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オンコリス Research Memo(6):次世代テロメライシン「OBP-702」は膵臓がん、胃がん腹膜播種等で開発へ

注目トピックス 日本株
■開発パイプラインの動向

2. 次世代テロメライシン
(1) OBP-702
オンコリスバイオファーマ<4588>は次世代テロメライシンとして、テロメライシンに強力ながん抑制遺伝子であるp53を組み込んだアデノウイルス製剤「OBP-702」の開発も進めている。がん患者の30〜40%でp53遺伝子に変異・欠損があり、こうした患者向けの分子標的ウイルス療法となる。

2017年度のAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の研究プロジェクトとして採択され、岡山大学において、ヒト型骨肉腫細胞株をマウスに移植した前臨床試験を実施、投与後28日目の腫瘍の大きさをテロメライシンやp53の単独投与と比較したところ、大きさを約半分に抑える効果のあったことが確認されている。また、2019年4月に米国で開催された癌学会においても、膵管がん細胞の増殖に対して強力な抑制効果があること、膵管がん細胞の組織浸潤と転移も抑制できる可能性が動物実験モデルにより示されたこと、さらには神経芽腫細胞に対してがん関連遺伝子やテロメラーゼ活性を抑制し、非常に強い増殖抑制作用が示されたことなどが研究報告として発表されている。

「OBP-702」に関しては、テロメライシンで効果が得られにくいがん種、あるいは既存治療法に抵抗を示すがん(p53遺伝子欠損・変異がん、KRAS遺伝子変異がん※1、がん性線維芽細胞※2などで開発を進めていく方針となっている。具体的には、膵臓がんや胃がん腹膜播種などを想定している。今後の開発スケジュールとしては、2020年内にGMP製造に入り、2021年前半に前臨床試験を行い、同年末までに米国でIND申請を行う予定にしている。国内についてはカルタヘナ法に基づく経済産業省の事前審査が必要となるため、やや遅れる見通しだ。

※1 KRAS遺伝子とはがん遺伝子の1つで、細胞増殖を促進するシグナルを、細胞内で伝達するという役割を持つKRASタンパクを作り出す遺伝子のこと。KRAS遺伝子に変異が生じると、「細胞を増殖せよ」というシグナルが出され続け、がん細胞の増殖が活性化され続けることになる。大腸がん患者の40%はKRAS遺伝子変異があると言われている。
※2 多くの固形腫瘍で認められる間質細胞の1つ。固形がんの血管新生や浸潤・転移を促進する働きをする。


(2) 第3世代テロメライシン
同社はさらに薬効の高い第3世代テロメライシンの開発も進めている。免疫力を高めるT細胞を活性化する刺激分子と、腫瘍殺傷能力を高めたウイルスを組み合わせたもので、全身への転移がんや肺がん、乳がんなどを対象に開発を進めていく予定にしている。現在、独自で開発を進めているほか、2018年2月に資本提携した米バイオベンチャーのUnleash Immuno Oncolytics,Inc.(以下、アンリーシュ)※で全身投与可能なウイルスを創出するノウハウも有しており、技術を融合していくかどうかも含めて今後の開発方針を決定していくとしている。

※アンリーシュはアデノウイルス研究の専門家であるワシントン大学医学部教授が2015年に設立したベンチャーで、全身投与による転移性腫瘍への適応を目指した遺伝子改変アデノウイルスの開発を進めている。同社が現在、進めている第3世代テロメライシンの開発と方向性が合致することから資本提携に至った。同社はアンリーシュの転換社債3百万米ドルを引受けており、すべて転換した場合の議決権比率は約27%となる見込み。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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