オンコリス Research Memo(1):テロメライシンを中外製薬に導出、次世代版も2022年の臨床試験入り目指す
[20/03/24]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
オンコリスバイオファーマ<4588>は、腫瘍溶解ウイルスによる新規がん治療薬(テロメライシン)や新規がん検査薬(テロメスキャン)の開発を目的に2004年に設立されたバイオベンチャーである。開発品の上市実績はまだないが、2019年4月に中外製薬<4519>とテロメライシンに関する独占的ライセンス契約及び資本提携契約を締結し、テロメラインの上市に向け前進している。
1. 2019年12月期業績概要
2019年12月期の売上高は前期比673.5%増の1,303百万円、営業損失は511百万円(前期は1,247百万円の損失)となった。2019年4月に中外製薬とテロメライシンに関して、日本・台湾における独占的ライセンス契約、及び日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における独占的オプション契約を締結し、契約一時金5.5億円を受領したほか、同年12月に第1回マイルストーン収入5億円を受領したことが増収要因となった。費用面では研究開発費が減少したものの、特許関連費用や株式報酬費用等の増加によって販管費が前期比407百万円増加した。
2. テロメライシンの開発動向
中外製薬に導出したテロメライシンについては、2020年3月より食道がんを対象とした放射線併用療法での第2相臨床試験が国内でスタートした。同製品は先駆け審査指定制度※の対象品目に指定されたこともあり、順調に進めば2023年中にも上市できる可能性がある。また、米国では固形がんを対象とした免疫チェックポイント阻害剤(ペムブロリズマブ)等との併用療法による医師主導治験が2020年は3プロジェクト進む見通しとなっている(1つは2019年に開始)。結果が良好であれば、中外製薬がオプション権を行使してグループ会社のGenentech, Inc.(以下、ジェネンテック)で自社の免疫チェックポイント阻害剤(アテゾリズマブ)を用いた併用療法による開発を進めていく可能性がある。中外製薬が独占的オプション権を行使した場合にはライセンス契約総額で500億円以上となることから、これら米国での今後の開発動向に注目したい。
※先駆け審査指定制度とは、対象疾患の重篤性など一定要件を満たす画期的な新薬などについて、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)が薬事承認に関する相談・審査を優先的に取り扱い、承認審査期間を短縮することで早期実用化を目指すもの。通常は、承認申請から12ヶ月程度を目標に審査を行うが、同制度を活用することで審査期間を6ヶ月程度に短縮することが可能となる。テロメライシンは2019年4月に指定された。
3. その他パイプラインの動向
テロメライシンよりも腫瘍殺傷効果の高い次世代テロメライシン「OBP-702」についても開発に本格着手する。2020年内にGMP基準の製造を開始し、2021年前半に前臨床試験を行い年内に米国でIND(治験計画届)申請を目指す。対象疾患は、テロメライシンでは効果が得られにくい膵臓がんや胃がん腹膜播種等を想定している。また、がん検査薬のテロメスキャンはAI画像認識技術を活用したCTC※の自動検出システムを2020年夏頃までに開発し、年内までに評価を終えて実用化を目指す。主に肺がんや子宮頸がんの検査用としての需要が見込まれる。従来は1検体当たりの検査時間に約4時間と長時間要していたが、自動検出システムの完成により数分で検査が可能となるため、生産性の飛躍的向上により普及が進むと見ている。同システムの完成後に、アジア・欧州でのライセンス活動も行っていく予定だ。また、固形がんを対象とした治療薬候補「OBP-801」は、免疫チェックポイント阻害剤併用での開発について検討を進めているほか、HIV治療薬候補だった「OBP-601」については、新たな適応症での開発を目指す候補先企業と交渉を開始しており、早期導出の実現を目指している。
※CTC(血中循環腫瘍細胞)とは、原発腫瘍組織または転移腫瘍組織から血中へ遊離し、血流中を循環する細胞のこと。原発腫瘍部位から遊離した後、CTCは血液内を循環し、その他の臓器を侵襲して転移性腫瘍(転移巣)を形成する。
4. 今後の見通し
2020年12月期業績については、適正かつ合理的な数値の算出が困難なため会社予想を開示していない。売上高についてはパイプラインのライセンス契約一時金やマイルストーン収入などを計上する可能性がある。費用面では、「OBP-702」の前臨床試験開始に向けた準備費用や米国でテロメライシンの臨床試験を進めることもあり、研究開発費等(研究開発費+役務原価)を前期の6.7億円から10.2億円に増額する。2019年12月期末の現預金は33億円と2年程度の事業活動資金はあるが、今後も財務戦略上、資金調達については適時検討していく方針となっている。
■Key Points
・テロメライシンは中外製薬とライセンス契約を締結、中外製薬が第2相臨床試験を開始したほか、米国でも複数の医師主導治験が進む見通し
・テロメスキャンはAI画像認識技術を使った自動検出システムを開発し普及拡大を目指す・「OBP-601」は新たな適応疾患でライセンス交渉を開始
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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オンコリスバイオファーマ<4588>は、腫瘍溶解ウイルスによる新規がん治療薬(テロメライシン)や新規がん検査薬(テロメスキャン)の開発を目的に2004年に設立されたバイオベンチャーである。開発品の上市実績はまだないが、2019年4月に中外製薬<4519>とテロメライシンに関する独占的ライセンス契約及び資本提携契約を締結し、テロメラインの上市に向け前進している。
1. 2019年12月期業績概要
2019年12月期の売上高は前期比673.5%増の1,303百万円、営業損失は511百万円(前期は1,247百万円の損失)となった。2019年4月に中外製薬とテロメライシンに関して、日本・台湾における独占的ライセンス契約、及び日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における独占的オプション契約を締結し、契約一時金5.5億円を受領したほか、同年12月に第1回マイルストーン収入5億円を受領したことが増収要因となった。費用面では研究開発費が減少したものの、特許関連費用や株式報酬費用等の増加によって販管費が前期比407百万円増加した。
2. テロメライシンの開発動向
中外製薬に導出したテロメライシンについては、2020年3月より食道がんを対象とした放射線併用療法での第2相臨床試験が国内でスタートした。同製品は先駆け審査指定制度※の対象品目に指定されたこともあり、順調に進めば2023年中にも上市できる可能性がある。また、米国では固形がんを対象とした免疫チェックポイント阻害剤(ペムブロリズマブ)等との併用療法による医師主導治験が2020年は3プロジェクト進む見通しとなっている(1つは2019年に開始)。結果が良好であれば、中外製薬がオプション権を行使してグループ会社のGenentech, Inc.(以下、ジェネンテック)で自社の免疫チェックポイント阻害剤(アテゾリズマブ)を用いた併用療法による開発を進めていく可能性がある。中外製薬が独占的オプション権を行使した場合にはライセンス契約総額で500億円以上となることから、これら米国での今後の開発動向に注目したい。
※先駆け審査指定制度とは、対象疾患の重篤性など一定要件を満たす画期的な新薬などについて、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)が薬事承認に関する相談・審査を優先的に取り扱い、承認審査期間を短縮することで早期実用化を目指すもの。通常は、承認申請から12ヶ月程度を目標に審査を行うが、同制度を活用することで審査期間を6ヶ月程度に短縮することが可能となる。テロメライシンは2019年4月に指定された。
3. その他パイプラインの動向
テロメライシンよりも腫瘍殺傷効果の高い次世代テロメライシン「OBP-702」についても開発に本格着手する。2020年内にGMP基準の製造を開始し、2021年前半に前臨床試験を行い年内に米国でIND(治験計画届)申請を目指す。対象疾患は、テロメライシンでは効果が得られにくい膵臓がんや胃がん腹膜播種等を想定している。また、がん検査薬のテロメスキャンはAI画像認識技術を活用したCTC※の自動検出システムを2020年夏頃までに開発し、年内までに評価を終えて実用化を目指す。主に肺がんや子宮頸がんの検査用としての需要が見込まれる。従来は1検体当たりの検査時間に約4時間と長時間要していたが、自動検出システムの完成により数分で検査が可能となるため、生産性の飛躍的向上により普及が進むと見ている。同システムの完成後に、アジア・欧州でのライセンス活動も行っていく予定だ。また、固形がんを対象とした治療薬候補「OBP-801」は、免疫チェックポイント阻害剤併用での開発について検討を進めているほか、HIV治療薬候補だった「OBP-601」については、新たな適応症での開発を目指す候補先企業と交渉を開始しており、早期導出の実現を目指している。
※CTC(血中循環腫瘍細胞)とは、原発腫瘍組織または転移腫瘍組織から血中へ遊離し、血流中を循環する細胞のこと。原発腫瘍部位から遊離した後、CTCは血液内を循環し、その他の臓器を侵襲して転移性腫瘍(転移巣)を形成する。
4. 今後の見通し
2020年12月期業績については、適正かつ合理的な数値の算出が困難なため会社予想を開示していない。売上高についてはパイプラインのライセンス契約一時金やマイルストーン収入などを計上する可能性がある。費用面では、「OBP-702」の前臨床試験開始に向けた準備費用や米国でテロメライシンの臨床試験を進めることもあり、研究開発費等(研究開発費+役務原価)を前期の6.7億円から10.2億円に増額する。2019年12月期末の現預金は33億円と2年程度の事業活動資金はあるが、今後も財務戦略上、資金調達については適時検討していく方針となっている。
■Key Points
・テロメライシンは中外製薬とライセンス契約を締結、中外製薬が第2相臨床試験を開始したほか、米国でも複数の医師主導治験が進む見通し
・テロメスキャンはAI画像認識技術を使った自動検出システムを開発し普及拡大を目指す・「OBP-601」は新たな適応疾患でライセンス交渉を開始
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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