イノベーション Research Memo(8):「ITトレンド」で収益をけん引し、ウェビナー市場でNo.1を目指す
[19/12/23]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■イノベーション<3970>の今後の見通し
2. 成長戦略
今後の成長戦略として、主力の「ITトレンド」「BIZトレンド」の事業をさらに拡大していくことで収益の拡大を図るとともに、「Seminar Shelf」や「コクリポウェビナー」等の新規事業を育成していくことで、成長を加速していく戦略となり、年率2ケタ成長を目指していく。
(1) 「ITトレンド」「BIZトレンド」
主力の「ITトレンド」「BIZトレンド」については、「ユニークユーザー数(サイト来訪者数の拡大)×「資料請求件数(問合せ当たりの資料請求件数の拡大)」×「コンバージョン率(問合せ率の向上)」の3つのKPIをそれぞれ引き上げていくことで、年率2ケタ成長を目指していく方針だ。
「ユニークユーザー数」の拡大施策としては、前述したキーワード検索で上位表示されるためのSEO対策や広告施策の強化、日経BP社等の提携先企業からの流入のほか、需要拡大が見込まれる新カテゴリーを追加し、比較・資料検討サイトとしての媒体価値向上に取り組んでいく方針となっている。また、現在は別サイトとして運営している「ITトレンド」と「BIZトレンド」の統合も視野に入れている。
「資料請求数」の向上施策として、有力な製品・サービスをより多く掲載するため営業を強化していくほか、サイト来訪者が資料請求しやすくなるようなサイト構成の改善や、ホワイトペーパー※施策に取り組んでいく。また、「コンバージョン率」の向上施策としては、広告やターゲティングの最適化、サイトのユーザビリティ向上、売上貢献度の高いカテゴリー(現在はHRテック分野の需要が高い)に注力していく考えだ。また、クチコミ機能を追加する可能性もある。
※ホワイトペーパーとは、リード獲得やナーチャリング、契約等に至るまでに効果を発揮するマーケティング用資料で、販売目的用の製品資料ではなく、見込み顧客の課題解決に資する資料となる。目的別にノウハウ型、製品比較型、事例紹介型、調査レポート型、業界トレンド型などに分けられる。
(2) 「Seminar Shelf」
セミナー動画プラットフォームの「Seminar Shelf」については、引き続き「いつでも、どこでも、無料で視聴できる」といった長所を訴求し、掲載企業と会員数を増やしていくことで事業拡大を進めていく。新たな取り組みとして2019年8月より資産運用を始めるための知識を学べる動画プラットフォーム「Seminar Shelf Money」をオープンし、不動産投資運用の動画セミナーを配信している。
(3) 「List Finder」
「List Finder」についてはアカウント数の拡大に向けて、ターゲットとなる層の特徴に合わせた営業活動を進めていく方針で、活用事例を充実させ導入効果をより具体的に訴求していくこと、競合優位性のあるサポート体制の強化を図ること、また、プロダクトの改善施策としてSalesForceとの連携やUIの改善、各種機能の改善等に取り組んでいく。SalesForceとの連携についてはMAツールの「Pardot」が使いにくい、または料金が高いといった顧客に対して、「List Finder」が導入しやすいようにするための施策となる。
(4) 「コクリポ」
同社は今後の国内におけるウェビナー市場の成長を見据えて、2019年6月にウェビナー運営専業のコクリポを子会社化した。ウェビナー市場はYouTubeなどの無料動画サイトの普及拡大や、動画の制作・編集・配信等に必要となる機器の高性能・低価格化並びに通信ネットワークの高速化が進んだことで、主催者が社内の自席や会議室からセミナーの配信が簡単に出来るようになり、また、受講者も社内、外出先、自宅など好きな場所でパソコンやスマートフォン等で受講が可能となるなど利便性が大きく向上し、かつ低コストで利用可能となったことで、ここ数年海外で市場が急速に拡大しており、最大市場の米国では500億円を上回る規模となっている。高成長を見越してCisco やZoom、Adobeなど数多くのIT企業が同市場に参入している。
一方、国内の市場規模は5億円程度にとどまっており、普及が進んでいないのが現状となっている。同社では、企業が東名阪に集中しており、距離の問題が米国に比べて深刻ではないこと、日本の商習慣として「直接会う」ことの重要性がいまだ高いこと、また、主催者側もウェビナーの経験がなく、運営や集客面での不安が拭い切れていないことなどが、普及の足かせ要因になっていると考えている。
しかしながら、企業の「働き方改革」やデジタルトランスフォーメーションの取り組みが今後もより一段と進むなかで、生産性向上ツールとしてウェビナーが有効なツールとなるだけでなく、地方との情報格差の解消にも役立つツールになると考えている。さらには、2020年以降の5Gサービスの本格化により、受講者側の通信状況悪化に伴って配信が一時的に途切れるといったリスクも大幅に軽減されるほか、動画品質も向上することが見込まれることから、2020年以降は国内でもウェビナー市場が普及期に入ると同社では見ており、数年後にウェビナー市場でNo.1のポジションを確立することを目標としている。
「コクリポ」については2017年のサービス開始以降、27ヶ月間で1,350件の実績(無料版含む、2019年9月末時点)がある。特徴は、競合と比較して低価格料金(月額3万円〜)で利用できること、ウェビナーで必要となる基本機能(アンケート、チャット、画像共有、双方向コミュニケーション等)がそろっていることが挙げられる。利用シーンとしては営業用セミナーだけでなく、社員研修や新卒採用説明会、上場企業における投資家向け説明会、株主総会などを想定している。
特に、新卒採用時における会社説明会では、北海道から沖縄まで場所の制限なく同時に説明会を開催できるため、採用力の強化だけでなく採用コストの低減メリットも期待できることになる。また、投資家向け決算説明会についても従来、機関投資家向けに限定して開催する企業が多かったが、「コクリポ」を活用すれば低コストで個人投資家向け説明会も開催することが可能となり、IRの向上にもつながることになる。同社自身も2020年3月期第2四半期累計業績の説明会を2019年11月14日に「コクリポ」を使って開催している。
今後の販売戦略としては、同社の既存事業の顧客に提案を進めていくことに加えて、パートナー戦略によって効率的に顧客企業を開拓していく方針となっている。例えば、地方企業や中小企業等の顧客基盤を有している企業との提携や、HR部門向けでは人事管理システムのクラウドサービスを提供する企業と提携し、同システムと「コクリポ」をAPI連携することで、利用しやすい環境を整備していく。
なお、国内での競業は前述した外資系企業のほか、国内の専業では(株)ネクプロが挙げられる。その他Web会議システム等の動画配信サービスの中の1つとしてウェビナーを提供している企業としては、ブイキューブ<3681>、Jストリーム<4308>、エイネット(株)、ロゴスウェア(株)等が挙げられる。同社の強みとしては、低価格料金で利用できること、使い勝手が良いこと等が挙げられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 成長戦略
今後の成長戦略として、主力の「ITトレンド」「BIZトレンド」の事業をさらに拡大していくことで収益の拡大を図るとともに、「Seminar Shelf」や「コクリポウェビナー」等の新規事業を育成していくことで、成長を加速していく戦略となり、年率2ケタ成長を目指していく。
(1) 「ITトレンド」「BIZトレンド」
主力の「ITトレンド」「BIZトレンド」については、「ユニークユーザー数(サイト来訪者数の拡大)×「資料請求件数(問合せ当たりの資料請求件数の拡大)」×「コンバージョン率(問合せ率の向上)」の3つのKPIをそれぞれ引き上げていくことで、年率2ケタ成長を目指していく方針だ。
「ユニークユーザー数」の拡大施策としては、前述したキーワード検索で上位表示されるためのSEO対策や広告施策の強化、日経BP社等の提携先企業からの流入のほか、需要拡大が見込まれる新カテゴリーを追加し、比較・資料検討サイトとしての媒体価値向上に取り組んでいく方針となっている。また、現在は別サイトとして運営している「ITトレンド」と「BIZトレンド」の統合も視野に入れている。
「資料請求数」の向上施策として、有力な製品・サービスをより多く掲載するため営業を強化していくほか、サイト来訪者が資料請求しやすくなるようなサイト構成の改善や、ホワイトペーパー※施策に取り組んでいく。また、「コンバージョン率」の向上施策としては、広告やターゲティングの最適化、サイトのユーザビリティ向上、売上貢献度の高いカテゴリー(現在はHRテック分野の需要が高い)に注力していく考えだ。また、クチコミ機能を追加する可能性もある。
※ホワイトペーパーとは、リード獲得やナーチャリング、契約等に至るまでに効果を発揮するマーケティング用資料で、販売目的用の製品資料ではなく、見込み顧客の課題解決に資する資料となる。目的別にノウハウ型、製品比較型、事例紹介型、調査レポート型、業界トレンド型などに分けられる。
(2) 「Seminar Shelf」
セミナー動画プラットフォームの「Seminar Shelf」については、引き続き「いつでも、どこでも、無料で視聴できる」といった長所を訴求し、掲載企業と会員数を増やしていくことで事業拡大を進めていく。新たな取り組みとして2019年8月より資産運用を始めるための知識を学べる動画プラットフォーム「Seminar Shelf Money」をオープンし、不動産投資運用の動画セミナーを配信している。
(3) 「List Finder」
「List Finder」についてはアカウント数の拡大に向けて、ターゲットとなる層の特徴に合わせた営業活動を進めていく方針で、活用事例を充実させ導入効果をより具体的に訴求していくこと、競合優位性のあるサポート体制の強化を図ること、また、プロダクトの改善施策としてSalesForceとの連携やUIの改善、各種機能の改善等に取り組んでいく。SalesForceとの連携についてはMAツールの「Pardot」が使いにくい、または料金が高いといった顧客に対して、「List Finder」が導入しやすいようにするための施策となる。
(4) 「コクリポ」
同社は今後の国内におけるウェビナー市場の成長を見据えて、2019年6月にウェビナー運営専業のコクリポを子会社化した。ウェビナー市場はYouTubeなどの無料動画サイトの普及拡大や、動画の制作・編集・配信等に必要となる機器の高性能・低価格化並びに通信ネットワークの高速化が進んだことで、主催者が社内の自席や会議室からセミナーの配信が簡単に出来るようになり、また、受講者も社内、外出先、自宅など好きな場所でパソコンやスマートフォン等で受講が可能となるなど利便性が大きく向上し、かつ低コストで利用可能となったことで、ここ数年海外で市場が急速に拡大しており、最大市場の米国では500億円を上回る規模となっている。高成長を見越してCisco やZoom、Adobeなど数多くのIT企業が同市場に参入している。
一方、国内の市場規模は5億円程度にとどまっており、普及が進んでいないのが現状となっている。同社では、企業が東名阪に集中しており、距離の問題が米国に比べて深刻ではないこと、日本の商習慣として「直接会う」ことの重要性がいまだ高いこと、また、主催者側もウェビナーの経験がなく、運営や集客面での不安が拭い切れていないことなどが、普及の足かせ要因になっていると考えている。
しかしながら、企業の「働き方改革」やデジタルトランスフォーメーションの取り組みが今後もより一段と進むなかで、生産性向上ツールとしてウェビナーが有効なツールとなるだけでなく、地方との情報格差の解消にも役立つツールになると考えている。さらには、2020年以降の5Gサービスの本格化により、受講者側の通信状況悪化に伴って配信が一時的に途切れるといったリスクも大幅に軽減されるほか、動画品質も向上することが見込まれることから、2020年以降は国内でもウェビナー市場が普及期に入ると同社では見ており、数年後にウェビナー市場でNo.1のポジションを確立することを目標としている。
「コクリポ」については2017年のサービス開始以降、27ヶ月間で1,350件の実績(無料版含む、2019年9月末時点)がある。特徴は、競合と比較して低価格料金(月額3万円〜)で利用できること、ウェビナーで必要となる基本機能(アンケート、チャット、画像共有、双方向コミュニケーション等)がそろっていることが挙げられる。利用シーンとしては営業用セミナーだけでなく、社員研修や新卒採用説明会、上場企業における投資家向け説明会、株主総会などを想定している。
特に、新卒採用時における会社説明会では、北海道から沖縄まで場所の制限なく同時に説明会を開催できるため、採用力の強化だけでなく採用コストの低減メリットも期待できることになる。また、投資家向け決算説明会についても従来、機関投資家向けに限定して開催する企業が多かったが、「コクリポ」を活用すれば低コストで個人投資家向け説明会も開催することが可能となり、IRの向上にもつながることになる。同社自身も2020年3月期第2四半期累計業績の説明会を2019年11月14日に「コクリポ」を使って開催している。
今後の販売戦略としては、同社の既存事業の顧客に提案を進めていくことに加えて、パートナー戦略によって効率的に顧客企業を開拓していく方針となっている。例えば、地方企業や中小企業等の顧客基盤を有している企業との提携や、HR部門向けでは人事管理システムのクラウドサービスを提供する企業と提携し、同システムと「コクリポ」をAPI連携することで、利用しやすい環境を整備していく。
なお、国内での競業は前述した外資系企業のほか、国内の専業では(株)ネクプロが挙げられる。その他Web会議システム等の動画配信サービスの中の1つとしてウェビナーを提供している企業としては、ブイキューブ<3681>、Jストリーム<4308>、エイネット(株)、ロゴスウェア(株)等が挙げられる。同社の強みとしては、低価格料金で利用できること、使い勝手が良いこと等が挙げられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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