アーバネット Research Memo(5):好調な外部環境を追い風に、販売戸数の拡大が業績をけん引
[20/03/02]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 過去の業績推移
過去の業績推移を振り返ると、主力である投資用ワンルームマンションにおける販売戸数の拡大がアーバネットコーポレーション<3242>の業績をけん引してきた。2011年6月期に業績が落ち込んでいるのは、2008年のリーマンショックの影響などによる金融引き締めを背景として、しばらく開発物件を凍結していたことによるものである。しかし、2011年6月期をボトムとして、金融緩和の動きとともに、順調に開発物件を積み上げることで業績は回復から拡大基調をたどっており、2019年6月期は過去最高業績を更新している。特に、投資用ワンルームマンションの売れ行きが好調であることや、海外投資家や事業会社等への1棟一括直接販売による販売単価の上昇もあいまって、経常利益率も10%前後の水準で推移している。
一方、財務面では、開発物件の積み上げなどに伴い有利子負債残高も増加傾向にあるが、内部留保の蓄積に加え、2015年6月の公募増資(約13億円)や2019年12月の公募増資等(約20億円)により、自己資本比率は30%を超える水準となっている。なお、2014年6月期以降、その他(固定資産)が拡大しているのは、安定収益源の確保や融資担保となる賃貸収益物件の取得を進めてきたことに加えて、新たに進めているホテル開発プロジェクトによるものである。足元では用地取得が困難な状況が続いており、2019年6月期の資産残高の伸びはやや緩やかとなったが、2020年6月期に入ってからは、公募増資等による「現金及び預金」の増加のほか、「仕掛販売用不動産」の伸びなどにより第2四半期までの資産残高は順調に拡大している。
2. 2020年6月期上期業績の概要
2020年6月期上期の業績は、売上高が前年同期比28.0%減の8,256百万円、営業利益が同47.0%減の747百万円、経常利益が同54.8%減の591百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同55.2%減の406百万円と減収減益となった。ただ、売上高、各段階利益ともに計画を上回る水準となっており、下期偏重となっている通期予想に対して順調に進捗していると評価できる。
前年同期比で減収となったのは、「不動産開発販売」の減少によるものである。下期偏重の販売計画となっていることから、上期における販売戸数は6棟266戸※(前年同期は8棟411戸)にとどまった。ただ、販売戸数は計画どおりであり、販売価格の高止まり等により若干計画を上回る進捗となった。一方、「不動産仕入販売」及び「その他」はほぼ横ばいで推移。特に、「その他」については、賃貸収益物件の安定稼働が寄与している。
※自社開発の投資用マンション等5棟263戸、店舗1棟3戸。
利益面でも、減収による収益の下押しや開発コストの上昇等により営業減益となり、営業利益率も9.0%(前年同期は12.3%)に低下。ただ、下期には採算の良いプロジェクトの販売により大きく改善に向かう見通しである。
財務面では、公募増資等(約20億円の資金調達)による「現金及び預金」の増加や「仕掛販売用不動産」の伸びにより総資産は前期末比7.7%増の26,779百万円に拡大。一方、自己資本も公募増資や内部留保の積み増しなどにより同25.7%増の10,503百万円に大きく拡大したことから、自己資本比率は32.5%(前期末は27.4%)に改善している。
キャッシュ・フローの状況に目を向けると、営業キャッシュ・フローがマイナスになっているのは、今後の成長に向けた開発用地の仕入れ等によるものである。また、投資キャッシュ・フローについても、進行中のホテル開発等によりマイナスとなっている。一方、財務キャッシュ・フローは公募増資等により大きくプラスとなっており、その結果、「現金及び現金」残高は前期末比36.7%増の7,240百万円に大きく積み上がった。下期にはホテル開発にかかる支払いが予定されているものの、同社では50〜60億円規模の「現金及び預金」を留保することで、環境変化に機動的に対応しながら、持続的な成長に活用していく方針のようだ。
3. パイプラインの状況
2020年6月期上期は、前述のとおり、自社開発の投資用マンション5棟(263戸)、店舗1棟(3戸)の合計266戸を販売した。一方、今後の成長につながる用地仕入れにも積極的に取り組み、下期の販売分469戸に加えて、来期(2021年6月期)以降の販売予定分1,214戸を積み上げている。全般的に都心のマンション用地は仕入れが難しい環境が続いているが、同社は物件厳選等により慎重な姿勢を取りつつも、積極的な仕入れを継続していく方針である。また、2018年より開始した自社開発ホテルプロジェクトの第1号「ホテルアジール東京蒲田」も順調に進捗している(2020年5月頃の竣工予定)。「蒲田駅」から徒歩3分の好立地や優れたホスピタリティを特徴とし、1名から2名での利用はもちろん、ファミリー利用(国内外からの3名から6名までの利用者をメインターゲット)も可能な全客室48室(地上15階)を予定している。今回の試みによる手応えを見定めながら、次のプロジェクトについても検討していく方針である(既に開発用地を物色中のようである)。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 過去の業績推移
過去の業績推移を振り返ると、主力である投資用ワンルームマンションにおける販売戸数の拡大がアーバネットコーポレーション<3242>の業績をけん引してきた。2011年6月期に業績が落ち込んでいるのは、2008年のリーマンショックの影響などによる金融引き締めを背景として、しばらく開発物件を凍結していたことによるものである。しかし、2011年6月期をボトムとして、金融緩和の動きとともに、順調に開発物件を積み上げることで業績は回復から拡大基調をたどっており、2019年6月期は過去最高業績を更新している。特に、投資用ワンルームマンションの売れ行きが好調であることや、海外投資家や事業会社等への1棟一括直接販売による販売単価の上昇もあいまって、経常利益率も10%前後の水準で推移している。
一方、財務面では、開発物件の積み上げなどに伴い有利子負債残高も増加傾向にあるが、内部留保の蓄積に加え、2015年6月の公募増資(約13億円)や2019年12月の公募増資等(約20億円)により、自己資本比率は30%を超える水準となっている。なお、2014年6月期以降、その他(固定資産)が拡大しているのは、安定収益源の確保や融資担保となる賃貸収益物件の取得を進めてきたことに加えて、新たに進めているホテル開発プロジェクトによるものである。足元では用地取得が困難な状況が続いており、2019年6月期の資産残高の伸びはやや緩やかとなったが、2020年6月期に入ってからは、公募増資等による「現金及び預金」の増加のほか、「仕掛販売用不動産」の伸びなどにより第2四半期までの資産残高は順調に拡大している。
2. 2020年6月期上期業績の概要
2020年6月期上期の業績は、売上高が前年同期比28.0%減の8,256百万円、営業利益が同47.0%減の747百万円、経常利益が同54.8%減の591百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同55.2%減の406百万円と減収減益となった。ただ、売上高、各段階利益ともに計画を上回る水準となっており、下期偏重となっている通期予想に対して順調に進捗していると評価できる。
前年同期比で減収となったのは、「不動産開発販売」の減少によるものである。下期偏重の販売計画となっていることから、上期における販売戸数は6棟266戸※(前年同期は8棟411戸)にとどまった。ただ、販売戸数は計画どおりであり、販売価格の高止まり等により若干計画を上回る進捗となった。一方、「不動産仕入販売」及び「その他」はほぼ横ばいで推移。特に、「その他」については、賃貸収益物件の安定稼働が寄与している。
※自社開発の投資用マンション等5棟263戸、店舗1棟3戸。
利益面でも、減収による収益の下押しや開発コストの上昇等により営業減益となり、営業利益率も9.0%(前年同期は12.3%)に低下。ただ、下期には採算の良いプロジェクトの販売により大きく改善に向かう見通しである。
財務面では、公募増資等(約20億円の資金調達)による「現金及び預金」の増加や「仕掛販売用不動産」の伸びにより総資産は前期末比7.7%増の26,779百万円に拡大。一方、自己資本も公募増資や内部留保の積み増しなどにより同25.7%増の10,503百万円に大きく拡大したことから、自己資本比率は32.5%(前期末は27.4%)に改善している。
キャッシュ・フローの状況に目を向けると、営業キャッシュ・フローがマイナスになっているのは、今後の成長に向けた開発用地の仕入れ等によるものである。また、投資キャッシュ・フローについても、進行中のホテル開発等によりマイナスとなっている。一方、財務キャッシュ・フローは公募増資等により大きくプラスとなっており、その結果、「現金及び現金」残高は前期末比36.7%増の7,240百万円に大きく積み上がった。下期にはホテル開発にかかる支払いが予定されているものの、同社では50〜60億円規模の「現金及び預金」を留保することで、環境変化に機動的に対応しながら、持続的な成長に活用していく方針のようだ。
3. パイプラインの状況
2020年6月期上期は、前述のとおり、自社開発の投資用マンション5棟(263戸)、店舗1棟(3戸)の合計266戸を販売した。一方、今後の成長につながる用地仕入れにも積極的に取り組み、下期の販売分469戸に加えて、来期(2021年6月期)以降の販売予定分1,214戸を積み上げている。全般的に都心のマンション用地は仕入れが難しい環境が続いているが、同社は物件厳選等により慎重な姿勢を取りつつも、積極的な仕入れを継続していく方針である。また、2018年より開始した自社開発ホテルプロジェクトの第1号「ホテルアジール東京蒲田」も順調に進捗している(2020年5月頃の竣工予定)。「蒲田駅」から徒歩3分の好立地や優れたホスピタリティを特徴とし、1名から2名での利用はもちろん、ファミリー利用(国内外からの3名から6名までの利用者をメインターゲット)も可能な全客室48室(地上15階)を予定している。今回の試みによる手応えを見定めながら、次のプロジェクトについても検討していく方針である(既に開発用地を物色中のようである)。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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