神戸物産 Research Memo(4):テレビ番組の宣伝効果等で顧客層が拡大、既存店向け商品出荷額は前期比7.1%増
[20/02/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■神戸物産<3038>の業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) 業務スーパー事業
業務スーパー事業の売上高は前期比11.6%増の264,171百万円、営業利益は同22.4%増の21,038百万円となり、過去最高を連続更新した。新規出店効果に加えPB商品の販売好調により既存店向け商品出荷額が前期比7.1%増と会社計画(同2%台後半の伸び)を上回る伸長を見せたことが要因だ。
2019年2月17日に全国放送されたテレビ番組(TBS「坂上&指原のつぶれない店」)で、同社のPB商品が工場の紹介も含めて特集で取り上げられたほか、その後も複数の情報番組やSNS等で拡散された効果もあり、「業務スーパー」の認知度が一段と向上し、顧客層の裾野が広がった。また、タピオカブームもあって学生等の若年層も多く来店し、各種スイーツ商品が大きく売上を伸ばしたことも特徴と言える。既存店ベースの商品出荷額伸び率は1年を通して前年同月を上回り、消費増税後の10月の売上高についても前年同月比7.9%増と堅調に推移した。スーパー業界全体の同期間における食品の既存店売上高が同約1%減だったことと比較すると、「業務スーパー」の好調ぶりがさらに際立つ格好となっている。
PB商品の中でも2019年10月期において販売が大きく伸びたのは、台湾からの輸入商品であるタピオカドリンク(売上構成比では1%以下)や、国内グループ工場で製造する牛乳パックデザート(コーヒーゼリー、水ようかん等)、冷凍チーズケーキ、チュロスなどのスイーツ・菓子商品、天然酵母食パン、Ca鮭フレーク等で、その他にも定番の人気商品である冷凍讃岐うどんや徳用ウインナーなども客数増加を背景に売上を伸ばした。牛乳パックデザートや冷凍チーズケーキ、チュロスなどは、国内グループ工場で本来は別の商品の製造ラインを転用して生産されていることがテレビ番組で取り上げられたことを契機に売上増に拍車が掛かったようだ。牛乳パックデザートは牛乳、冷凍チーズケーキは豆腐、チュロスはお団子の製造ラインを転用して量産し、低価格化を実現している。また、天然酵母食パンは食パンがブームとなるなかで、品質改良を図ったことがヒットの要因となっている。これらPB商品の売上比率は前期の30.01%から30.68%に上昇し、利益率の上昇要因となった。国内グループ工場の収益性も向上しており、すべての向上で黒字化を達成している。
なお、業務スーパーの出店状況については、新規出店で49店舗、リロケーションなどによる退店で17店舗となり、前期末比32店舗増の845店舗となった。会社計画比では7店舗上回ったことになる。地域別の前期末比増減を見ると、関東直轄エリア(東京、神奈川、埼玉、千葉)で16店舗増、九州直轄エリア(鹿児島除く)で8店舗増、関西直轄エリア※で4店舗増、直轄エリア以外の地方エリアで4店舗増となっており、出店余地の大きい関東や九州での新規出店が目立った。九州については福岡県で6店舗増(合計11店舗)となったほか、店舗のなかった大分県で2店舗を新規出店し、いずれもオープン直後から好調に推移している。
※関西直轄エリアは大阪、京都、兵庫(淡路島除く)、奈良、和歌山、滋賀の2府4県。
(2) 神戸クック事業
神戸クック事業の売上高は前期比27.6%増の2,185百万円、営業利益は124百万円(前期は43百万円の損失)と初めて黒字転換した。店舗数拡大による増収効果や前期まで計上してきた在庫償却費の一巡が要因で、四半期ベースで見ても4四半期連続で黒字となっている。2019年10月期末の店舗数を見ると、「神戸クック・ワールドビュッフェ」が前期末比3店舗増の22店舗、「馳走菜」が同7店舗増の10店舗となった。
「神戸クック・ワールドビュッフェ」については、2018年11月に「カルマーレ宇都宮店」(栃木県宇都宮市)、「パリオシティ福井店」(福井県福井市)、2019年3月に「マイプラザ南富山店」(富山県富山市)、同年10月に「ライフガーデン水巻店」(福岡県遠賀郡)にFC店舗を新規出店した。世界の様々な料理、ドリンクを多数そろえ、オープンキッチンによる出来立ての料理を、広大な店内でくつろぎながら、時間制限なし(一部店舗を除く)で食事を楽しめるコンセプトが消費者に支持されており、新規出店店舗についてはオープンの様子が地元メディアに取り上げられたこともあり、いずれも順調な滑り出しを見せている。
また、「馳走菜」については業務スーパー「鴨居店」(横浜市緑区)内に出店していた「Green's K」を2018年11月にリニューアルしたほか、埼玉、神奈川、静岡、兵庫、愛媛、福岡などで業務スーパーに併設する形でFC出店を拡大している。イージーオペレーションの実現※により、各店舗とも収益化しているようで、今後も店舗数の拡大が見込まれる。
※メニューを絞り固定化することで、品質の安定と作業効率の向上し少人数での運営を可能にしている。
(3) クックイノベンチャー事業
クックイノベンチャー事業の売上高は前期比11.0%増の30,466百万円、営業利益は同9.4%減の635百万円となった。売上高については複数の外食企業を子会社化したことや、主要業態の1つである国産牛食べ放題レストラン「肉匠坂井」の出店数増加等により、2013年にグループ化して以降で初めての増収となった。一方、利益面では食材費や人件費の高騰、不採算店舗の見直し、のれん償却費の増加などが減益要因となった。ただ、不採算店舗の整理については一定の目途が付いてきており、下期だけで見ると、前年同期比で30.9%の増益に転じている。
(4) エコ再生エネルギー事業
エコ再生エネルギー事業の売上高は前期比97.6%増の2,341百万円、営業利益は同117.5%増の361百万円となった。2018年8月に本格稼働を開始した北海道の木質バイオマス発電所の売電収入がフル寄与したことが増収増益要因となった。また、2019年3月には新たに北海道と和歌山県で各1ヶ所の太陽光発電所が稼働し、期末における総発電出力は前期末比4MW(メガワット)増の28.25MWとなっている。木質バイオマス発電所については、当初の想定よりも発電効率が高いようで、売上、利益ともに会社計画を上回っている。
(5) その他
輸入食品店の「ガレオン」事業や観光事業、設備賃貸事業等が含まれるその他セグメントの売上高は前期比126.6%増の451百万円、営業損失は219百万円(前期は216百万円の損失)となった。
「ガレオン」の店舗数は千葉県内のショッピングセンター内に出店したFC店舗を退店し、現在は直営1店舗(横浜市西区)とオンラインショップを運営している。横浜みなとみらいの複合施設「クイーンズスクエア横浜」内に出店している直営店についてはオープン以来、3年連続で増収増益となるなど順調に推移しているものの、他エリアでの収益化に苦戦しているようで、店舗オペレーションの確立や商品戦略などを再検討した上で、再度、FCでの出店を検討している。
一方、観光事業については、休業中であったリゾート温浴施設「ホットラグーン大分」(2016年10月開業)の売却を視野に検討している。また、北海道茅部郡森町で開園を予定している観光果樹園については、果樹の生育を待って判断するとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 事業セグメント別動向
(1) 業務スーパー事業
業務スーパー事業の売上高は前期比11.6%増の264,171百万円、営業利益は同22.4%増の21,038百万円となり、過去最高を連続更新した。新規出店効果に加えPB商品の販売好調により既存店向け商品出荷額が前期比7.1%増と会社計画(同2%台後半の伸び)を上回る伸長を見せたことが要因だ。
2019年2月17日に全国放送されたテレビ番組(TBS「坂上&指原のつぶれない店」)で、同社のPB商品が工場の紹介も含めて特集で取り上げられたほか、その後も複数の情報番組やSNS等で拡散された効果もあり、「業務スーパー」の認知度が一段と向上し、顧客層の裾野が広がった。また、タピオカブームもあって学生等の若年層も多く来店し、各種スイーツ商品が大きく売上を伸ばしたことも特徴と言える。既存店ベースの商品出荷額伸び率は1年を通して前年同月を上回り、消費増税後の10月の売上高についても前年同月比7.9%増と堅調に推移した。スーパー業界全体の同期間における食品の既存店売上高が同約1%減だったことと比較すると、「業務スーパー」の好調ぶりがさらに際立つ格好となっている。
PB商品の中でも2019年10月期において販売が大きく伸びたのは、台湾からの輸入商品であるタピオカドリンク(売上構成比では1%以下)や、国内グループ工場で製造する牛乳パックデザート(コーヒーゼリー、水ようかん等)、冷凍チーズケーキ、チュロスなどのスイーツ・菓子商品、天然酵母食パン、Ca鮭フレーク等で、その他にも定番の人気商品である冷凍讃岐うどんや徳用ウインナーなども客数増加を背景に売上を伸ばした。牛乳パックデザートや冷凍チーズケーキ、チュロスなどは、国内グループ工場で本来は別の商品の製造ラインを転用して生産されていることがテレビ番組で取り上げられたことを契機に売上増に拍車が掛かったようだ。牛乳パックデザートは牛乳、冷凍チーズケーキは豆腐、チュロスはお団子の製造ラインを転用して量産し、低価格化を実現している。また、天然酵母食パンは食パンがブームとなるなかで、品質改良を図ったことがヒットの要因となっている。これらPB商品の売上比率は前期の30.01%から30.68%に上昇し、利益率の上昇要因となった。国内グループ工場の収益性も向上しており、すべての向上で黒字化を達成している。
なお、業務スーパーの出店状況については、新規出店で49店舗、リロケーションなどによる退店で17店舗となり、前期末比32店舗増の845店舗となった。会社計画比では7店舗上回ったことになる。地域別の前期末比増減を見ると、関東直轄エリア(東京、神奈川、埼玉、千葉)で16店舗増、九州直轄エリア(鹿児島除く)で8店舗増、関西直轄エリア※で4店舗増、直轄エリア以外の地方エリアで4店舗増となっており、出店余地の大きい関東や九州での新規出店が目立った。九州については福岡県で6店舗増(合計11店舗)となったほか、店舗のなかった大分県で2店舗を新規出店し、いずれもオープン直後から好調に推移している。
※関西直轄エリアは大阪、京都、兵庫(淡路島除く)、奈良、和歌山、滋賀の2府4県。
(2) 神戸クック事業
神戸クック事業の売上高は前期比27.6%増の2,185百万円、営業利益は124百万円(前期は43百万円の損失)と初めて黒字転換した。店舗数拡大による増収効果や前期まで計上してきた在庫償却費の一巡が要因で、四半期ベースで見ても4四半期連続で黒字となっている。2019年10月期末の店舗数を見ると、「神戸クック・ワールドビュッフェ」が前期末比3店舗増の22店舗、「馳走菜」が同7店舗増の10店舗となった。
「神戸クック・ワールドビュッフェ」については、2018年11月に「カルマーレ宇都宮店」(栃木県宇都宮市)、「パリオシティ福井店」(福井県福井市)、2019年3月に「マイプラザ南富山店」(富山県富山市)、同年10月に「ライフガーデン水巻店」(福岡県遠賀郡)にFC店舗を新規出店した。世界の様々な料理、ドリンクを多数そろえ、オープンキッチンによる出来立ての料理を、広大な店内でくつろぎながら、時間制限なし(一部店舗を除く)で食事を楽しめるコンセプトが消費者に支持されており、新規出店店舗についてはオープンの様子が地元メディアに取り上げられたこともあり、いずれも順調な滑り出しを見せている。
また、「馳走菜」については業務スーパー「鴨居店」(横浜市緑区)内に出店していた「Green's K」を2018年11月にリニューアルしたほか、埼玉、神奈川、静岡、兵庫、愛媛、福岡などで業務スーパーに併設する形でFC出店を拡大している。イージーオペレーションの実現※により、各店舗とも収益化しているようで、今後も店舗数の拡大が見込まれる。
※メニューを絞り固定化することで、品質の安定と作業効率の向上し少人数での運営を可能にしている。
(3) クックイノベンチャー事業
クックイノベンチャー事業の売上高は前期比11.0%増の30,466百万円、営業利益は同9.4%減の635百万円となった。売上高については複数の外食企業を子会社化したことや、主要業態の1つである国産牛食べ放題レストラン「肉匠坂井」の出店数増加等により、2013年にグループ化して以降で初めての増収となった。一方、利益面では食材費や人件費の高騰、不採算店舗の見直し、のれん償却費の増加などが減益要因となった。ただ、不採算店舗の整理については一定の目途が付いてきており、下期だけで見ると、前年同期比で30.9%の増益に転じている。
(4) エコ再生エネルギー事業
エコ再生エネルギー事業の売上高は前期比97.6%増の2,341百万円、営業利益は同117.5%増の361百万円となった。2018年8月に本格稼働を開始した北海道の木質バイオマス発電所の売電収入がフル寄与したことが増収増益要因となった。また、2019年3月には新たに北海道と和歌山県で各1ヶ所の太陽光発電所が稼働し、期末における総発電出力は前期末比4MW(メガワット)増の28.25MWとなっている。木質バイオマス発電所については、当初の想定よりも発電効率が高いようで、売上、利益ともに会社計画を上回っている。
(5) その他
輸入食品店の「ガレオン」事業や観光事業、設備賃貸事業等が含まれるその他セグメントの売上高は前期比126.6%増の451百万円、営業損失は219百万円(前期は216百万円の損失)となった。
「ガレオン」の店舗数は千葉県内のショッピングセンター内に出店したFC店舗を退店し、現在は直営1店舗(横浜市西区)とオンラインショップを運営している。横浜みなとみらいの複合施設「クイーンズスクエア横浜」内に出店している直営店についてはオープン以来、3年連続で増収増益となるなど順調に推移しているものの、他エリアでの収益化に苦戦しているようで、店舗オペレーションの確立や商品戦略などを再検討した上で、再度、FCでの出店を検討している。
一方、観光事業については、休業中であったリゾート温浴施設「ホットラグーン大分」(2016年10月開業)の売却を視野に検討している。また、北海道茅部郡森町で開園を予定している観光果樹園については、果樹の生育を待って判断するとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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