エスプール Research Memo(2):ビジネスソリューション事業と人材ソリューション事業の2事業を展開
[20/02/12]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要
エスプール<2471>の事業セグメントは、ビジネスソリューション事業と人材ソリューション事業の2つに区分されている。2019年11月期の事業セグメント別構成比で見ると、売上高では人材ソリューション事業が71.3%と過半を占めているが、セグメント利益は逆にビジネスソリューション事業が56.1%と過半を占めている。付加価値の高い障がい者雇用支援サービスが同事業セグメントに含まれていることが要因だ。セグメント別の事業内容は以下のとおり。
1. ビジネスソリューション事業
ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援サービス、ロジスティクスアウトソーシングサービスを中心に、セールスサポートサービス、採用支援サービス、新規事業などで構成されている。2019年11月期の売上構成比で見ると、障がい者雇用支援サービスで約55%、ロジスティクスアウトソーシングで約22%と2つの事業で大半を占め、また、利益構成で見ると、障がい者雇用支援サービスが同事業セグメントの多くを占める主力事業となっている。
(1) 障がい者雇用支援サービス
障がい者雇用支援サービスでは、障がい者専用の企業向け貸し農園の運営と、障がい者の就労支援サービス等を子会社の(株)エスプールプラスで展開している。同社が賃借した土地で養液栽培施設を構築し、「わーくはぴねす農園」として企業に貸し出し(栽培設備は販売)、当該農園に従事する障がい者やその管理者を紹介することで収入を得るビジネスモデルとなる。2010年の事業開始以降、2019年11月までに千葉県、愛知県、埼玉県で合計18農園を開設しており、契約企業259社に対して1,480人の障がい者雇用を創出している。
同サービスの売上高は、契約時に得られる農園の設備販売収入(養液栽培設備の販売)のほか、農園管理収入や就業する障がい者、管理者の人材紹介料で構成されている。基本的なモデルとしては、約3千坪の土地にビニールハウス農園を構築、120区画程度に分割して契約企業に対して区画ごとに栽培設備を販売するとともに、農園で就業する障がい者と管理者の人材紹介を行い、また、月々の運営管理料を得るビジネスモデルとなっている。6区画(障がい者3人、管理者1人)を1パッケージとして販売している。栽培設備は約150万円/区画、障がい者の紹介料は軽度と重度で異なるが、平均で約50万円、管理者は約40万円となっている。このため、6区画販売すれば約1,100万円の売上となる。また、運営管理料は立地によって異なるが、月額で約4万円/区画となっている。栽培設備と紹介料に関してはフロー売上となるが、運営管理料はストック売上として毎月得られることになり、安定収益源となる。
仮に期初に120区画すべて完売した場合、当年度の売上高としては、栽培設備販売で180百万円、人材紹介料で38百万円、管理収入で58百万円、合計で276百万円となる。一方で、設備投資額としては約2億円(ビニールハウス、車両等、減価償却期間は4〜14年)となる。初年度は利益率の高いフロー売上が計上されるため利益貢献度も高くなるが、2年目以降はフロー売上がなくなり、減価償却費や維持費用が残るため利益率が落ち込むことになる。ただ、現実的には障がい者雇用の旺盛な需要を背景に、農園設備販売と人材紹介の拡大が続いているため、営業利益率も40%を超える高水準がここ数年続いている。就業者は主に知的障がい者となるが、定着率が92%超と高いことから顧客企業からの評価も高く、約3割の顧客から追加発注を受けている。
(2) ロジスティクスアウトソーシングサービス
子会社の(株)エスプールロジスティクスで展開するロジスティクスアウトソーシングサービスは、主にEC事業者向けの商品発送代行業務と、卸売業者や物流業者などの物流センターにおいて業務の全部または一部分を請け負う運営代行業務の2つの事業を行っている。2015年11月期までは運営代行業務の売上高が大きかったが、採算性が低いことから、2016年11月期以降はEC事業者向けの商品発送代行業務に軸足をシフトしており、2019年11月期は売上高の約84%が商品発送代行業務となっている。同業務の拠点は、つくばセンター(茨城県つくば市、2013年9月開設、1,000坪)と品川センター(東京都港区、2,300坪)の2拠点となっている。
(3) セールスサポートサービス
子会社の(株)エスプールセールスサポートで展開するセールスサポートサービスは、クレジットカードや宅配水などの販売促進を商業施設で行う対面型販売促進支援業務や、メーカー担当者に代わって小売店を巡回するマーチャンダイジング業務、各種キャンペーンやプロモーションの運営サポート業務などを行っている。売上高は年間5億円程度でここ数年は安定して推移している。
(4) 採用支援サービス
2016年11月期より同社本体で開始した採用支援サービスでは、主に外食チェーン店向けにアルバイト・パート等の採用支援サービス「OMUSUBI(オムスビ)」を提供している。2017年10月に(株)ツナグ・ソリューションズ(現ツナググループ・ホールディングス<6551>)と業務提携しており、主に求人募集代行業務をツナグ・ソリューションズが担当し、同社がコールセンターによる応募受付代行を担当する格好となる。
飲食店などのアルバイト面接などにかかるプロセスを代行し、成果報酬型(面接設定件数×料金)とすることで、顧客企業は従来よりも広告費の削減と採用効率の向上が実現可能となる。2019年11月末で顧客企業数は89社、応募受付件数は月平均3.3万件となっており、これを同社のコールセンター4拠点(北海道1拠点、宮崎2拠点、徳島1拠点)、約100人のオペレーターで対応している。売上高は成果報酬型のため、オペレーター人員が同じであれば面接設定件数が増加した分だけ利益も増えることになる。
2019年11月期に初めて黒字化したことに伴い2019年12月に分社化し、新たに(株)エスプールリンクとして事業拡大を推進していく方針となっている。
(5) 新規事業
その他、新規事業として位置付けている事業を同社本体で行っている。現在の主力サービスは、主に上場企業等の役員クラス経験者や専門知識を有する有資格者等の人材を、中小企業やベンチャー企業向けに派遣または紹介するプロフェショナル人材バンクサービスで、売上規模は2019年11月期で2億円強となっている。
2. 人材ソリューション事業
人材ソリューション事業は、人材アウトソーシングサービスを主力とする子会社の(株)エスプールヒューマンソリューションズが展開する事業で、主にコールセンター業務や携帯電話、家電製品等の店頭販売支援業務への人材派遣サービスを行っている。2019年11月期の売上構成比では、コールセンター業務が約76%、店頭販売支援業務が約20%となり、残りがその他の派遣サービス(介護・看護関連スタッフの派遣)となる。
北海道から沖縄まで主要都市に事業所を15拠点開設している。コールセンター業務に関する主要顧客は、ベルシステム24ホールディングス<6183>、りらいあコミュニケーションズ<4708>、トランスコスモス<9715>などが挙げられ、また、店頭販売支援業務ではコネクシオ<9422>やティーガイア<3738>などの大手携帯電話販売代理店、ヤマダ電機<9831>やビックカメラ<3048>などの大手家電量販店が主要顧客となっている。
なお、同社グループは2019年12月時点では連結子会社5社で構成されており、同社本体は持株会社及び新規事業開発の機能を担っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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エスプール<2471>の事業セグメントは、ビジネスソリューション事業と人材ソリューション事業の2つに区分されている。2019年11月期の事業セグメント別構成比で見ると、売上高では人材ソリューション事業が71.3%と過半を占めているが、セグメント利益は逆にビジネスソリューション事業が56.1%と過半を占めている。付加価値の高い障がい者雇用支援サービスが同事業セグメントに含まれていることが要因だ。セグメント別の事業内容は以下のとおり。
1. ビジネスソリューション事業
ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援サービス、ロジスティクスアウトソーシングサービスを中心に、セールスサポートサービス、採用支援サービス、新規事業などで構成されている。2019年11月期の売上構成比で見ると、障がい者雇用支援サービスで約55%、ロジスティクスアウトソーシングで約22%と2つの事業で大半を占め、また、利益構成で見ると、障がい者雇用支援サービスが同事業セグメントの多くを占める主力事業となっている。
(1) 障がい者雇用支援サービス
障がい者雇用支援サービスでは、障がい者専用の企業向け貸し農園の運営と、障がい者の就労支援サービス等を子会社の(株)エスプールプラスで展開している。同社が賃借した土地で養液栽培施設を構築し、「わーくはぴねす農園」として企業に貸し出し(栽培設備は販売)、当該農園に従事する障がい者やその管理者を紹介することで収入を得るビジネスモデルとなる。2010年の事業開始以降、2019年11月までに千葉県、愛知県、埼玉県で合計18農園を開設しており、契約企業259社に対して1,480人の障がい者雇用を創出している。
同サービスの売上高は、契約時に得られる農園の設備販売収入(養液栽培設備の販売)のほか、農園管理収入や就業する障がい者、管理者の人材紹介料で構成されている。基本的なモデルとしては、約3千坪の土地にビニールハウス農園を構築、120区画程度に分割して契約企業に対して区画ごとに栽培設備を販売するとともに、農園で就業する障がい者と管理者の人材紹介を行い、また、月々の運営管理料を得るビジネスモデルとなっている。6区画(障がい者3人、管理者1人)を1パッケージとして販売している。栽培設備は約150万円/区画、障がい者の紹介料は軽度と重度で異なるが、平均で約50万円、管理者は約40万円となっている。このため、6区画販売すれば約1,100万円の売上となる。また、運営管理料は立地によって異なるが、月額で約4万円/区画となっている。栽培設備と紹介料に関してはフロー売上となるが、運営管理料はストック売上として毎月得られることになり、安定収益源となる。
仮に期初に120区画すべて完売した場合、当年度の売上高としては、栽培設備販売で180百万円、人材紹介料で38百万円、管理収入で58百万円、合計で276百万円となる。一方で、設備投資額としては約2億円(ビニールハウス、車両等、減価償却期間は4〜14年)となる。初年度は利益率の高いフロー売上が計上されるため利益貢献度も高くなるが、2年目以降はフロー売上がなくなり、減価償却費や維持費用が残るため利益率が落ち込むことになる。ただ、現実的には障がい者雇用の旺盛な需要を背景に、農園設備販売と人材紹介の拡大が続いているため、営業利益率も40%を超える高水準がここ数年続いている。就業者は主に知的障がい者となるが、定着率が92%超と高いことから顧客企業からの評価も高く、約3割の顧客から追加発注を受けている。
(2) ロジスティクスアウトソーシングサービス
子会社の(株)エスプールロジスティクスで展開するロジスティクスアウトソーシングサービスは、主にEC事業者向けの商品発送代行業務と、卸売業者や物流業者などの物流センターにおいて業務の全部または一部分を請け負う運営代行業務の2つの事業を行っている。2015年11月期までは運営代行業務の売上高が大きかったが、採算性が低いことから、2016年11月期以降はEC事業者向けの商品発送代行業務に軸足をシフトしており、2019年11月期は売上高の約84%が商品発送代行業務となっている。同業務の拠点は、つくばセンター(茨城県つくば市、2013年9月開設、1,000坪)と品川センター(東京都港区、2,300坪)の2拠点となっている。
(3) セールスサポートサービス
子会社の(株)エスプールセールスサポートで展開するセールスサポートサービスは、クレジットカードや宅配水などの販売促進を商業施設で行う対面型販売促進支援業務や、メーカー担当者に代わって小売店を巡回するマーチャンダイジング業務、各種キャンペーンやプロモーションの運営サポート業務などを行っている。売上高は年間5億円程度でここ数年は安定して推移している。
(4) 採用支援サービス
2016年11月期より同社本体で開始した採用支援サービスでは、主に外食チェーン店向けにアルバイト・パート等の採用支援サービス「OMUSUBI(オムスビ)」を提供している。2017年10月に(株)ツナグ・ソリューションズ(現ツナググループ・ホールディングス<6551>)と業務提携しており、主に求人募集代行業務をツナグ・ソリューションズが担当し、同社がコールセンターによる応募受付代行を担当する格好となる。
飲食店などのアルバイト面接などにかかるプロセスを代行し、成果報酬型(面接設定件数×料金)とすることで、顧客企業は従来よりも広告費の削減と採用効率の向上が実現可能となる。2019年11月末で顧客企業数は89社、応募受付件数は月平均3.3万件となっており、これを同社のコールセンター4拠点(北海道1拠点、宮崎2拠点、徳島1拠点)、約100人のオペレーターで対応している。売上高は成果報酬型のため、オペレーター人員が同じであれば面接設定件数が増加した分だけ利益も増えることになる。
2019年11月期に初めて黒字化したことに伴い2019年12月に分社化し、新たに(株)エスプールリンクとして事業拡大を推進していく方針となっている。
(5) 新規事業
その他、新規事業として位置付けている事業を同社本体で行っている。現在の主力サービスは、主に上場企業等の役員クラス経験者や専門知識を有する有資格者等の人材を、中小企業やベンチャー企業向けに派遣または紹介するプロフェショナル人材バンクサービスで、売上規模は2019年11月期で2億円強となっている。
2. 人材ソリューション事業
人材ソリューション事業は、人材アウトソーシングサービスを主力とする子会社の(株)エスプールヒューマンソリューションズが展開する事業で、主にコールセンター業務や携帯電話、家電製品等の店頭販売支援業務への人材派遣サービスを行っている。2019年11月期の売上構成比では、コールセンター業務が約76%、店頭販売支援業務が約20%となり、残りがその他の派遣サービス(介護・看護関連スタッフの派遣)となる。
北海道から沖縄まで主要都市に事業所を15拠点開設している。コールセンター業務に関する主要顧客は、ベルシステム24ホールディングス<6183>、りらいあコミュニケーションズ<4708>、トランスコスモス<9715>などが挙げられ、また、店頭販売支援業務ではコネクシオ<9422>やティーガイア<3738>などの大手携帯電話販売代理店、ヤマダ電機<9831>やビックカメラ<3048>などの大手家電量販店が主要顧客となっている。
なお、同社グループは2019年12月時点では連結子会社5社で構成されており、同社本体は持株会社及び新規事業開発の機能を担っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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