日本調剤 Research Memo(6):調剤薬局事業は増収も、新型コロナの影響で20億円強の減益要因を織り込む
[20/06/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■日本調剤<3341>の2021年3月期の業績見通し
2. 事業セグメント別見通し
2021年3月期の事業セグメント別見通しでは、調剤薬局事業が増収減益、医薬品製造販売事業が増収増益、医療従事者派遣・紹介事業が減収減益を見込んでいる。
(1) 調剤薬局事業
調剤薬局事業の業績は、売上高で前期比8.7%増の251,141百万円、営業利益で同12.0%減の8,606百万円を見込む。当初は増収増益で計画していたが、3月、4月と新型コロナウイルス感染拡大の影響が見られたことで、4月中旬になって急遽計画の見直しを行い、4月の状況が6月まで続くことを前提とした計画となっている。新型コロナウイルスの感染拡大で病院の外来患者数が減少したこと、また、処方期間も長期化したことが処方箋枚数の減少につながっている。
同社は新型コロナウイルス感染拡大による影響額として、第1四半期に売上高で40億円弱、営業利益で20億円強のマイナス影響を織り込んだ。売上高の減少に対する利益の減少度合いが大きく見えるのは、処方箋枚数の減少によるところが大きい。理由として調剤薬局の売上高の仕組みは、大きく薬剤料と技術料とに分けられており、薬剤料については処方期間が長期化しても年間ベースでは影響を受けにくいが、技術料は処方箋1枚に対して料金が定められているため、処方箋枚数の落ち込みが直接、売上高及び利益の減少に直結するためだ。
同社の処方箋枚数は2020年3月期の実績で約1,470万枚、処方箋1枚当たりの平均単価は15,479円だった。処方箋単価の内訳は開示されていないものの、このうち技術料は2千円台半ばの水準と推察される。売上に占める比率は低いものの、薬剤料に仕入れコストが入っていることを考えれば、利益面での技術料の影響は大きくなる。技術料は前述したように2年に1度の調剤報酬改定によって細かく評価基準と点数が店舗ごとに決められており、その点数の合計が処方箋1枚につき付加される仕組みとなっている。つまり、処方箋枚数の増減が利益の増減にほぼ直結することを意味している。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を見ると、2020年3月は処方箋枚数が会社計画に対して5%強減少した。4月は緊急事態宣言が発令されたこともあり、当初の計画に対して20%弱の減少が見られたという。この4月の状況が6月まで続く前提とし、処方箋枚数は当初の計画から20%強引き下げた計画になっている。
これに技術料(2千円台半ば)をかけ合わせた結果が、営業利益のマイナス影響額になる。5月も4月とほぼ状況は変わりないが、6月は緊急事態宣言が解除されたこともあり、病院の受診者数もやや回復(=処方箋枚数が回復)する可能性はあるが、7月以降に感染拡大の第2波が到来すれば、また、受診者数が減少する可能性もあり、第2四半期以降の業績についてはその状況次第となる。
なお、新規出店に関しては自力出店を中心に年間50店舗ペースを目指し、立地場所など良い条件のM&A案件が出てくれば、前向きに検討していく方針に変わりない。2021年3月期の増収要因としては、前期に新規出店した店舗の増収効果が大きい。また、2020年4月に調剤報酬と薬価改定が行われたが、全体の影響は軽微だったようだ。薬価は若干程度下がったものの、技術料の平均単価がやや上昇する見込みで薬価下落分をカバーする。
第1四半期の売上高については前年同期比で横ばいまたは微減が見込まれる。処方期間長期化の影響で処方箋単価は前年同期比で20%程度上昇するものの、枚数については新店効果があっても同15%程度減少する可能性がある。利益面では調剤技術料収入の減少が響き大幅減益になると弊社では予想している。
(2) 医薬品製造販売事業
医薬品製造販売事業の業績は、売上高で前期比7.9%増の46,470百万円、営業利益で同12.2%増の1,459百万円となる見通し。2020年4月の薬価改定の影響が2%程度の減収要因となるが、前年途中に販売を開始した22品目(6月に8品目、12月に14品目)の売上が通年で寄与するほか、2020年も新たに25品目前後の販売を予定している。特に、6月に販売開始予定の品目については売上規模が見込める後発医薬品であることから、増収に貢献するものと予想される。
2018年より稼働を開始したつくば第二工場の稼働率上昇効果等により、売上総利益率は前期の14.1%から15.2%に上昇する見込み。研究開発費が前期の2,991百万円から3,487百万円に増額するなど販管費の増加を見込んでいるため、営業利益率は前期の3.0%から3.1%と若干の改善にとどまる予想となっているが、従来から取り組んでいる収益性を重視した販売戦略が確実に進められていることもあり、売上高が計画通り推移すれば利益の上振れ余地はあると弊社では見ている。
(3) 医療従事者派遣・紹介事業
医療従事者派遣・紹介事業の業績は、売上高で前期比6.8%減の11,855百万円、営業利益で同8.8%減の1,687百万円となる見通し。前述したとおり、同事業においても新型コロナウイルス感染拡大の影響が出ており、薬剤師や医師の紹介需要が落ち込んでいる。地域の病院・診療所、薬局では受診者数の減少で経営状況が厳しくなっており、薬剤師派遣については契約期限が3月、4月で切れるものについて、通常なら更新されたものが、今回は契約終了となるケースが多かったという。このため、同事業セグメントも短期的な業績悪化は避けられそうにない。
ただ、医療機関や薬局などは生活インフラの重要基盤の1つであり、市場環境が正常化すれば回復することが予想される。同社では今下期以降に回復することを前提に、通期の売上総利益は前期比2.9%増の5,562百万円と増益で見込んでいる。売上総利益率の改善は紹介事業の構成比が上昇することによる。ただ、販管費を前期比9.1%増、322百万円増額となることから、営業利益段階では減益の計画となっている。販管費では、医師紹介事業の認知度向上のための広告宣伝費などを積極投下していく予定となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 事業セグメント別見通し
2021年3月期の事業セグメント別見通しでは、調剤薬局事業が増収減益、医薬品製造販売事業が増収増益、医療従事者派遣・紹介事業が減収減益を見込んでいる。
(1) 調剤薬局事業
調剤薬局事業の業績は、売上高で前期比8.7%増の251,141百万円、営業利益で同12.0%減の8,606百万円を見込む。当初は増収増益で計画していたが、3月、4月と新型コロナウイルス感染拡大の影響が見られたことで、4月中旬になって急遽計画の見直しを行い、4月の状況が6月まで続くことを前提とした計画となっている。新型コロナウイルスの感染拡大で病院の外来患者数が減少したこと、また、処方期間も長期化したことが処方箋枚数の減少につながっている。
同社は新型コロナウイルス感染拡大による影響額として、第1四半期に売上高で40億円弱、営業利益で20億円強のマイナス影響を織り込んだ。売上高の減少に対する利益の減少度合いが大きく見えるのは、処方箋枚数の減少によるところが大きい。理由として調剤薬局の売上高の仕組みは、大きく薬剤料と技術料とに分けられており、薬剤料については処方期間が長期化しても年間ベースでは影響を受けにくいが、技術料は処方箋1枚に対して料金が定められているため、処方箋枚数の落ち込みが直接、売上高及び利益の減少に直結するためだ。
同社の処方箋枚数は2020年3月期の実績で約1,470万枚、処方箋1枚当たりの平均単価は15,479円だった。処方箋単価の内訳は開示されていないものの、このうち技術料は2千円台半ばの水準と推察される。売上に占める比率は低いものの、薬剤料に仕入れコストが入っていることを考えれば、利益面での技術料の影響は大きくなる。技術料は前述したように2年に1度の調剤報酬改定によって細かく評価基準と点数が店舗ごとに決められており、その点数の合計が処方箋1枚につき付加される仕組みとなっている。つまり、処方箋枚数の増減が利益の増減にほぼ直結することを意味している。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を見ると、2020年3月は処方箋枚数が会社計画に対して5%強減少した。4月は緊急事態宣言が発令されたこともあり、当初の計画に対して20%弱の減少が見られたという。この4月の状況が6月まで続く前提とし、処方箋枚数は当初の計画から20%強引き下げた計画になっている。
これに技術料(2千円台半ば)をかけ合わせた結果が、営業利益のマイナス影響額になる。5月も4月とほぼ状況は変わりないが、6月は緊急事態宣言が解除されたこともあり、病院の受診者数もやや回復(=処方箋枚数が回復)する可能性はあるが、7月以降に感染拡大の第2波が到来すれば、また、受診者数が減少する可能性もあり、第2四半期以降の業績についてはその状況次第となる。
なお、新規出店に関しては自力出店を中心に年間50店舗ペースを目指し、立地場所など良い条件のM&A案件が出てくれば、前向きに検討していく方針に変わりない。2021年3月期の増収要因としては、前期に新規出店した店舗の増収効果が大きい。また、2020年4月に調剤報酬と薬価改定が行われたが、全体の影響は軽微だったようだ。薬価は若干程度下がったものの、技術料の平均単価がやや上昇する見込みで薬価下落分をカバーする。
第1四半期の売上高については前年同期比で横ばいまたは微減が見込まれる。処方期間長期化の影響で処方箋単価は前年同期比で20%程度上昇するものの、枚数については新店効果があっても同15%程度減少する可能性がある。利益面では調剤技術料収入の減少が響き大幅減益になると弊社では予想している。
(2) 医薬品製造販売事業
医薬品製造販売事業の業績は、売上高で前期比7.9%増の46,470百万円、営業利益で同12.2%増の1,459百万円となる見通し。2020年4月の薬価改定の影響が2%程度の減収要因となるが、前年途中に販売を開始した22品目(6月に8品目、12月に14品目)の売上が通年で寄与するほか、2020年も新たに25品目前後の販売を予定している。特に、6月に販売開始予定の品目については売上規模が見込める後発医薬品であることから、増収に貢献するものと予想される。
2018年より稼働を開始したつくば第二工場の稼働率上昇効果等により、売上総利益率は前期の14.1%から15.2%に上昇する見込み。研究開発費が前期の2,991百万円から3,487百万円に増額するなど販管費の増加を見込んでいるため、営業利益率は前期の3.0%から3.1%と若干の改善にとどまる予想となっているが、従来から取り組んでいる収益性を重視した販売戦略が確実に進められていることもあり、売上高が計画通り推移すれば利益の上振れ余地はあると弊社では見ている。
(3) 医療従事者派遣・紹介事業
医療従事者派遣・紹介事業の業績は、売上高で前期比6.8%減の11,855百万円、営業利益で同8.8%減の1,687百万円となる見通し。前述したとおり、同事業においても新型コロナウイルス感染拡大の影響が出ており、薬剤師や医師の紹介需要が落ち込んでいる。地域の病院・診療所、薬局では受診者数の減少で経営状況が厳しくなっており、薬剤師派遣については契約期限が3月、4月で切れるものについて、通常なら更新されたものが、今回は契約終了となるケースが多かったという。このため、同事業セグメントも短期的な業績悪化は避けられそうにない。
ただ、医療機関や薬局などは生活インフラの重要基盤の1つであり、市場環境が正常化すれば回復することが予想される。同社では今下期以降に回復することを前提に、通期の売上総利益は前期比2.9%増の5,562百万円と増益で見込んでいる。売上総利益率の改善は紹介事業の構成比が上昇することによる。ただ、販管費を前期比9.1%増、322百万円増額となることから、営業利益段階では減益の計画となっている。販管費では、医師紹介事業の認知度向上のための広告宣伝費などを積極投下していく予定となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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