オンコリス Research Memo(7):テロメスキャンはAI画像認識技術を使った自動検出システム開発で普及拡大へ
[20/03/24]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■オンコリスバイオファーマ<4588>の開発パイプラインの動向
3. テロメスキャン
(1) 概要
テロメスキャンは、アデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲのGFPを組み込んだ遺伝子改変型アデノウイルスとなる。テロメラーゼ陽性細胞(がん細胞)に感染することでGFPが発現し蛍光発光する作用を利用して、がん転移のプロセスに深く関与するCTC(末梢血循環腫瘍細胞)を高感度に検出する。検査方法としては、患者の血液を採取し、赤血球の溶血・除去を行ってからテロメスキャンを添加しウイルスを感染させる。感染により蛍光発光したGFP陽性細胞を検出、CTCの採取といった流れとなる。これまでPET検査などでは検出が難しかった直径5mm以下のがん細胞の早期発見や、転移・再発がんの早期発見のための検査薬としての実用化を目指しているほか、検出したCTCを遺伝子解析することによって個々の患者に最適な治療法を選択する「コンパニオン診断」※のツールとしても将来期待されている。
※患者によって個人差がある医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行なわれる臨床検査のこと。薬剤に対する患者個人の反応性を遺伝子解析によって判別し、最適な治療法を選択できるようにする。新薬の臨床開発段階でも用いられる。
テロメスキャンF35はテロメスキャンに違う型のアデノウイルス遺伝子を組み込み、感染率の向上とがん特異性を高めた改良型のテロメスキャンとなる。それぞれの特性には一長一短があり、テロメスキャンは蛍光体の発光輝度が高く検出がしやすいものの、白血球にも反応し若干発光するため、前段階で白血球を取り除く工程が必要となる。一方、テロメスキャンF35はがん細胞のみを発光させるため、白血球を取り除く工程は不要となるが、発光輝度が若干弱いといった難点がある。
(2) 開発状況
テロメスキャンの開発に関しては、同社でAI画像認識技術を用いたCTC自動検出システムをメーカーと共同で開発を進めている。カメラ画像でGFPの発光の有無を自動識別することで、従来は1検体で4時間かかっていた検査工程が数分で判別可能となり、生産性が大幅に向上することになる。従来、検査工程にかける時間が長かったことが普及の進まない理由の1つであったことから、自動検出システムが完成すれば顧客数も拡大していくものと期待される。2020年内にシステムを完成させ実用化を目指している。
また、アカデミアとの研究開発も国内外で進んでいる。順天堂大学や米NRGとは肺がん患者の術後のCTC検査を定期的に実施し、CTCの増減をチェックすることで投与された治療薬の効果の有無を確認している。CTCの数が減っていれば治療効果があるが、逆にCTCが増えていれば違う治療法を選択する際の判断材料となる。
リキッドがニューヨーク大学と共同で進めている子宮頸がん検査の開発プロジェクトは、子宮頸がんの発症原因となるHPVウイルスがCTCにのみ存在することを利用して、発症の有無を診断する。従来、子宮頸がん検査は子宮頸部の細胞を採取する必要があったため患者の身体的負担が大きく、受診率が低い要因となっていた。テロメスキャンは血液検査のため、受診もしやすく子宮頸がんの早期発見に役立つほか、術後再発も容易に検査できるようになり、医療費全体の削減につながる効果も期待されている。2019年より臨床試験を開始している。
また、ペンシルベニア大学の臨床研究によれば、肺がん患者のアーリーステージ、及びステージ1の患者のうち90%以上の患者でCTCが検出されている。他の検査薬の検出率はアーリーステージで約10%程度、ステージ1で約20%強程度の水準となっており、テロメスキャンを用いることで肺がんの早期発見や治療後のフォローアップ、過剰な治療の抑制等の効果が期待されている。そのほか、米Deciphera Pharmaceuticals,LLC(以下、ディサイフィラ)が乳がん及び消化管腫瘍の臨床試験におけるがん抑制効果を調べるための評価用としてテロメスキャンを利用している。米国で研究開発においても今後、同社が開発するCTC自動検出システムを導入していく予定で、研究開発の更なる活性化が期待される。
そのほか、大阪大学消化器外科/大阪警察病院と共同で行っていた膵がん患者のPTC※検査薬としての臨床研究は、処理能力の問題で2019年秋より一旦、ストップしている。今後、体制が整えば大阪大学及び順天堂大と共同で研究を再開していく意向となっている。
※PTC(Peritoneal Tumor Cell)…腹腔洗浄液から検出されるがん細胞
(3) 競合状況
テロメスキャンのターゲット市場となるCTCの検査市場では、現在米VeridexのCellSearchシステムが唯一欧米市場で販売承認を受けており、乳がん・大腸がん・前立腺がんのCTC検出において使用されている。また、同業他社もCTC検査のほか血中循環腫瘍DNA(ctDNA)検査など遺伝子検査技術を開発する企業も増えてきており、競争が激しい市場となっている。
こうしたなかで、テロメスキャンは肺がん細胞を始めとするほとんどのがん種において、CTCの検出が可能なほか、生きているCTCや悪性度の高い間葉系がん細胞を捕捉できることが特徴となっている。また、がん転移後のCTCを分析することで患者ごとに最適な治療法を選択できるといったコンパニオン診断も可能となる。今後、臨床試験により更なるデータを蓄積するとともに、CTC自動検出システムを完成させることで検査工程における生産性を飛躍的に向上し普及拡大を目指していく。また、日本、アジア、欧州での導出活動も自動検出システムの完成後に積極化していく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. テロメスキャン
(1) 概要
テロメスキャンは、アデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲのGFPを組み込んだ遺伝子改変型アデノウイルスとなる。テロメラーゼ陽性細胞(がん細胞)に感染することでGFPが発現し蛍光発光する作用を利用して、がん転移のプロセスに深く関与するCTC(末梢血循環腫瘍細胞)を高感度に検出する。検査方法としては、患者の血液を採取し、赤血球の溶血・除去を行ってからテロメスキャンを添加しウイルスを感染させる。感染により蛍光発光したGFP陽性細胞を検出、CTCの採取といった流れとなる。これまでPET検査などでは検出が難しかった直径5mm以下のがん細胞の早期発見や、転移・再発がんの早期発見のための検査薬としての実用化を目指しているほか、検出したCTCを遺伝子解析することによって個々の患者に最適な治療法を選択する「コンパニオン診断」※のツールとしても将来期待されている。
※患者によって個人差がある医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行なわれる臨床検査のこと。薬剤に対する患者個人の反応性を遺伝子解析によって判別し、最適な治療法を選択できるようにする。新薬の臨床開発段階でも用いられる。
テロメスキャンF35はテロメスキャンに違う型のアデノウイルス遺伝子を組み込み、感染率の向上とがん特異性を高めた改良型のテロメスキャンとなる。それぞれの特性には一長一短があり、テロメスキャンは蛍光体の発光輝度が高く検出がしやすいものの、白血球にも反応し若干発光するため、前段階で白血球を取り除く工程が必要となる。一方、テロメスキャンF35はがん細胞のみを発光させるため、白血球を取り除く工程は不要となるが、発光輝度が若干弱いといった難点がある。
(2) 開発状況
テロメスキャンの開発に関しては、同社でAI画像認識技術を用いたCTC自動検出システムをメーカーと共同で開発を進めている。カメラ画像でGFPの発光の有無を自動識別することで、従来は1検体で4時間かかっていた検査工程が数分で判別可能となり、生産性が大幅に向上することになる。従来、検査工程にかける時間が長かったことが普及の進まない理由の1つであったことから、自動検出システムが完成すれば顧客数も拡大していくものと期待される。2020年内にシステムを完成させ実用化を目指している。
また、アカデミアとの研究開発も国内外で進んでいる。順天堂大学や米NRGとは肺がん患者の術後のCTC検査を定期的に実施し、CTCの増減をチェックすることで投与された治療薬の効果の有無を確認している。CTCの数が減っていれば治療効果があるが、逆にCTCが増えていれば違う治療法を選択する際の判断材料となる。
リキッドがニューヨーク大学と共同で進めている子宮頸がん検査の開発プロジェクトは、子宮頸がんの発症原因となるHPVウイルスがCTCにのみ存在することを利用して、発症の有無を診断する。従来、子宮頸がん検査は子宮頸部の細胞を採取する必要があったため患者の身体的負担が大きく、受診率が低い要因となっていた。テロメスキャンは血液検査のため、受診もしやすく子宮頸がんの早期発見に役立つほか、術後再発も容易に検査できるようになり、医療費全体の削減につながる効果も期待されている。2019年より臨床試験を開始している。
また、ペンシルベニア大学の臨床研究によれば、肺がん患者のアーリーステージ、及びステージ1の患者のうち90%以上の患者でCTCが検出されている。他の検査薬の検出率はアーリーステージで約10%程度、ステージ1で約20%強程度の水準となっており、テロメスキャンを用いることで肺がんの早期発見や治療後のフォローアップ、過剰な治療の抑制等の効果が期待されている。そのほか、米Deciphera Pharmaceuticals,LLC(以下、ディサイフィラ)が乳がん及び消化管腫瘍の臨床試験におけるがん抑制効果を調べるための評価用としてテロメスキャンを利用している。米国で研究開発においても今後、同社が開発するCTC自動検出システムを導入していく予定で、研究開発の更なる活性化が期待される。
そのほか、大阪大学消化器外科/大阪警察病院と共同で行っていた膵がん患者のPTC※検査薬としての臨床研究は、処理能力の問題で2019年秋より一旦、ストップしている。今後、体制が整えば大阪大学及び順天堂大と共同で研究を再開していく意向となっている。
※PTC(Peritoneal Tumor Cell)…腹腔洗浄液から検出されるがん細胞
(3) 競合状況
テロメスキャンのターゲット市場となるCTCの検査市場では、現在米VeridexのCellSearchシステムが唯一欧米市場で販売承認を受けており、乳がん・大腸がん・前立腺がんのCTC検出において使用されている。また、同業他社もCTC検査のほか血中循環腫瘍DNA(ctDNA)検査など遺伝子検査技術を開発する企業も増えてきており、競争が激しい市場となっている。
こうしたなかで、テロメスキャンは肺がん細胞を始めとするほとんどのがん種において、CTCの検出が可能なほか、生きているCTCや悪性度の高い間葉系がん細胞を捕捉できることが特徴となっている。また、がん転移後のCTCを分析することで患者ごとに最適な治療法を選択できるといったコンパニオン診断も可能となる。今後、臨床試験により更なるデータを蓄積するとともに、CTC自動検出システムを完成させることで検査工程における生産性を飛躍的に向上し普及拡大を目指していく。また、日本、アジア、欧州での導出活動も自動検出システムの完成後に積極化していく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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