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オンコリス Research Memo(9):2019年12月期は中外製薬からの契約一時金・マイルストーン収入で大幅増収

注目トピックス 日本株
■業績動向と財務状況

1. 2019年12月期の業績概要
オンコリスバイオファーマ<4588>の2019年12月期の業績は、売上高が前期比673.5%増の1,303百万円、営業損失が511百万円(前期は1,247百万円の損失)、経常損失が539百万円(同1,230百万円の損失)、当期純損失が912百万円(同1,233百万円の損失)となった。

売上高については中外製薬とのライセンス契約締結に伴う契約一時金5.5億円及びマイルストーン収入5億円の計上が増収要因となった。費用の増減要因を見ると、研究開発費等が前期比50百万円の減少となった一方で、特許関連費用や株式報酬費用が増加し、販管費で前期比407百万円の増加となった。研究開発費等(研究開発費+役務原価)については期初計画で1,390百万円と大幅増を見込んでいたが、中外製薬とのライセンス契約締結に伴う臨床試験費用等の圧縮効果で480百万円、米国でのテロメライシンの臨床試験開始遅れで240百万円の下振れ要因となっている。

また、特別損失を369百万円計上したが、これはリキッドにおけるVCからの資金調達が遅延している影響で、事業進捗が当初の計画より大幅に遅れている状況を鑑みて、同社が過去に引き受けた転換社債等359百万円を投資有価証券評価損として、また、転換社債にかかる未収利息9百万円を貸倒損失として計上したことによる。なお、リキッドとは今後も北米での事業展開を進めるべく連携を密にしていく方針となっている。

事業セグメント別の収益動向を見ると、医薬品事業は中外製薬からの契約一時金・マイルストーン収入に加えて、メディジェンからの開発協力金収入※を計上し、売上高で前期比746.8%増の1,292百万円、営業利益で373百万円(前期は484百万円の損失)となった。研究開発費は前期比35百万円減少の385百万円となっている。中外製薬とのライセンス契約では、独占的オプション権を行使した場合、ライセンス契約及びマイルストーンの総額は500億円以上となっており、テロメライシンの上市後は、売上高に応じた販売ロイヤリティが得られる契約で、地域や対象疾患ごとに条件が細かく設定されている。

※テロメライシンの治験費用が膨らむなかで、開発費用の負担軽減を目的にMedigenとの共同開発契約の改定を2017年3月に実施。従来、対象を肝細胞がんのみとしていたのに対して、新たに食道がんとメラノーマの共同開発権も付与した。これにより食道がん、メラノーマの研究開発費用の一部をMedigenから開発協力金として受領している。


一方、検査事業は売上高で同28.0%減の11百万円、営業損失で151百万円(前期は169百万円の損失)となった。研究開発費は前期比20百万円減少の130百万円となっている。売上高には、米デサイフィラ向けのテロメスキャンの販売収入と2019年11月に契約解消したWONIKからの契約解除違約金を含めたライセンス契約に基づく収入が含まれている。

2. 2020年12月期の業績見通し
2020年12月期の業績見通しについては、業績に与える未確定な要素が多く、適正かつ合理的な数値算出が困難なため非開示としている。可能性として考えられるのは、「OBP-601」やテロメスキャンなどの導出が挙げられる。研究開発費等については前期比350百万円増加の1,020百万円を計画している。「OBP-702」の前臨床試験開始に向けた準備費用や米国におけるテロメライシンの臨床試験費用などの増加を見込んでいる。


次世代テロメライシンなどその他パイプラインの開発を進め、更なる企業価値向上を目指す
3. 中長期の成長イメージ
同社はテロメライシンを中外製薬に導出したが、さらなる価値向上を図るため、米国で医師主導治験を進めており、中外製薬によるオプション権行使につなげていきたい考えだ。中外製薬では当面、国内での食道がん(放射線併用療法)を対象とした上市を最優先に取り組んでいくものと思われるが、本来の目的は自社の免疫チェックポイント阻害剤であるアテゾリズマブとの併用療法による開発を進め、アテゾリズマブの市場価値を高めていくことにあると思われる。このため、現在、日米で進められているペムプロリズマブとの併用療法による医師主導治験の結果が良好であれば、米国でもオプション権を行使してグループ会社であるジェネンテックにより、同一対象疾患の企業治験をアテゾリズマブで進めていく可能性が高いと弊社では見ている。これらの開発が進めばマイルストーン収入等の収益獲得も今後見込めることになる。また、最も開発が先行する国内の食道がんを対象とした治験が順調に進めば、2023年に販売承認を取得できる可能性があり、販売ロイヤリティ収入を得られることになる。

このため、当面の業績については中外製薬の開発状況がカギを握るものの、ほかにもハンルイなど既存契約先からのマイルストーン収入やテロメスキャンの販売収入等が見込めるほか、その他パイプラインのライセンス契約も期待される。さらには、第3世代テロメライシン等の開発や医療現場でのニーズが高い難病、希少疾病を対象とした新たな治療薬候補品の導入などにも注力していく方針となっており、収益ポートフォリオを拡充しながら企業価値の更なる向上を目指す戦略となっている。また、検査薬事業については自動検出システムをグローバルに普及させ、検査キットの販売により収益を獲得するビジネスモデルの早期構築を目指していく。


資金調達は財務戦略面で今後も検討していく方針
4. 財務状況
2019年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比949百万円増加の4,380百万円となった。主な変動要因を見ると、流動資産では中外製薬からのライセンス契約一時金及びマイルストーン収入の獲得により現預金が879百万円増加したほか、売掛金が119百万円、前払費用が173百万円増加した。固定資産は長期前払費用が81百万円増加した一方で、リキッドの転換社債を減損処理したことにより投資有価証券が338百万円減少している。

負債合計は前期末比397百万円増加の926百万円となった。有利子負債が122百万円増加したほか、未払金が182百万円、未払消費税等が75百万円それぞれ増加した。また、純資産は552百万円増加の3,454百万円となった。当期純損失912百万円を計上した一方で、中外製薬への株式発行(45.66万株、出資比率3.21%)に伴い799百万円を調達したほか、譲渡制限付株式報酬として新株式を発行し、資本に組み込んだことなどが増加要因となった。

手元キャッシュは33億円と、今後2年程度の事業活動資金を賄えるだけの財務余力があると見られるが、まだ開発ステージであることに変わりなく、財務戦略上、資金調達は適時検討していく方針となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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