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アドクリ Research Memo(2):国内最大級の保険選びサイト「保険市場」を運営する独立系保険代理店の大手(1)

注目トピックス 日本株
■事業概要

1. 事業の内容
アドバンスクリエイト<8798>は保険代理店事業、ASP事業、メディア事業、再保険事業の4つの事業を展開している。事業別の構成比(2020年9月期第2四半期累計実績)で見ると、保険代理店事業が売上高の72.5%、営業利益の75.5%を占める主力事業となっているが、2013年9月期の時点では売上高、営業利益ともに保険代理店事業が90%以上を占めていたことからすると、この数年間でメディア事業や再保険事業が成長し、また、新たに保険代理店事業から分離したASP事業も育ち始めるなど収益ポートフォリオの多様化が進んでいる。連結子会社としては、メディア事業を展開する(株)保険市場と再保険事業を展開するAdvance Create Reinsurance Inc.の2社がある。

(1) 保険代理店事業
保険代理店事業では、同社の保険選びサイト「保険市場」を通じて資料請求や問い合わせなどがあった見込み客に対して、通信販売やネット完結型の非対面販売、同社直営店舗であるコンサルティングプラザ「保険市場」での対面販売、提携代理店での販売など多様な販売チャネルを通じて、保険商品の販売を行っている。

販売する保険商品は生命保険や損害保険、少額短期保険など個人が利用する保険商品のほか、法人向け保険商品も取り扱っており、2020年5月時点の「保険市場」での取扱保険会社数は84社(生命保険27社、損害保険29社、少額短期保険28社)、保険商品数では200点を超え業界最大規模を誇っている。

保険代理店事業における売上げの主な内容は、保険会社から支払われる手数料収入となる。保険契約者が保険会社に支払った保険料に対して、定められた手数料率を乗じたものが保険会社から同社に支払われる。生命保険など支払いが複数年にわたるものは、初年度と次年度以降で手数料率が変動するタイプの商品もある。手数料率に関しては、会社ごと、保険商品ごとに様々だが、傾向的には貯蓄性の高い商品の手数料率が低く、逆に掛け捨て型の商品は高くなる。

なお、提携先の代理店で販売契約したものに関しては、手数料収入を約半分ずつにシェアする格好となるが、販売契約のための人件費等が掛からないため、利益率は直営店で販売した場合と比較して大きく変わらない。

販売拠点としては、2020年9月期第2四半期末時点で直営店が12拠点、提携代理店社数が92社569店舗となっている。直営店に関しては、交通至便な都市部のランドマーク的ビルに出店し、金融商品に対するリテラシーが高いアッパーミドル層を中心に販売していく戦略で、営業スタッフは2020年3月時点で120名程度となっている。また、直営店でカバーしきれないエリアの見込み顧客に対しては、提携代理店に送客している。提携代理店社数に関しては、改正保険業法の施行(2016年5月)後も各社のガバナンスやコンプライアンス体制、セキュリティ管理体制等のチェックを継続して実施したため施行前(2015年9月期末時点)の170社から2018年9月期末時点で78社まで減少していたが、直近では再び増加傾向に転じている。他の代理店でも情報セキュリティ管理体制が整備されてきたことや、ASPサービスの導入を契機に提携代理店となるケースが増えていることが要因と見られる。また、提携代理店における保険募集人についても前期末の5.6万人から5.7万人と増加傾向にあり、販売ネットワークの拡充が進んでいる。

(2) ASP事業
ASP事業では、salesforce.comのクラウドサービスを活用して自社開発・利用してきた顧客管理システム「御用聞き」(2018年11月販売開始)や顧客情報一括登録システム「丁稚(DECHI)」(2019年6月販売開始)などを保険代理店向け等に外販する事業となる。

「御用聞き」の特徴は、クラウドサービスにより低コストで利用が可能なこと、保険業法や個人情報保護法等の関係法令に準拠しており、スムーズな顧客情報の管理・共有が可能なこと、各保険商品の手数料データの取込みと比較・分析ができること、歩合外務員の歩合率を設定する機能や報酬計算機能などを備えていること、などが挙げられる。乗合代理店では多くの保険商品を取り扱っており、保険商品ごとに手数料やインセンティブが異なるなど複雑な仕組みとなっている。業務効率の面から利便性の高い顧客管理システムが求められており、同社システムの潜在需要は大きいと言える。

また、「丁稚」は同社が構築する共通プラットフォームシステム「ACP(Advanced Create Cloud Platform)」と保険会社の基幹システムを連携させることで、複数社にまたがる保険商品の申込み手続きを一度の入力で完結でき、入力時間の短縮と入力間違い等のミスを防ぐだけでなく、顧客の待ち時間も短縮できるなど、乗合代理店にとって生産性並びに顧客満足度の向上につながるサービスとなっている。また、「丁稚」は「御用聞き」を利用していない代理店でも自社のCRMシステムを「ACP」と連携することで利用が可能となっている。2020年中頃には顧客の契約状況照会システム「番頭(BANTO)」も販売を開始する予定であり、2020年5月末時点で連携している生命保険会社は14社となっており、今後も連携先を広げていくことで利便性を高めていく方針だ。

販売ターゲットは提携代理店のほか、複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店や他の金融機関となる。保険募集人の数は国内で100万人規模となり、このうち乗合代理店で数十万人規模、同社の提携代理店だけでも5.7万人の規模となる。料金は月額課金制でIDごとに数千円/月の水準となっており、現在の平均売上単価は約3千円/月と見られる。注目すべき点は同システムが社内利用を目的に開発されたため、開発費負担がほとんどかからず高い収益性が期待できることにある。ASP事業の費用としては、営業の人件費を保険代理店事業と按分して計上しているほか、開発費の一部(外販用の機能のみ)を計上している。競合サービスとしては、NTTデータ<9613>が2002年より販売している「保険会社共同ゲートウェイ」があるが、積極的に売り込んでいるわけでもなく、今のところ同社にとって脅威とは見ていないようだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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