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Eストアー Research Memo(4):ソフトウェアの有効性は認められているも、当面は低速運転が続く見通し

注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略

3. 販促システム事業の成長戦略
販促システム事業では、販売促進支援システム、すなわち販促用ソフトウェアの開発と販売を行っている。顧客の売上高拡大という目的を持つため販促サービス事業とも重なるが、収益モデルは固定の月額基本利用料と、サービスの利用度数に応じた従量制課金から成り立っている。

Eストアー<4304>は2017年秋までに「Eストアーコンペア」、「Eストアークエリー」の2つの商品をローンチした。これら2つはともに、MA(マーケティングオートメーション)ツールで、「コンペア」は、ECサイトについてAB比較テストを行って、コンヴァージョン率(転換率、CVR)や成約数、LTV(生涯価値)の高い方をリアルタイムで突き止め、EC売上高の拡大につなげるツールである。一方「クエリー」は、既存客を一定数有する事業者向けのメールマーケティングツールで、顧客の属性を細分化し、パーソナライズしたメールを配信できる点に特長がある。

販促システム事業は2019年3月期から本格的に営業を開始した。「ショップサーブ」の既存顧客を対象に販売を開始し、その販売状況を見ながら外部顧客へと販売を拡げる計画だったが、これまでのところは計画を下回った推移となっている。その要因について、端的には「時期尚早」ということのようだ。こうした状況を受けて、2020年3月期に入って、営業コストと販売先を見直しながら低速運転を行っている。

以上のように、足元では当初の営業戦略の見直しを迫られたものの、商品自体には自信を持っており、中長期的に有効性が見直される可能性は十分あると考えられる。一方短期的には、人手のかかる社内の販促サービス事業において、生産性向上のために活用するといったことも考えられる。そこで得られた成果をアピールできれば、将来の販売に結び付く可能性がさらに高まることになるだろう。


コンサルティングを強化し、三河屋さんのように顧客と消費者との距離感を最適化する
4. 販促サービス事業の成長戦略
販促サービス事業では、顧客の売上増大に向けた調査・分析やコンサルティング、業務運営代行などのサービスを提供しているが、人の手による人的依存度が高いサービスであることが特徴だ。これには、後述するようにプラス・マイナス両面がある。

同社が販促サービス、とりわけコンサルティングの強化に注力する背景には、社会情勢・事業環境等の認識がベースとしてある。事業成功のための3要素は「良いもの」「良い市場」「良い情報」だが、現在の日本ではそれぞれ「物余り」「人口減少」「情報過多」に変質しモノが売れない状況となっている。その中で売上げを伸ばすには、顧客が消費者にOne to Oneで向き合う三河屋さんのような専門店になって、消費者との距離感を最適化していくことが戦略の根本となる。具体的には自社ECや本店EC、専門店ECとして、直営店商売をしていくことが重要となる。そして、そうした店舗の成功を支援していくのが、同社のコンサルティングサービスなど販促サービス事業ということだ。

その販促サービス事業の売上高は、2018年3月期まで極めて順調に成長してきたが、2019年3月期以降は急減速している。その要因は、2018年3月期に季節的なプロモーション強化のため特需が発生したことにある。また、若返りを図って全社ベースで幹部ポジションを入れ替えた大規模な組織改編の影響が、新規顧客獲得の営業に影響を及ぼした可能性もある。2020年3月期に入って受注単価が回復してきたとは言うものの、人的依存度の高いサービスであるコンサルティングの効率性を上げるには、現状の契約の伸びや規模ではまだ不満である。従って、年間契約額が1,000万円を超えるような大口顧客の獲得に時間がかかっていることも、大きな課題となっている。

人的依存度が高いサービスには、概してプラス面とマイナス面の特徴がある。プラス面は他社にまねされにくいことで、強い差別化要因に成り得る。一方マイナス面は、人材(コンサルタント)の獲得や育成に時間を要するため、キャパシティを容易に拡大できないことである。この点について、同社は人材投資に毎年十分な予算を割いているが、ここ数年、想定したほどのコンサルタントを獲得・育成できていない。そのため費用は想定を下回っているが、それが理由で利益が期初予想を上回っているに過ぎない。これは長い目で見れば決して喜べることではない。

中長期的な見地からは予定どおりにコストを使っていくことが好ましい。予算では、年5人〜10人のコンサルタントの増員を予定しており、計画どおりに採用・育成が進めば、2〜3年で所定の陣容を確立できるからである。同社の人選基準を維持しながら、できるだけ早期に人材拡充の目標を達成することに期待したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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