芙蓉リース Research Memo(3):ノンアセット収益の拡大等により、「差引利益」が増益基調で推移(1)
[20/01/09]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■決算動向
1. 業績を見るポイント
芙蓉総合リース<8424>の売上高は、全体の70%前後を占めるリース料収入のほか、割賦販売による収入やファイナンスによる受取利息、ノンアセット収益(各種手数料収入など)によって構成されている。売上高(ノンアセット収益を除く)は、基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産」を積み上げることが必要となる。ただ、主力のリース料収入については、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格部分が含まれていることに注意が必要である。したがって、金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。なお、「差引利益」は「営業資産残高」と「資産粗利率」の掛け算となるため、両方の動きによって影響を受ける。また、最近では、ノンアセット収益の拡大にも取り組んでおり、「その他」セグメントの動きにも注目する必要がある。
一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入れ益を含む)」※などを除いた「経常利益」の動きを見るのが最も合理的であると考えられる。
※貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入益(営業外収益)をネットしたもの。
2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、売上高は「営業資産」の積み上げに伴っておおむね右肩上がりに推移してきた。一方、「差引利益」は2013年3月期から2014年3月期にかけて一旦低下傾向をたどったが、2015年3月期以降は増益基調に転じている。なお、「差引利益」の落ち込みは、2008年のリース会計基準変更に伴う利益の前倒し効果のはく落、及び競争激化によるリース料率の引き下げに伴う「資産粗利率」の低下によるものであるが、「営業資産」の積み上げと「資産粗利率」の改善により回復を図ってきた。特に、「資産粗利率」の改善は、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大が寄与したものと見られる。
一方、費用面を見ると、「調達原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、市中金利の影響により調達利回りが低下していることが要因である。また、「人件費及び物件費」を一定水準に抑えるとともに、「貸倒関連費用」も低位にて推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されている。その結果、2019年3月期の「経常利益」は5期連続で増益となった。
また、有利子負債は「営業資産」の積み上げに伴い増加してきたが、自己資本比率は10%前後で安定的に推移している。自己資本比率10%の水準は、流動性の高い営業資産を大量に保有するリース業界においては他社と比べて見劣りするものではなく、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。
ROA(総資産経常利益率)についても良質な資産の積み上げとともに上昇傾向にある。また、資本効率を示すROEについても、2016年3月期以降、利益水準の底上げとともに上昇し、2019年3月期は10%台の水準に到達した。
営業キャッシュ・フローはマイナスの状況が続いており、特に直近5期においてマイナス幅が大きくなっている。これは、将来の収益源となる「営業資産」を積極的に積み上げていることが要因であり、同社の成長性を反映したものと見るのが妥当である。
3. 2020年3月期上期決算の概要
2020年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比16.5%増の3,445億円、営業利益が同12.5%増の204億円、経常利益が同12.0%増の219億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同8.2%増の137億円と増収増益となり、売上高・利益ともに過去最高(上期ベース)を連続更新した。
2018年10月に連結化したインボイスの連結効果が増収に寄与。また、事業本来の業績を示す「差引利益」についても前年同期比15.0%増の416億円と順調に拡大。引き続き、「不動産」や「航空機」など戦略分野における「営業資産」の積み上げやノンアセット収益の拡大が「差引利益」の伸びに大きく貢献した。「契約実行高」についても、「不動産」や「航空機」を中心にリース全体で前年同期比60%増と好調に推移したほか、アクリーティブによるファクタリングが大きく伸長。その結果、2019年9月末の営業資産残高は、前期末比4.6%増の23,667億円と順調に積み上がっている。
経常利益についても、外貨借入の増加(航空機事業の拡大に伴うもの)による資金原価増やインボイス連結化(のれん償却費17億円を含む)などがコスト増加要因となったものの、「差引利益」の伸びで吸収して増益を確保した。
これらの結果、ROA(営業資産経常利益率)については1.90%(前年同期は1.76%)に大きく改善。戦略分野を中心とした良質な営業資産の積み上げに加え、インボイス(BPOサービス)を含めた、ノンアセット収益の拡大がROAの改善につながったと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 業績を見るポイント
芙蓉総合リース<8424>の売上高は、全体の70%前後を占めるリース料収入のほか、割賦販売による収入やファイナンスによる受取利息、ノンアセット収益(各種手数料収入など)によって構成されている。売上高(ノンアセット収益を除く)は、基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産」を積み上げることが必要となる。ただ、主力のリース料収入については、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格部分が含まれていることに注意が必要である。したがって、金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。なお、「差引利益」は「営業資産残高」と「資産粗利率」の掛け算となるため、両方の動きによって影響を受ける。また、最近では、ノンアセット収益の拡大にも取り組んでおり、「その他」セグメントの動きにも注目する必要がある。
一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入れ益を含む)」※などを除いた「経常利益」の動きを見るのが最も合理的であると考えられる。
※貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入益(営業外収益)をネットしたもの。
2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、売上高は「営業資産」の積み上げに伴っておおむね右肩上がりに推移してきた。一方、「差引利益」は2013年3月期から2014年3月期にかけて一旦低下傾向をたどったが、2015年3月期以降は増益基調に転じている。なお、「差引利益」の落ち込みは、2008年のリース会計基準変更に伴う利益の前倒し効果のはく落、及び競争激化によるリース料率の引き下げに伴う「資産粗利率」の低下によるものであるが、「営業資産」の積み上げと「資産粗利率」の改善により回復を図ってきた。特に、「資産粗利率」の改善は、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大が寄与したものと見られる。
一方、費用面を見ると、「調達原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、市中金利の影響により調達利回りが低下していることが要因である。また、「人件費及び物件費」を一定水準に抑えるとともに、「貸倒関連費用」も低位にて推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されている。その結果、2019年3月期の「経常利益」は5期連続で増益となった。
また、有利子負債は「営業資産」の積み上げに伴い増加してきたが、自己資本比率は10%前後で安定的に推移している。自己資本比率10%の水準は、流動性の高い営業資産を大量に保有するリース業界においては他社と比べて見劣りするものではなく、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。
ROA(総資産経常利益率)についても良質な資産の積み上げとともに上昇傾向にある。また、資本効率を示すROEについても、2016年3月期以降、利益水準の底上げとともに上昇し、2019年3月期は10%台の水準に到達した。
営業キャッシュ・フローはマイナスの状況が続いており、特に直近5期においてマイナス幅が大きくなっている。これは、将来の収益源となる「営業資産」を積極的に積み上げていることが要因であり、同社の成長性を反映したものと見るのが妥当である。
3. 2020年3月期上期決算の概要
2020年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比16.5%増の3,445億円、営業利益が同12.5%増の204億円、経常利益が同12.0%増の219億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同8.2%増の137億円と増収増益となり、売上高・利益ともに過去最高(上期ベース)を連続更新した。
2018年10月に連結化したインボイスの連結効果が増収に寄与。また、事業本来の業績を示す「差引利益」についても前年同期比15.0%増の416億円と順調に拡大。引き続き、「不動産」や「航空機」など戦略分野における「営業資産」の積み上げやノンアセット収益の拡大が「差引利益」の伸びに大きく貢献した。「契約実行高」についても、「不動産」や「航空機」を中心にリース全体で前年同期比60%増と好調に推移したほか、アクリーティブによるファクタリングが大きく伸長。その結果、2019年9月末の営業資産残高は、前期末比4.6%増の23,667億円と順調に積み上がっている。
経常利益についても、外貨借入の増加(航空機事業の拡大に伴うもの)による資金原価増やインボイス連結化(のれん償却費17億円を含む)などがコスト増加要因となったものの、「差引利益」の伸びで吸収して増益を確保した。
これらの結果、ROA(営業資産経常利益率)については1.90%(前年同期は1.76%)に大きく改善。戦略分野を中心とした良質な営業資産の積み上げに加え、インボイス(BPOサービス)を含めた、ノンアセット収益の拡大がROAの改善につながったと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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