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船場---商環境の創造力を活かし新たな顧客開拓と海外事業の強化へ

注目トピックス 日本株
60年以上に亘り、流通・小売業の商業施設のインテリアを創造してきた船場<6540>。
社名の通り、戦後、繊維問屋の多かった大阪・船場で、洋服店向けにガラス陳列ケースの販売を営んでいた栗山ガラス店が原点だ。その後2代目である栗山忠雄(くりやま ただお)氏が1962年に株式会社船場ウインド(ウィンドウの意味)を東京・日本橋に設立したのが現在の船場の直接の前身である。その頃、岡田屋(現イオン)に誘われ、米国の商業施設を視察に出かけたことがきっかけで、イオンとの関係が深まる。1980年代以降、日本でのショッピングセンターの発展、特にイオンの成長拡大と歩調を合わせ成長してきたが、この数年は売上、利益とも伸び悩んでいた。
そこで創業家から招聘されたのが三井物産出身の八嶋大輔(やしま だいすけ)社長。2018年3月に同社の副社長に就任。2019年1月に代表取締役社長に就任すると、現中期経営計画「Brand-new SEMBA」の策定に陣頭指揮を振るった。現中計で重点施策として打ち出したのが、ビジネス拡大につながる新たな事業創造への挑戦だ。これまで流通・小売業に依存していた顧客基盤を、オフィスや高校・大学などの教育施設、ホテル・病院等にまで広げることで、流通・小売業以外の分野は前年比120%の売上増を達成している。「顧客のサクセスパートナーとして人を飽きさせない(アキナイ)環境を創造する」同社が、これまで培ってきた商環境創造力は、新しい分野でも大いに発揮されているようだ。

もうひとつの軸が海外売上の成長だ。「現在11%の比率を2021年には20%にまで引き上げたい。」1980年代に香港、台湾に、90年代にはシンガポールに拠点を設立するなど早くから海外進出をしていたこともあって、SEMBAブランドに対する現地顧客からの信頼は厚い。日本の商業施設は、耐震性など防災基準が厳しく、デザイン上の制約が多いのに比べると、海外ではクリエイティビティを発揮する余地が大きい。昨年はベトナムオフィスを拡張し、マレーシアにも拠点を設立した。

「創り手のモチベーションが上がっていかないと良い店舗はできない」というのが八嶋社長の持論である。
「だから、海外の大型商業施設のデザインはどんどん若手に任せています。依頼者に成り代わってデザイナーが店舗を設計していくなかで、消費者=生活者をいかに楽しくワクワクさせることができるか。顧客のサクセスパートナーとは、生活者のパートナーになることであり、商環境を創造することは社会に大きなインパクトを与えます」
従業員600名のうち、デザイナーが45%、現場監理者が20%、営業が10%である。デザイナーを志望して同社に応募してくる新入社員には、大学の建築学科・デザイン学科を卒業した優秀な女性も多いという。
「社員には、働きがいをもって仕事をしよう。働きがいで業界No.1の会社にしよう。そして1人ひとりが生み出す付加価値を最大にしよう、と言っています」
「現在、当社の大手顧客である流通・小売業界は新型肺炎の拡大による営業自粛という大きな危機に直面していますが、それ以前から私たちは少子高齢化と人口減という課題に取り組んでいました。セルフレジ、キャッシュレス、カフェの座席レイアウト等、収束後にはすぐに動けるように準備はしています」と語る八嶋社長の顔は、変革への自信に満ちていた。




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