いちご Research Memo(2):2020年2月期は物件売却好調により過去最高益の営業利益を更新(2)
[20/05/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
3. 成長戦略
新型コロナウイルスの影響で不動産業界を取り巻く環境が急変するなかで、いちご<2337>は徹底したキャッシュ創出策を打っている。心築事業に関わる不動産(従来は販売用不動産)を固定資産化し、減価償却の税効果によりキャッシュを創出するというものだ。一般に販売用不動産は、早期に販売されるべきものであり、会計処理上、減価償却を行わない。これを固定資産化すると、現金支出のない減価償却費を計上することができ、税効果が発生する(キャッシュが創出できる)。固定資産比率は2018年2月期に15.2%だったが、2019年2月期に30.1%、2020年2月期には84.4%に向上している。市場環境が悪化しているなかでは、売り急がず、じっくり保有しつつキャッシュ創出力を最大化するという戦略を徹底する。
同社は、景気循環による市況悪化がいつかは起こることを前提に、従来から収益基盤及び財務基盤を強化してきた。これは、リーマンショック時に受けた大きなダメージを糧にしたものだ。「ストック収益固定費カバー率」は、収益モデルの堅実さを反映する指標であり、不況時にリスクの大きいフロー収益(売買益)に依存しないで黒字を確保できる余裕を示す。リーマンショック時の2009年2月期に75%だったのに対し、2020年2月期は234%と3.1倍に増加しており、賃貸収入のみでも大幅な黒字が確保できることを示す。「加重平均借入期間」や「3年以内返済予定借入割合」などの指標でもリーマンショック時から大きく向上しており、景気後退によるリスクを極限まで低下させることに成功していると言えるだろう。
4. 株主還元策
同社は株主還元策として配当を実施している。原則として「減配なし、配当維持もしくは増配のみ」を明確な方針として、企業の持続的な価値向上と長期的な株主還元にコミットメントする。具体的には「株主資本配当率(DOE)3%以上」を基準としている。2020年2月期の1株当たり配当金は年間7円(前期と同額)と維持した。配当性向は41.5%、株主資本配当率(DOE)は3.4%だった。同社は、長期VISION「いちご2030」において、機動的な自社株買いを掲げ、株主価値の向上策への積極的姿勢を打ち出している。この方針に沿って、2017年2月期に30億円、2018年2月期にも30億円と自社株買いを実施してきた。2020年2月期も、2019年の7月−11月に総額約30億円分の自社株を取得した。自社株買いも勘案した総還元性向では77.7%(2020年2月期)に達する。2021年2月期に関しては、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による不動産業界への影響が現時点では不透明であることから、次期の連結業績予想をレンジで設定し、配当予想を未定としている。
■Key Points
・主力の心築事業では不動産価値向上ノウハウが強み。中小型のオフィス、レジデンス、ホテル、商業施設などのポートフォリオが特徴
・2020年2月期は物件売却好調により過去最高益の営業利益を更新。新型コロナウイルスの影響リスクをバランスシートにいち早く織り込み、特損計上
・2021年2月期は営業利益62億円〜129億円のレンジ予想。潤沢なストック収益により売却益に依存しない戦略が取れるのが強み
・“徹底したキャッシュ・フロー経営”と“強固な収益基盤・財務基盤”により、新型コロナウイルスによる急激な環境変化に対応
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
<EY>
3. 成長戦略
新型コロナウイルスの影響で不動産業界を取り巻く環境が急変するなかで、いちご<2337>は徹底したキャッシュ創出策を打っている。心築事業に関わる不動産(従来は販売用不動産)を固定資産化し、減価償却の税効果によりキャッシュを創出するというものだ。一般に販売用不動産は、早期に販売されるべきものであり、会計処理上、減価償却を行わない。これを固定資産化すると、現金支出のない減価償却費を計上することができ、税効果が発生する(キャッシュが創出できる)。固定資産比率は2018年2月期に15.2%だったが、2019年2月期に30.1%、2020年2月期には84.4%に向上している。市場環境が悪化しているなかでは、売り急がず、じっくり保有しつつキャッシュ創出力を最大化するという戦略を徹底する。
同社は、景気循環による市況悪化がいつかは起こることを前提に、従来から収益基盤及び財務基盤を強化してきた。これは、リーマンショック時に受けた大きなダメージを糧にしたものだ。「ストック収益固定費カバー率」は、収益モデルの堅実さを反映する指標であり、不況時にリスクの大きいフロー収益(売買益)に依存しないで黒字を確保できる余裕を示す。リーマンショック時の2009年2月期に75%だったのに対し、2020年2月期は234%と3.1倍に増加しており、賃貸収入のみでも大幅な黒字が確保できることを示す。「加重平均借入期間」や「3年以内返済予定借入割合」などの指標でもリーマンショック時から大きく向上しており、景気後退によるリスクを極限まで低下させることに成功していると言えるだろう。
4. 株主還元策
同社は株主還元策として配当を実施している。原則として「減配なし、配当維持もしくは増配のみ」を明確な方針として、企業の持続的な価値向上と長期的な株主還元にコミットメントする。具体的には「株主資本配当率(DOE)3%以上」を基準としている。2020年2月期の1株当たり配当金は年間7円(前期と同額)と維持した。配当性向は41.5%、株主資本配当率(DOE)は3.4%だった。同社は、長期VISION「いちご2030」において、機動的な自社株買いを掲げ、株主価値の向上策への積極的姿勢を打ち出している。この方針に沿って、2017年2月期に30億円、2018年2月期にも30億円と自社株買いを実施してきた。2020年2月期も、2019年の7月−11月に総額約30億円分の自社株を取得した。自社株買いも勘案した総還元性向では77.7%(2020年2月期)に達する。2021年2月期に関しては、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による不動産業界への影響が現時点では不透明であることから、次期の連結業績予想をレンジで設定し、配当予想を未定としている。
■Key Points
・主力の心築事業では不動産価値向上ノウハウが強み。中小型のオフィス、レジデンス、ホテル、商業施設などのポートフォリオが特徴
・2020年2月期は物件売却好調により過去最高益の営業利益を更新。新型コロナウイルスの影響リスクをバランスシートにいち早く織り込み、特損計上
・2021年2月期は営業利益62億円〜129億円のレンジ予想。潤沢なストック収益により売却益に依存しない戦略が取れるのが強み
・“徹底したキャッシュ・フロー経営”と“強固な収益基盤・財務基盤”により、新型コロナウイルスによる急激な環境変化に対応
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
<EY>