば患者負担も大幅に軽減できるため普及も加速していくものと考えられる。同社にとっては、販売開始当初はコスト負担になるものの、一定期間を超えれば利益化するため、ストック型のビジネスモデルとして安定した収益源に育つ可能性がある。加齢黄斑変性などの網膜疾患は経過観察が重要であることや根治療薬がないことから、一度「PBOS」を使い始めると、失明しない限りは継続して使用される可能性が高いことも魅力の1つと言える。
販売方法については、眼科医とのネットワークを持つ医療機器メーカーや卸商社、製薬企業などを対象に販売パートナー契約を締結し、効率的に普及拡大を進めていく考えだ。医師にとっても「PBOS」を患者が利用することで収益性向上につながるため、システムを導入することへのハードルは高くないと考えられる。販売地域に関しては、米国で普及が進めば全世界へ展開していく計画となっている。
潜在的な市場規模は、当面は米国におけるウェット型加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫等の患者が対象となる。2015年の調査※1によれば、加齢黄斑変性の患者数は全世界で1.38億人と推定され、うち米国は1,230万人程度、このうちウェット型は約10%の123万人程度となる。また、糖尿病は世界で約4.15億人の患者数に上り、その3割となる約1.24億人が糖尿病網膜症を引き起こすと言われている。日本のデータによれば糖尿病網膜症患者の約2割が糖尿病黄斑浮腫と推定されており※2、世界で試算すると1.24億人×20%で約2,480万人となる。米国での患者比率が加齢黄斑変性と同じと仮定すれば、米国での糖尿病黄斑浮腫の患者数は220万人程度と推定される。米国市場では、両疾患合わせた340万人強が当面の潜在顧客となる。仮に月額利用料を千円、普及率30%とすれば年間で120億円の市場が創出されることになる。潜在顧客数は加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫だけでなくその予備軍等も含めれば全世界で1億人を超えると予想されるだけに、潜在的な成長ポテンシャルは大きいと言えるだろう。
※1 Market Scope, The Global Retinal Pharmaceuticals & Biologic Market, 2015.
※2 第114回日本眼科学会総会 (糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症の20%に合併するという報告に基づく)
なお、OCTの在宅・遠隔モニタリングデバイスとしては、2018年12月に米Notal Visionの「ForeseeHome®」が先に販売承認されているが、対象疾患が中等度のドライ型加齢黄斑変性症向けに限られていること、また、検査時間も「PBOS」が2秒で終わるのに対して「ForeseeHome®」は検査項目が多いこともあり約20分かかること、販売価格が高いこと、などから直接の競合関係にはならないと見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 遠隔医療モニタリング機器(網膜疾患)
遠隔医療モニタリング機器となる「PBOS」は、ウェット型加齢黄斑変性や糖尿病黄班浮腫等の網膜疾患の患者の網膜の厚みを患者自身で測定し、撮影した画像をインターネット経由で担当医師に送り、治療の必要性の有無を診断するシステムとなる。前述したとおり視力測定装置もセットにして販売していくことになる。機器の仕様については、操作ボタンの大型化や操作方法を音声ガイダンスでサポートする機能を実装するなど、高齢者の患者に配慮した設計となっているほか、正確な測定を行えるようにするため、支持台を設けた固定式となっているのが特徴だ。
「PBOS」が商品化されれば、潜在需要は大きいと弊社では見ている。現状、加齢黄斑変性症等の網膜疾患治療の第一選択肢は抗VEGF薬による眼内注射であるが、適切な治療を実施するうえでいくつか課題があり、これら課題を解決するソリューションとして「PBOS」を位置付けている。現在課題となっているのは、1回当たりの治療費が15万円と高価であること、1〜2ヶ月間隔で継続的な治療が必要となるが、適切な治療タイミングは患者ごとに異なること(症状の進行スピードが違うため)、最適なタイミングで治療を行うためには網膜の状態をタイムリーに観察する必要があるが、そのためには通院検査(約3万円)を受ける必要があり、患者にとって身体的、経済的負担が大きくなること、などが挙げられる。また、医師側から見ても検査のみの患者が増えると経営効率が悪くなるため、治療が必要な患者をできるだけ増やしたいと考えている。「PBOS」が商品化されれば、患者は在宅で手軽に網膜の状態を測定し、インターネットを介して専門医に画像データをチェックしてもらうことで、適切なタイミングで治療を行うことが可能となる。また、「PBOS」の普及が進めば抗VEGF治療薬のメーカーにとってもプラスとなる。従来は自覚症状がなく治療を先延ばしにする患者も多かったが、治療が必要となるタイミングがわかるため、結果的に抗VEGF薬の需要も拡大する可能性が高いためだ。このように「PBOS」は、すべての関係者にとってメリットが享受できる遠隔診断ソリューションと言える。
今後はどのようにビジネスモデルを構築するかが課題となる。国によって医療行政や保険の仕組みが異なるためで、それぞれの地域に合わせた販売手法を展開していく必要がある。現在開発を進めている米国では、患者の初期負担が軽減されるレンタルサービスとして、毎月利用料を徴収する方法となる可能性が高い。保険適用されれば患者負担も大幅に軽減できるため普及も加速していくものと考えられる。同社にとっては、販売開始当初はコスト負担になるものの、一定期間を超えれば利益化するため、ストック型のビジネスモデルとして安定した収益源に育つ可能性がある。加齢黄斑変性などの網膜疾患は経過観察が重要であることや根治療薬がないことから、一度「PBOS」を使い始めると、失明しない限りは継続して使用される可能性が高いことも魅力の1つと言える。
販売方法については、眼科医とのネットワークを持つ医療機器メーカーや卸商社、製薬企業などを対象に販売パートナー契約を締結し、効率的に普及拡大を進めていく考えだ。医師にとっても「PBOS」を患者が利用することで収益性向上につながるため、システムを導入することへのハードルは高くないと考えられる。販売地域に関しては、米国で普及が進めば全世界へ展開していく計画となっている。
潜在的な市場規模は、当面は米国におけるウェット型加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫等の患者が対象となる。2015年の調査※1によれば、加齢黄斑変性の患者数は全世界で1.38億人と推定され、うち米国は1,230万人程度、このうちウェット型は約10%の123万人程度となる。また、糖尿病は世界で約4.15億人の患者数に上り、その3割となる約1.24億人が糖尿病網膜症を引き起こすと言われている。日本のデータによれば糖尿病網膜症患者の約2割が糖尿病黄斑浮腫と推定されており※2、世界で試算すると1.24億人×20%で約2,480万人となる。米国での患者比率が加齢黄斑変性と同じと仮定すれば、米国での糖尿病黄斑浮腫の患者数は220万人程度と推定される。米国市場では、両疾患合わせた340万人強が当面の潜在顧客となる。仮に月額利用料を千円、普及率30%とすれば年間で120億円の市場が創出されることになる。潜在顧客数は加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫だけでなくその予備軍等も含めれば全世界で1億人を超えると予想されるだけに、潜在的な成長ポテンシャルは大きいと言えるだろう。
※1 Market Scope, The Global Retinal Pharmaceuticals & Biologic Market, 2015.
※2 第114回日本眼科学会総会 (糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症の20%に合併するという報告に基づく)
なお、OCTの在宅・遠隔モニタリングデバイスとしては、2018年12月に米Notal Visionの「ForeseeHome®」が先に販売承認されているが、対象疾患が中等度のドライ型加齢黄斑変性症向けに限られていること、また、検査時間も「PBOS」が2秒で終わるのに対して「ForeseeHome®」は検査項目が多いこともあり約20分かかること、販売価格が高いこと、などから直接の競合関係にはならないと見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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