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ネットイヤ Research Memo(6):NTTデータとの協業戦略が順調に進んでおり成長ポテンシャルが高まる

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

2. 成長戦略
(1) NTTデータとの協業戦略
今後のネットイヤーグループ<3622>の成長戦略において、NTTデータとの協業は重要な鍵を握るものと弊社では見ている。既述のとおり、NTTデータの強みであるシステム開発力と顧客基盤に、同社のCX視点でのオウンドメディアのデザイン設計力を合わせることで、大企業等向けを中心に大きく受注を伸ばせる可能性があるためだ。実際、2020年3月期には10数件のプロジェクトを受注し、売上規模も4億円を超える規模に拡大している。

2019年6月より、NTTデータから林田敏之(はやしだとしゆき)氏が代表取締役副社長として就任しており、受注獲得のキーパーソンとなっている。林田氏はNTTデータのITサービス・ペイメント事業本部の出身で、同事業部との協業案件の受注獲得に取り組んでいる。ITサービス・ペイメント事業本部では主にBtoC企業向けの金融決済システムなどのソリューション開発を手掛けており、オウンドメディアのデザイン開発に強みを持つ同社との親和性は高い。現在、林田氏は社長と共に週1回のペースでNTTデータと情報交換を行い、新規案件に関して協業の可能性を探るなど積極的に動いており、今後も協業案件が増加していくものと予想される。同社では今後、NTTデータと協業しながら互いの強みを融合することで、デジタルマーケティング業界でのトップブランドを目指していく考えで、中期的にNTTデータ向けの売上構成比率も上昇していくものと予想される。NTTデータとの具体的な協業戦略については以下のとおりとなる。

a) 共同ブランディング/マーケティング
同社が強みを持つCXのデザイン設計と、システム開発の技術力で強みを持つNTTデータが組むことで、理想のCXを実現するシステム、あるいは難易度の高い複数部門にまたがる大型プロジェクトを成功に導くことができると考えている。特に「マーケティング×コマース×ペイメント」の領域において両社の強みが発揮できると見られ、こうした事例を積み重ねることで、業界トップのブランディングを確立していく。また、クライアントの未来をデザインする事例の創出にも取り組んでいく。

b) デジタルマーケティング事業の拡大
NTTデータの顧客に対して、同社のデジタルマーケティングサービスを提案し、逆に同社の顧客に対して、NTTデータのシステムソリューションを提案するなど相互の顧客紹介により、デジタルマーケティング事業の売上げ拡大を目指す。

c) AI・ビッグデータを使った新規事業・新ソリューションの開発
NTTデータが持つAI・ビッグデータに関する基礎技術力に、同社のCXのノウハウを融合させ、マーケティング業界及び小売業界に向けたソリューションを開発していく。

具体的な事例として、2019年にレジ支払いの不要なデジタル店舗導入の1stフェーズとして、実験店舗を活用した体験型ワークショップメニューをNTTデータと共同で開発・提供した。今回の目的はUX/EX(ユーザー体験/従業員体験)がデジタル店舗になってどう変化するかの体験を通して、その有用性や実現性、導入に向けた課題を確認し、今後のアクションを具体化することにある。同社はUX/EXのデザイン設計を担当し、今回の実験店舗で蓄積したノウハウを今後の受注活動に生かしていくことにしている。

d) デジタル人材が集まる働きがいのある職場づくり
同社の柔軟性・構想力と、NTTデータの信頼性・技術力を融合させたユニークで働きやすい職場づくりに取り組んでいくほか、両社の人材交流によるノウハウの共有を図っていく。また、NTTデータの人材育成プログラムを活用することも考えている。

そのほか、同社独自の取り組みとして、2020年4月より新しい人事制度「カケモチ社員制度」を導入している。同社は創業から副業制度の活用による主体的なキャリア形成を奨励してきたが、今回の制度ではカケモチ社員は個々で業務の目標を設定し、就業時間にとらわれることなく自由に兼業でき、また、正社員と同様、保険制度や福利厚生制度も利用できる仕組みとなっている。今回の新たな制度導入によって、社内人材の活性化と社外から専門性の高い人材が集まってくることを同社では期待している。

(2) 2022年に向けた中期ビジョン
同社は2022年に向けた中期ビジョンとして「人の体験を劇的に変革することでビジネスと社会をデザインする会社」を掲げた。同社サービス領域を、「CX変革のデザインをすること」「理想のCXを実現するための仕組みを構築すること」「CXを継続的に改善していくためのマーケティング運用を行うこと」の3つの領域に再定義し、これらをシームレスに提供し、また各ソリューションをパッケージ化してプロダクトとして提供することで収益性の向上を図っていく戦略だ。

現在、売上高の約8割は「CXを実現する仕組みの構築」領域、つまりオウンドメディアやDMP(Data Management Platform)、MAツールの設計・構築など労働集約的な領域で占められている。同領域に関しては今後、作業の標準化やオフショア・ニアショアの活用などによって低コスト化に取り組んでいく方針となっている。

また、売上高の1割強を占める「マーケティング運用」については、今後注力していく領域となっており、需要が旺盛なSalesforce製品の導入支援後の運用、並びに顧客企業の成果にコミットする付加価値の高い「マーケティング運用サービス」の拡販を進めていく方針だ。運用サービスはストック型ビジネスのため、導入社数が広がれば安定収益基盤として同社の業績を下支えしていくことになる。

同社が強みとする「デザイン」領域については、デジタルとリアルを含めた総合的なCX対応力の強化やサービスデザインの強化などに取り組んでいく。売上比率は低いものの付加価値の高い領域であり、受注獲得の差別化要因となる領域であるだけに、人員体制の強化も進めながら事業規模の拡大を目指していく。同社ではこれら3つの領域のソリューションをパッケージにして、標準サービスとして提供することでも収益性の向上に取り組んでいく考えだ。

また、顧客企業のデジタルマーケティング施策において、商品・サービスの認知から興味・関心、検索、購買、共有、リピートに至る消費者行動のすべてのプロセスで必要となるサービスをシームレスに提供することで、顧客に対する「価値の最大化」を図っていく。マーケティング施策の分野ではSNSマーケティングで強みを持つ子会社のトライバルメディアハウスとの協業も考えられ、今後の展開が注目される。

なお、中期ビジョンにおける具体的な経営数値目標は開示していないものの、デジタルマーケティング領域については今後も年率2ケタ成長が見込まれることから、同社の売上高も10%以上を目指しているものと思われる。2021年3月期については新型コロナウイルス感染症による影響で不透明感があるものの、NTTデータとの協業案件の獲得や、社内の人的リソースの強化が順調に進めば、業績は2022年3月期以降本格的な成長局面に入るものと弊社では予想している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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