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AOITYOHold Research Memo(1):2019年12月期は増収ながら計画を下回る減益

注目トピックス 日本株
■要約

1. 同社設立の狙いと、同社の中期経営方針
AOI TYO Holdings<3975>は、株式会社AOI Pro.と株式会社ティー・ワイ・オー(TYO)の経営統合により2017年1月に設立された共同持株会社である。主力のテレビCMの企画・制作をはじめ、広告主直接取引や動画コンテンツマーケティングを軸とした「ソリューション事業」などに注力しており、業界大手2社の経営統合によりテレビCM制作においてはトップシェアを握る。

インターネットを中心としたメディア(媒体)やデバイス(スマートフォンやタブレットなど)の多様化に加え、通信速度やデータ解析、VR(仮想現実)※1やAR(拡張現実)※2などのテクノロジーの進化により業界環境が大きく変化するなかで、これまでのテレビCM制作では大きな成長は見込みにくくなる一方、広告に関連する事業領域は、その手法や構造変化を伴いながらも拡大していくものと予想されていることが経営統合に至った背景である。経営資源の結集及び有効活用により、スケールメリットやシナジー創出を実現し、新たな価値創造と事業拡大のスピードを速めるところに狙いがあると考えられる。足元業績は、プリントレス化の進展や「働き方改革」の影響をはじめ、グループ会社の整理、システム統合などにより踊り場となっているものの、これらの経営課題にひと区切りがついてきたことから新経営体制へと移行した。次のステップへと進むことにより、中期経営方針に則った取り組みをさらに加速していく方針である。

※1 VR(仮想現実)とは、仮想世界を含めたあらゆる体験を、時間や空間を超えてまるで現実世界のように表現する技法やその手法のこと。
※2 AR(拡張現実)とは、現実世界で人が感知できる情報に「何かの情報」を加え、現実を「拡張」表現する技術やその手法のこと。


2. 2019年12月期業績の概要
2019年12月期の業績は、売上高が前期比0.7%増の65,229百万円、営業利益が同38.3%減の2,118百万円と増収ながら減益となった。売上高は、海外子会社の整理を行った「海外事業」を除く、すべての事業が伸長。特に、主力の「動画広告事業」がオンライン動画の増加により増収に転じるとともに、「ソリューション事業」も広告主直接取引が順調に拡大した。利益面では、利益率の高いプリント売上の減少による影響は想定内であったものの、受注拡大に伴う実行利益率の低下、「働き方改革」や新基幹システムの稼働に伴う費用の増加等が重なったことにより、計画を下回る減益となった。さらには、不採算子会社の整理、システム統合に向けたソフトウェアの減損処理などにより特別損失を計上している。一方、定性面では、戦略的パートナーシップを構築した(株)サイバー・コミュニケーションズとの合弁会社設立など、成長領域の拡大に向けて成果を残した。

3. 2020年12月期の業績見通し
2020年12月期の業績予想について同社は、売上高を前期比0.4%減の65,000百万円、営業利益を同18.0%増の2,500百万円と売上高は横ばいながら大幅な損益改善を見込んでいる。売上高は、不採算子会社の整理等の影響により「動画広告事業」が減収となるものの、それ以外の事業は順調に伸びる見通し。利益面では、人材強化に伴う費用増を見込む一方、実行利益率の改善や費用の削減により大幅な損益改善を図る方針である。ただ、期初予想には織り込んでいなかった新型コロナウイルスの影響には注意が必要である。

4. 成長戦略
同社は、急激な環境変化などを踏まえ、2019年3月に新たな中期経営方針を公表した。これまでとの大きな違いは、「規模より質」の経営への転換である。すなわち、いかなる時代にも対応できる力強い企業体であり続けるため、ニーズや変化に対応した事業を展開すること、人材の力を最大限活用すること、適切な収益を上げ続けることを目指す姿として掲げている。また、持続可能性や株主還元等は継続して重視しており、株主資本コストを上回るROEの確保を目指していく。

■Key Points
・2019年12月期は増収ながら計画を下回る減益
・子会社整理やシステム統合に関わる費用が利益を圧迫するも、取り組んできた経営課題への対応にはひと区切り
・2020年12月期は、新経営体制の下、大幅な損益改善を図る方針
・2019年3月に公表した新中期経営計画の下、「規模より質」の経営への転換を図り、持続的な成長を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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