TKP Research Memo(3):市場創造型の事業展開により高い成長性を実現。2種類の収益モデルも強み(1)
[20/02/19]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要等
1. 空間シェアリングによる市場創造型の事業展開
ティーケーピー<3479>による「貸会議室ビジネス」は、不動産オーナーから遊休資産・低収益物件・不採算資産を割安で借り上げ、会議室や宴会場などに「空間」を「再生」し、シェアリングエコノミーとして付加価値を提供するというものである。不動産オーナーから大口取引で不動産を賃貸などで割安に仕入れ、物件を貸会議室などに利用できるように照明・カーペット・壁紙などリノベーションを行い貸会議室仕様にするとともに、ケータリングや宿泊、各種オプションなど周辺サービスを付加する。顧客は主に会議室利用を求める法人であり、顧客側にとっては自社で会議室を保有するのに比べ、費用の削減、業務の集約化、多目的の利用が可能になるなどのメリットが多い。したがって、同社の事業は、大口取引を望む供給側と小口販売・シェアリングを望む需要側をうまくつないでいると言える。最近では、グレードの高いオフィスビルの企画・設計の段階から、同社仕様による会議室をあらかじめ設けることにより、共有部分の有効活用(収益化等)を手掛ける新しいシェアリングの形も増えているようだ。
また、日本リージャスの買収により、これまでの会議室利用に加えて、短中期のオフィス利用(レンタルオフィスやコワーキングスペース)へとサービス領域を拡充した。多様なスペースの活用が可能となったことにより、広範な顧客ニーズを取り込むとともに、成長が期待できるフレキシブルオフィス市場での事業基盤を一気に確立することができた。
さらに「持たざる経営」にも特徴がある。仕入れは賃貸契約を主軸としているため、同社業績における不動産価格の変動による影響は小さく、通常の不動産会社が有するリスクとは異なっていることに注意したい(ただ、安定的に高稼働率が期待できるホテル事業については、あえて一部を自社所有することにより高収益性を確保するとともに、いつでも流動化できるような準備をしている)。
2. 収益モデルの特徴(貸会議室とレンタルオフィスの違い)
同社本体の「貸会議室ビジネス」は、時間貸しによるフロー型の収益モデルである。また、単にスペースをサブリースするだけでなく、ケータリングや宿泊、各種オプションなどの周辺サービスを付加することで売上高の拡大を図っている。特に季節要因により第2四半期から第3四半期においては、会議室料以外の売上比率が高くなる傾向があり、稼働率ではなく「坪当たり売上高」を重視している。オープンより平均3ヶ月で損益分岐点に到達し、12ヶ月で巡行速度に乗ることから、比較的早期に収益化が可能な収益モデルと言える。
一方、日本リージャスによる「レンタルオフィスビジネス」は、中長期にわたり安定収益が期待できるストック型の収益モデルである。したがって、高稼働率を維持していくことが重要となる。初期費用※が大きいことから、オープンから平均8〜12ヶ月で損益分岐点(稼働率45%)に到達し、約18ヶ月で巡行速度(稼働率65%)に乗る。比較的収益化までの期間が長いが、高稼働を維持しているかぎり長期にわたって高い収益性が期待できる。
TKPの貸会議室ビジネスにおけるKPIが「坪当たり売上高」であるのに対し、日本リージャスのレンタルオフィスビジネスにおけるKPIは「稼働率」であり、全体の大部分を占める2017年12月以前にオープンした拠点は80%以上の高稼働を維持している。
※契約からオープンまでの工事期間は平均3〜4ヶ月に及び、その間の工事費や賃料等が初期費用となる。
同社では、貸会議室は大型の中古ビル、レンタルオフィスは新築及び築浅ビルを中心とする出店戦略であるが、レンタルオフィス出店時には、その一部を最初は同社本体の貸会議室として出店することで拠点黒字化を早めるなど、2種類の収益モデルを補完的に組み合わせた独自の収益マネジメントにも取り組んでいる。
3. 拠点ネットワーク
国内外に261拠点・2,158室の法人向け貸会議室を展開している(2020年2月期第3四半期末時点)。そのうち、海外には、ニューヨーク、ニュージャージー、香港、シンガポール、台湾に合計29室を有する。利用目的や規模、予算などに合わせた5つのグレード(日本リージャスは除く)に分かれており、単価の高いものから、ガーデンシティPREMIUM(GCP)、ガーデンシティ(GC)、カンファレンスセンター(CC)、ビジネスセンター(BC)、スター貸会議室で構成される。GCPとGCはフラッグシップの位置付けで、CCはスタンダードとなっている。GCPは新築・築浅物件だが、ほかはすべてリノベーションが中心である。GCPはマルチ活用できるスタイリッシュな複合施設で、GCは同社における最高品質の多目的ホールとなっている。2020年2月期第3四半期末時点で、GCPが23拠点(247室)、GCが48拠点(456室)、スタンダード会議室のCCが拠点数・室数で最大となる86拠点(979室)を有する。一方、ライトユーズとして展開しているBCとスター貸会議室のうち、BCはリーズナブルな会議室で48拠点に305室あり、スター貸会議室は小規模会議室で44拠点に102室ある。同社は低価格での会議室利用で顧客を獲得し、利便性などのメリットを顧客に認識させ、次の高グレードな貸会議室への利用につなげていく戦略を取っており、その幅広いグレード及び拠点数・室数の会議室利用で顧客単価及びリピート率の向上を実現している。一方、日本リージャスについては、全国に152拠点・23,087WSのレンタルオフィス・コワーキングスペースを展開しており、「Regus」(ハイグレードなレンタルオフィス)を中心として、「Openoffice」(リーズナブルなレンタルオフィス)や「SPACES」(コワーキングスペース)の3つのブランドを有している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 空間シェアリングによる市場創造型の事業展開
ティーケーピー<3479>による「貸会議室ビジネス」は、不動産オーナーから遊休資産・低収益物件・不採算資産を割安で借り上げ、会議室や宴会場などに「空間」を「再生」し、シェアリングエコノミーとして付加価値を提供するというものである。不動産オーナーから大口取引で不動産を賃貸などで割安に仕入れ、物件を貸会議室などに利用できるように照明・カーペット・壁紙などリノベーションを行い貸会議室仕様にするとともに、ケータリングや宿泊、各種オプションなど周辺サービスを付加する。顧客は主に会議室利用を求める法人であり、顧客側にとっては自社で会議室を保有するのに比べ、費用の削減、業務の集約化、多目的の利用が可能になるなどのメリットが多い。したがって、同社の事業は、大口取引を望む供給側と小口販売・シェアリングを望む需要側をうまくつないでいると言える。最近では、グレードの高いオフィスビルの企画・設計の段階から、同社仕様による会議室をあらかじめ設けることにより、共有部分の有効活用(収益化等)を手掛ける新しいシェアリングの形も増えているようだ。
また、日本リージャスの買収により、これまでの会議室利用に加えて、短中期のオフィス利用(レンタルオフィスやコワーキングスペース)へとサービス領域を拡充した。多様なスペースの活用が可能となったことにより、広範な顧客ニーズを取り込むとともに、成長が期待できるフレキシブルオフィス市場での事業基盤を一気に確立することができた。
さらに「持たざる経営」にも特徴がある。仕入れは賃貸契約を主軸としているため、同社業績における不動産価格の変動による影響は小さく、通常の不動産会社が有するリスクとは異なっていることに注意したい(ただ、安定的に高稼働率が期待できるホテル事業については、あえて一部を自社所有することにより高収益性を確保するとともに、いつでも流動化できるような準備をしている)。
2. 収益モデルの特徴(貸会議室とレンタルオフィスの違い)
同社本体の「貸会議室ビジネス」は、時間貸しによるフロー型の収益モデルである。また、単にスペースをサブリースするだけでなく、ケータリングや宿泊、各種オプションなどの周辺サービスを付加することで売上高の拡大を図っている。特に季節要因により第2四半期から第3四半期においては、会議室料以外の売上比率が高くなる傾向があり、稼働率ではなく「坪当たり売上高」を重視している。オープンより平均3ヶ月で損益分岐点に到達し、12ヶ月で巡行速度に乗ることから、比較的早期に収益化が可能な収益モデルと言える。
一方、日本リージャスによる「レンタルオフィスビジネス」は、中長期にわたり安定収益が期待できるストック型の収益モデルである。したがって、高稼働率を維持していくことが重要となる。初期費用※が大きいことから、オープンから平均8〜12ヶ月で損益分岐点(稼働率45%)に到達し、約18ヶ月で巡行速度(稼働率65%)に乗る。比較的収益化までの期間が長いが、高稼働を維持しているかぎり長期にわたって高い収益性が期待できる。
TKPの貸会議室ビジネスにおけるKPIが「坪当たり売上高」であるのに対し、日本リージャスのレンタルオフィスビジネスにおけるKPIは「稼働率」であり、全体の大部分を占める2017年12月以前にオープンした拠点は80%以上の高稼働を維持している。
※契約からオープンまでの工事期間は平均3〜4ヶ月に及び、その間の工事費や賃料等が初期費用となる。
同社では、貸会議室は大型の中古ビル、レンタルオフィスは新築及び築浅ビルを中心とする出店戦略であるが、レンタルオフィス出店時には、その一部を最初は同社本体の貸会議室として出店することで拠点黒字化を早めるなど、2種類の収益モデルを補完的に組み合わせた独自の収益マネジメントにも取り組んでいる。
3. 拠点ネットワーク
国内外に261拠点・2,158室の法人向け貸会議室を展開している(2020年2月期第3四半期末時点)。そのうち、海外には、ニューヨーク、ニュージャージー、香港、シンガポール、台湾に合計29室を有する。利用目的や規模、予算などに合わせた5つのグレード(日本リージャスは除く)に分かれており、単価の高いものから、ガーデンシティPREMIUM(GCP)、ガーデンシティ(GC)、カンファレンスセンター(CC)、ビジネスセンター(BC)、スター貸会議室で構成される。GCPとGCはフラッグシップの位置付けで、CCはスタンダードとなっている。GCPは新築・築浅物件だが、ほかはすべてリノベーションが中心である。GCPはマルチ活用できるスタイリッシュな複合施設で、GCは同社における最高品質の多目的ホールとなっている。2020年2月期第3四半期末時点で、GCPが23拠点(247室)、GCが48拠点(456室)、スタンダード会議室のCCが拠点数・室数で最大となる86拠点(979室)を有する。一方、ライトユーズとして展開しているBCとスター貸会議室のうち、BCはリーズナブルな会議室で48拠点に305室あり、スター貸会議室は小規模会議室で44拠点に102室ある。同社は低価格での会議室利用で顧客を獲得し、利便性などのメリットを顧客に認識させ、次の高グレードな貸会議室への利用につなげていく戦略を取っており、その幅広いグレード及び拠点数・室数の会議室利用で顧客単価及びリピート率の向上を実現している。一方、日本リージャスについては、全国に152拠点・23,087WSのレンタルオフィス・コワーキングスペースを展開しており、「Regus」(ハイグレードなレンタルオフィス)を中心として、「Openoffice」(リーズナブルなレンタルオフィス)や「SPACES」(コワーキングスペース)の3つのブランドを有している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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