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クリレスHD Research Memo(5):前期業績は増収ながら減益。積極的なM&Aが業績貢献も、減損損失を計上

注目トピックス 日本株
■クリエイト・レストランツ・ホールディングス<3387>の決算動向

2. 2020年2月期決算の概要
2020年2月期の業績(IFRS基準)は、売上収益が前期比16.8%増の139,328百万円、営業利益が同12.4%減の3,483百万円、税引前利益が同15.4%減の3,118百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同3.2%減の1,278百万円と増収ながら減益となった(売上収益は過去最高を更新)。計画に対しても売上収益はほぼ計画線で推移したものの、利益面では下回る着地となっている。

売上収益は、前期出店分89店舗(M&A等による29店舗を含む)が期初から寄与したほか、新規出店43店舗やM&A(238店舗)によりすべてのカテゴリーが伸長した。特にM&AについてはCRカテゴリー1社(SL)※1、SFPカテゴリー2社(JS、CL)※2、専門ブランドカテゴリー3社(YZ、KF、IC)※3、海外カテゴリー1社(IF)※4が大幅な上乗せ要因となっている。また、既存店売上高についても、大型台風や消費増税、新型コロナウイルス(2月中旬以降)による影響を受けたものの、通年では前期比99.2%(計画は99.9%)とほぼ計画どおりに推移。不採算店舗の整理や改装等に加え、適正な人員体制を確保したことが奏功したようだ。出退店等の実績は、新規出店43店舗、M&A等による増加238店舗、退店56店舗、業態変更39店舗、改装38店舗となり、2020年2月末のグループ総店舗数は1,149店舗と大きく拡大した。

※1 (株)クリエイト・スポーツ&レジャー(2019年9月連結)。
※2 (株)ジョー・スマイル(2019年3月連結)、(株)クルークダイニング(2019年7月連結)。
※3 (株)遊鶴(2018年12月連結)、木屋フーズ(株)(2019年3月連結)、(株)いっちょう(2019年10月連結)。
※4 Il Fornaio(America)LLC(2019年9月連結)。


利益面では、人件費単価が上昇するなかでシフトコントロールの徹底により人件費率を前期並みに抑えたほか、青果等の安定供給や食材の集約・切替等により原価率を改善。ただ、営業利益については、新型コロナウイルスによる影響を含む積極的な減損損失の計上などにより計画を下回る減益となり、営業利益率も2.5%(前期は3.3%)に低下した。一方、重視する「調整後EBITDA」が前期比133.1%増の25,212百万円と大きく増加したのは、IFRS16号の適用(リース会計基準の変更)による影響が大きいが、それを除いても着実に増えているところは評価すべきポイントである。

財務面では、相次ぐ大型M&Aの実施やIFRS16号の適用により、総資産及び有利子負債が大きく拡大。それに伴って、親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は10.9%(前期は22.6%)に低下したほか、ネットD/Eレシオ(リース負債を含む)は5.11倍(前期は1.07倍)に膨らんだ。ただ、計数の大幅な変化にはIFRS16号の適用が大きく影響しているところに注意が必要である※1。また、十分な手元流動性を確保していることに加え、潤沢な営業キャッシュ・フローにより、ネット有利子負債営業キャッシュ・フロー倍率※2は3.36倍に過ぎず、財務の安全性に懸念はないと言える。

※1 IFRS16号の適用による影響を除くと、親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は17.6%、ネットD/Eレシオは1.92倍、ネット有利子負債営業CF倍率は2.80倍となっている。
※2 ネット有利子負債÷営業キャッシュ・フローにて計算。ネット有利子負債を何年分の営業キャッシュ・フローで返済できるかを判断する指標であり、一般的には10倍を超えると返済能力に懸念があると評価される。


各カテゴリー別の業績は以下のとおりである。

(1) CRカテゴリー
売上収益は前期比13.6%増の51,843百万円、カテゴリーCF※は同10.6%増の5,992百万円と増収及びCF増となった。前期出店分38店舗(M&A等による17店舗を含む)が期初から寄与したほか、新規出店15店舗及びM&A(SL 124店舗)などが大幅な増収要因となった。既存店売上高も前期比99.9%と堅調に推移したものの、新型コロナウイルスの影響を2月中旬以降に受けたことから、計画に対しては若干未達となっている。カテゴリーCFについても、増収効果により増加したものの、計画には届かなかった。

※カテゴリーCF(キャッシュ・フロー)は、調整後EBITDA(=営業利益+その他の営業費用−協賛金収入を除くその他の営業収益+減価償却費+非経常的費用項目)をベースとしている(以下、同様)。


(2) SFPカテゴリー
売上収益は前期比6.5%増の40,216百万円、カテゴリーCFは同0.1%減の4,532百万円と増収となり、ほぼ計画線で着地した。前期出店分18店舗(FC3店舗を含む)が期初から寄与したほか、新規出店11店舗及びM&A(JS 19店舗、CL 22店舗)が増収要因となった。特にM&Aについては「SFPフードアライアンス構想」に基づき、前期に成約したJSに続き、第2弾となるCLがグループインした。また、既存店売上高についても前期比99.0%と堅調に推移。とりわけ不採算店舗の整理や運営体制の強化、販売促進策が奏功したことにより「磯丸水産」が好調であった。

(3) 専門ブランドカテゴリー
売上収益は前期比16.5%増の39,198百万円、カテゴリーCFは同32.5%増の2,921百万円と増収及びCF増となり、ほぼ計画線で着地した。前期出店分25店舗(M&Aによる10店舗を含む)が期初から寄与したほか、新規出店11店舗及びM&A(KF 7店舗、IC46店舗)が増収要因になった。また、既存店売上高も前期比98.4%を確保。KRが一部苦戦したものの、ベーカリー業態やイタリアン業態等が好調に推移した。カテゴリーCFについても、増収によりCF増を実現した。

(4) 海外カテゴリー
売上収益は前期比200.0%増の8,962百万円、カテゴリーCFは1,173百万円(前期は89百万円のマイナス)と増収及びCF増(プラス転換)となり、売上収益及びCFともに計画を上回った。前期出店分8店舗(譲受2店舗を含む)が期初から寄与したほか、新規出店6店舗及びM&A(Il Fornaio 20店舗)が増収要因となった。特に海外初となるM&AとなったIl Fornaioが業績の上乗せに大きく貢献。カテゴリーCFについても、増収によりCF増を実現した。

3. 2020年2月期の総括
以上から、2020年2月期の業績を総括すると、新型コロナウイルスの感染拡大及び自粛対応により、限定的ながら2月中旬以降の業績に影響を受けたことや、期末決算において大幅な減損損失を追加計上したことで計画を下回る減益となったものの、その要因を除けば、数々のM&Aの実現や既存店の強化等により、過去最高の売上収益を達成したところは、後述するとおり、戦略的な進捗においても評価に値すると言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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