ジェイ・エス・ビー Research Memo(7):強固な経営基盤を構築し、次期ステージの発展につなげる(1)
[20/01/23]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略
1. 中期経営計画の概要
同社グループの経営環境は、今後も成長機会に恵まれており、ジェイ・エス・ビー<3480>の成長戦略に対する少子高齢化進展の影響は限定的であると考えられる。すなわち、不動産賃貸管理事業では、4年制大学、特に女子学生の増加が顕著であること、国の政策サポートにより留学生も増加を続けること、自宅外生の比率は緩やかに上昇していることなどから、学生マンションの供給は不足しており、学生マンション市場は拡大傾向を続けると予想される。また、同社推計では2019年現在の下宿需要に対する同社マーケットシェアは3.5%に過ぎないことから、今後もシェア拡大の余地が大きいと考えられる。さらに、2018年5月時点の高齢者向け住宅の登録数23万戸に対して、政府の新成長戦略における目標は2020年までに60万戸であることから、高齢者住宅市場もさらに拡大すると見られる。
こうした経営環境を踏まえ、同社グループでは2018年10月期〜2020年10月期の3年間に、景気に左右されない強固な経営基盤を構築することを目指している。すなわち、2020年10月期には管理戸数を70,000戸(2018年10月期比11.6%増)に増やし、売上高435億円(同1.12倍)、経常利益33億円(同1.14倍)と過去最高益を更新することで、経常利益率も7.4%から7.7%に上昇させる計画である。一方、設備投資では競争力の高い自社仕様物件の取得や賃貸不動産のポートフォリオ構成の最適化により114億円、2018年5月に稼働開始した賃貸・メンテナンスの基幹システム入れ替えに伴うソフトウェアなどに5億円を実施している。この3年間は、事業の選択と集中を継続し、更なる成長のための経営資源強化・戦略的投資を行い、次期ステージでの発展につなげる計画である。計画2年目の2019年10月期は、売上高・利益のいずれの項目も計画を上回っており、順調に推移している。計画最終年度の2020年10月期も、当初目標を上回る順調な業績を予想している。
同社グループは、学生マンション業界のパイオニアとして、高い知名度や信頼を築いている。加えて、超高齢社会の進行を見据えて、高齢者住宅事業にも布石を打っている。今後も学生マンションや高齢者住宅の供給不足が続くと予想されることや現在の市場シェアを考えると、同社の成長余地は大きく、弊社では業績予想どおり、中期経営計画の当初目標を大きく上回って着地すると考える。
2. 成長戦略
(1) 不動産賃貸管理事業
同社では、上記の経営目標を達成するための成長戦略として、まず不動産賃貸管理事業においては、学生マンションの収益力向上を目指して以下の3点を実施する。
第1に、戸数増加とともに利益重視を目指す。すなわち、地域別・物件のグレード別の募集賃料見直しなどによる既存物件の利益率向上や、競争力の高い新規物件開発による管理戸数増加、土地・収益物件への積極投資などを行う。この計画について、計画2年目の2019年10月期時点での同社による進捗評価(A〜E)はAと、おおむね計画どおりに推移している。
特に、自社物件開発では、戦略的エリアで独自のノウハウを投入した新規物件開発が可能であり、売却・投資回収後の借上転化によって競争力の高い借上物件が増加することになる。最近の自社開発事例としては、2020年3月運営開始予定の(仮称)学生会館Uni E'meal 金沢工大前 PartIIは、金沢工業大学(扇が丘キャンパス)、金沢工業大学大学院、石川県立大学などが近接し、家具・家電、食事付き、インターネット・Wi-Fi環境完備でオートロック・防犯カメラ等セキュリティ設備も充実し、全99室である。また、同じく2020年3月運営開始予定の(仮称)Uni E'meal 徳島学生会館も同様の設備を有し、徳島大学、徳島文理大学、四国大学に近接し、全138室である。
さらに、高付加価値の学生マンション展開では、リニューアルによる物件開発としてロータス黒砂台学生会館(千葉)、新地域への展開として(仮称)E'mealつくば春日(茨城)、既出エリアの新市場開拓としては学生会館 Aile 草薙(静岡)などの事例がある。
加えて、2019年8月に子会社化した東京学生ライフグループ3社は、主に学生を対象とした賃貸マンションの管理・運営を主力事業として、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の首都圏地区を中心に約1,500戸を管理・運営している。同社では、未出店エリアへの事業拡大や未提携の教育機関との関係構築等のシナジー効果を期待している。
第2に、自社学生マンションブランドの差別化及びサービス品質の向上を図る。すなわち、食育・健康の観点から健全な食生活をサポートする食事付きマンションの開発や、留学生をターゲットとするビジネスモデルの確立を目指す。この計画についても、同社の進捗評価はAと順調である。
サービス品質を向上させた新規物件開発としては、大学・大学生協との連携による展開となる、2020年3月運営開始予定の(仮称)学生会館 Campus terrace Waseda(キャンパステラスワセダ)は、同社では初の早稲田大学推薦の学生寮で、早稲田キャンパス、戸山キャンパス、西早稲田キャンパスに近接し、インターネット、Wi-Fi環境完備、オートロック・防犯カメラ等、設備やセキュリティも充実しており、全82室である。RA(レジデント・アシスタント)を導入し、日本人学生や外国人留学生向けに、入居者交流行事の運営や、生活相談、生活指導を行っている。また、大学生協との協業である2020年3月運営開始予定の(仮称)学生会館 ニューフロンティア高知朝倉II(高知)も同様の設備を有し、高知大学(朝倉キャンパス)まで徒歩11分の場所に立地し、全40室であり、女子専用フロアも設けている。
同じく、サービス品質を向上させた新規物件開発として、大手デベロッパー等との連携も進めている。これは、大手デベロッパーの物件開発力と同社の運営ノウハウを組み合わせるものだ。東日本旅客鉄道<9020>、住友商事<8053>、三菱地所レジデンス(株)、三井不動産レジデンシャル(株)等と学生マンションを開発しており、いずれも2020年2月〜3月には運営開始の予定である。
さらに、ブランド差別化として、学生サポートの拡充では、就職支援セミナーの開催や、食生活サポートの一環として菜園プロジェクトを実施する。また、留学生をターゲットとするビジネス拡充では、2018年11月には中国のUhomesとの業務提携を行い、中国人留学生に対する学生マンション紹介事業としては、学生マンション業界における日本企業初の業務提携となった。「留学生を中心とした地域コミュニティづくり」と「留学生の住環境の整備」を目指してJR東日本グループと取り組む国際シェアハウス事業「シェアリエットS東小金井(東京)」は、外国人留学生と日本人学生が入居する混在型シェアハウスであり、流しそうめん大会、新春餅つき大会等の交流イベントを実施し、またウェルカムBBQには近隣住民も参加するなど、地域・コミュニティづくりにも貢献している。これらの活動が評価されて、(公財)日本デザイン振興会が運営する2019年グッドデザイン賞「地域・コミュニティづくり」部門賞を受賞した。
第3に、企画開発・賃貸営業・メンテナンス各部門の一層の連携を行う。すなわち、メンテナンス事業の営業強化とともに、賃貸営業部門・メンテナンス部門と協力した案件情報収集・営業強化を推進する考えだ。同社による進捗評価はBであり、三位一体による物件企画開発や仲介責任・管理責任による24時間365日の入居者アフターサービスを継続課題として認識している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 中期経営計画の概要
同社グループの経営環境は、今後も成長機会に恵まれており、ジェイ・エス・ビー<3480>の成長戦略に対する少子高齢化進展の影響は限定的であると考えられる。すなわち、不動産賃貸管理事業では、4年制大学、特に女子学生の増加が顕著であること、国の政策サポートにより留学生も増加を続けること、自宅外生の比率は緩やかに上昇していることなどから、学生マンションの供給は不足しており、学生マンション市場は拡大傾向を続けると予想される。また、同社推計では2019年現在の下宿需要に対する同社マーケットシェアは3.5%に過ぎないことから、今後もシェア拡大の余地が大きいと考えられる。さらに、2018年5月時点の高齢者向け住宅の登録数23万戸に対して、政府の新成長戦略における目標は2020年までに60万戸であることから、高齢者住宅市場もさらに拡大すると見られる。
こうした経営環境を踏まえ、同社グループでは2018年10月期〜2020年10月期の3年間に、景気に左右されない強固な経営基盤を構築することを目指している。すなわち、2020年10月期には管理戸数を70,000戸(2018年10月期比11.6%増)に増やし、売上高435億円(同1.12倍)、経常利益33億円(同1.14倍)と過去最高益を更新することで、経常利益率も7.4%から7.7%に上昇させる計画である。一方、設備投資では競争力の高い自社仕様物件の取得や賃貸不動産のポートフォリオ構成の最適化により114億円、2018年5月に稼働開始した賃貸・メンテナンスの基幹システム入れ替えに伴うソフトウェアなどに5億円を実施している。この3年間は、事業の選択と集中を継続し、更なる成長のための経営資源強化・戦略的投資を行い、次期ステージでの発展につなげる計画である。計画2年目の2019年10月期は、売上高・利益のいずれの項目も計画を上回っており、順調に推移している。計画最終年度の2020年10月期も、当初目標を上回る順調な業績を予想している。
同社グループは、学生マンション業界のパイオニアとして、高い知名度や信頼を築いている。加えて、超高齢社会の進行を見据えて、高齢者住宅事業にも布石を打っている。今後も学生マンションや高齢者住宅の供給不足が続くと予想されることや現在の市場シェアを考えると、同社の成長余地は大きく、弊社では業績予想どおり、中期経営計画の当初目標を大きく上回って着地すると考える。
2. 成長戦略
(1) 不動産賃貸管理事業
同社では、上記の経営目標を達成するための成長戦略として、まず不動産賃貸管理事業においては、学生マンションの収益力向上を目指して以下の3点を実施する。
第1に、戸数増加とともに利益重視を目指す。すなわち、地域別・物件のグレード別の募集賃料見直しなどによる既存物件の利益率向上や、競争力の高い新規物件開発による管理戸数増加、土地・収益物件への積極投資などを行う。この計画について、計画2年目の2019年10月期時点での同社による進捗評価(A〜E)はAと、おおむね計画どおりに推移している。
特に、自社物件開発では、戦略的エリアで独自のノウハウを投入した新規物件開発が可能であり、売却・投資回収後の借上転化によって競争力の高い借上物件が増加することになる。最近の自社開発事例としては、2020年3月運営開始予定の(仮称)学生会館Uni E'meal 金沢工大前 PartIIは、金沢工業大学(扇が丘キャンパス)、金沢工業大学大学院、石川県立大学などが近接し、家具・家電、食事付き、インターネット・Wi-Fi環境完備でオートロック・防犯カメラ等セキュリティ設備も充実し、全99室である。また、同じく2020年3月運営開始予定の(仮称)Uni E'meal 徳島学生会館も同様の設備を有し、徳島大学、徳島文理大学、四国大学に近接し、全138室である。
さらに、高付加価値の学生マンション展開では、リニューアルによる物件開発としてロータス黒砂台学生会館(千葉)、新地域への展開として(仮称)E'mealつくば春日(茨城)、既出エリアの新市場開拓としては学生会館 Aile 草薙(静岡)などの事例がある。
加えて、2019年8月に子会社化した東京学生ライフグループ3社は、主に学生を対象とした賃貸マンションの管理・運営を主力事業として、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の首都圏地区を中心に約1,500戸を管理・運営している。同社では、未出店エリアへの事業拡大や未提携の教育機関との関係構築等のシナジー効果を期待している。
第2に、自社学生マンションブランドの差別化及びサービス品質の向上を図る。すなわち、食育・健康の観点から健全な食生活をサポートする食事付きマンションの開発や、留学生をターゲットとするビジネスモデルの確立を目指す。この計画についても、同社の進捗評価はAと順調である。
サービス品質を向上させた新規物件開発としては、大学・大学生協との連携による展開となる、2020年3月運営開始予定の(仮称)学生会館 Campus terrace Waseda(キャンパステラスワセダ)は、同社では初の早稲田大学推薦の学生寮で、早稲田キャンパス、戸山キャンパス、西早稲田キャンパスに近接し、インターネット、Wi-Fi環境完備、オートロック・防犯カメラ等、設備やセキュリティも充実しており、全82室である。RA(レジデント・アシスタント)を導入し、日本人学生や外国人留学生向けに、入居者交流行事の運営や、生活相談、生活指導を行っている。また、大学生協との協業である2020年3月運営開始予定の(仮称)学生会館 ニューフロンティア高知朝倉II(高知)も同様の設備を有し、高知大学(朝倉キャンパス)まで徒歩11分の場所に立地し、全40室であり、女子専用フロアも設けている。
同じく、サービス品質を向上させた新規物件開発として、大手デベロッパー等との連携も進めている。これは、大手デベロッパーの物件開発力と同社の運営ノウハウを組み合わせるものだ。東日本旅客鉄道<9020>、住友商事<8053>、三菱地所レジデンス(株)、三井不動産レジデンシャル(株)等と学生マンションを開発しており、いずれも2020年2月〜3月には運営開始の予定である。
さらに、ブランド差別化として、学生サポートの拡充では、就職支援セミナーの開催や、食生活サポートの一環として菜園プロジェクトを実施する。また、留学生をターゲットとするビジネス拡充では、2018年11月には中国のUhomesとの業務提携を行い、中国人留学生に対する学生マンション紹介事業としては、学生マンション業界における日本企業初の業務提携となった。「留学生を中心とした地域コミュニティづくり」と「留学生の住環境の整備」を目指してJR東日本グループと取り組む国際シェアハウス事業「シェアリエットS東小金井(東京)」は、外国人留学生と日本人学生が入居する混在型シェアハウスであり、流しそうめん大会、新春餅つき大会等の交流イベントを実施し、またウェルカムBBQには近隣住民も参加するなど、地域・コミュニティづくりにも貢献している。これらの活動が評価されて、(公財)日本デザイン振興会が運営する2019年グッドデザイン賞「地域・コミュニティづくり」部門賞を受賞した。
第3に、企画開発・賃貸営業・メンテナンス各部門の一層の連携を行う。すなわち、メンテナンス事業の営業強化とともに、賃貸営業部門・メンテナンス部門と協力した案件情報収集・営業強化を推進する考えだ。同社による進捗評価はBであり、三位一体による物件企画開発や仲介責任・管理責任による24時間365日の入居者アフターサービスを継続課題として認識している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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