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Jトラスト Research Memo(8):アジア金融事業を中心に発展を目指す成長戦略に変更なし

注目トピックス 日本株
■Jトラスト<8508>の中長期の成長戦略

IFRS転換が遅れたことに加え、韓国及びモンゴル金融事業では負ののれんの処理や当局の規制強化の影響、東南アジア金融事業では不良債権処理の影響、投資事業ではGL関連損失処理の影響などから、結果として前中期経営計画(2016年3月期〜2018年3月期)は予定どおりには進まなかった。現在、新たな中期経営計画の発表はないが、会社として投資家に中期的な利益目標を示すことは非常に重要であると弊社では考える。

2019年3月期には、東南アジア金融事業、投資事業の損失に伴い大幅な営業損失計上を余儀なくされたが、不良債権を前倒しで一括処理したことで、今後の不安材料はなくなった。この結果、2019年12月期には小幅ながら営業黒字に転じ、本格的な業績回復を目指す第一歩を踏み出した。現在は新型コロナウイルスの影響が懸念されているが、今後も主力の金融3事業が中心となり、グループ全体の収益拡大を図るとするビジネスモデルに変更はない。

それに伴い同社グループでは、金融主要3事業の今後の成長戦略として、以下のように計画している。

まず、日本金融事業では、引き続き信用保証事業と債権回収事業により、安定的な利益を稼ぐ計画だ。そのために、地方銀行とのコラボレーションの推進、クラウドファンディング保証など保証商品の多角化、在留外国人向け「グローバルカード」の発行等を実施する。

足元では、金融機関の審査基準が厳格化していることなどから、当面はアパートローンの保証残高は増加を期待しにくい環境にある。こうした環境下、日本保証では、新たな保証商品としてインターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達するクラウドファンディング商品の保証を開始した。日本保証の保証付きクラウドファンディング商品を3本リリースしたところ好評で、すべて即時完売となった。さらに、日本国内での保証提携先金融機関も10社になり、こうした提携先の拡大や商品の多様化により、今後も保証残高を積み上げる計画だ。

また、Jトラストカードでは、2020年2月3日に、国内の就労外国人や留学生を対象に「Jトラストグローバルカード」をリリースした。このカードは、デポジット(保証金)を入れることで、銀行口座がなくても申し込みができる「在留外国人専用」の新しいクレジットカードで、訪日間もなくコミュニケーションに不安がある在留外国人でも安心して利用できるよう、8ケ国語に対応している。デポジットの範囲内でカード決済が可能であるため、通常はカード発行が困難な就労外国人のニーズを充足するものとして、今後の成長が期待される。

韓国及びモンゴル金融事業でも、貯蓄銀行業に対する規制強化の影響を抑えつつ、債権回収事業とも合わせて安定的な利益を確保するため、デフォルトリスクを最小限にとどめ、高利益率を追求するとともに、更なる上限利率低下にも対応する盤石なアセットの積み上げを図る。

韓国では、モバイルアプリをリニューアルし、個人向けの顧客の利便性を高め、サービスの向上と債権の「質」の向上を目指している。また、JT親愛貯蓄銀行では、ファーストブランド大賞を5年連続受賞するなど、消費者満足度“最高評価”を獲得しているが、顧客満足度維持のため、引き続きコンプライアンス等の社内教育を徹底する方針だ。

また、JT貯蓄銀行が、ソウル経済新聞が主催する2020年大韓民国ベストバンクで『ベスト貯蓄銀行賞』を受賞したことは、同行の先進的な顧客サービスが評価された結果と言えるだろう。

一方、現状は損失計上を続けている東南アジア金融事業については、インドネシアでは事業継続のための土台整備を2019年12月期までに完了したことで、今後は優良なアセットの積み上げと債権回収の推進を図る。また、新たに加わったカンボジアでは、顧客層を徐々に広げてアセット増加を図る。これらの施策によって、東南アジア金融事業も2021年12月期からは黒字化し、今後はグループ全体の成長を加速する原動力となる期待が大きい。

インドネシアでは、再建中のBJIは今後良質なアセットの増加と債権回収を推進し、早期黒字化の達成を目指す。そのために、BJIでは日系企業等の優良企業への貸付や高格付社債への投資を増加する。また、JTOでは農機具や中古車など、担保付きリテール融資を推進し、BJIとのジョイントファイナンス貸付を拡大する。既に、(株)さわやか倶楽部との協業による学資ローン(日本での就労や技術習得を希望するインドネシア人学生に向け、高度な日本語能力習得を目的とした教育ローン)の積み上げや、2018年より積極的に推進し始めた農機具ローンの販売(2019年12月期末時点で累計700台販売)などの成果が現れている。また、ジャパンコリアデスクを強化し、日本・韓国の現地法人向けに融資を拡大する。今後もデフォルトリスクの少ないアセットを増加することで、貸出残高を2019年12月期末の491億円から、2023年12月期末には2,021億円への拡大を目指している。

加えて、2019年12月期より同社グループに加わったJTRBは、カンボジア商業銀行中10位の資産規模を持ち、資産内容の良い優良銀行で、安定的に年間30億円超の営業利益を計上しており、今後、グループへの利益貢献が期待される。JTRBでは、従来は上位1%の企業や上位5%の個人等、超優良顧客のみを対象としていたが、今後は法人では大企業から中堅企業まで、また個人は住宅ローンを中心に顧客層の拡大を図る方針である。その与信審査には日本からのオフィサーが担当することから、ミドルリスク層に展開する一方で不良債権比率を抑えながら収益を拡大する計画である。カンボジア中央銀行によると、2020年のカンボジアの実質GDP成長率は7%強と推計されており、資金需要は旺盛である。そうした環境を背景に、同社グループでは、スピードとバランスが取れたリスク/リターンによって、営業収益成長率26%を目指している。2020年4月には、JTRBと生命保険会社AIAカンボジア支社とのシステム統合が完了した。AIAグループは、香港に本社を置き、アジア・オセアニアで広く業務を行う総資産2,300億ドルに達する大手保険グループであり、このシステム統合はJTRBが高い評価を受けている一例と言えるだろう。

今回の新型コロナウイルス感染拡大に対応して、同グループではカンボジアやインドネシアなど各国の拠点で、いち早くマスクや消毒アルコールを送るなどの支援を実施している。このような支援活動は、地元に根差して共に発展を目指す、同グループの経営姿勢を示すものである。

このように、同社グループは成長可能性が大きい東南アジア金融事業を原動力に、持続的な成長を目指している。足元では新型コロナウイルスの影響が懸念されるものの、同社グループでは上述した地域別の事業戦略を着実に実現する方針である。長期的には、インドネシアの金融事業が業績を回復し、カンボジアでの銀行事業で成長を図ることで、グループ全体の増収増益基調をけん引すると期待される。同社では、将来的には、さらにラオスやミャンマーなどへの進出も考えていると見られる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)




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