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サン電子 Research Memo(1):新経営体制へ移行したものの、方向性に大きな変更はない

注目トピックス 日本株
■要約

1. 会社概要
サン電子<6736>は、情報通信関連事業とエンターテインメント関連事業を2本柱とするIT機器メーカーである。2007年に買収したイスラエルのCellebrite DI Ltd.(旧 Cellebrite Mobile Synchronization Ltd. 以下、Cellebrite)が展開する携帯端末関連機器が、米国市場中心からグローバル展開へと大きく成長してきた。特に、世界中で需要が拡大している犯罪捜査機関(以下、DI※)向けが同社の成長をけん引している。一方、厳しい事業環境に置かれているエンターテインメント関連事業は減退傾向にあるものの、創業時から脈々と受け継がれるベンチャースピリッツと開発力を武器として、実証実験を含む導入事例が増えてきたM2MやAR関連(AR技術を生かした業務支援ソリューション)など、情報通信分野における新たな成長市場への参入にも取り組んでいる。2019年6月には、Cellebriteが第三者割当増資により約122億円の資金調達を実施。成長分野であるDI領域において、確固たるリーディングポジションを確立するとともに、総合的なプラットフォーマーとして成長を加速する考えである。2020年4月開催の臨時株主総会を経て、新たな経営体制へと移行したものの、今後の方向性に大きな変更はないとみられる。

※Digital Intelligenceの略。裁判等の証拠に用いられるデータ抽出やデータ分析等を展開している。


2. 2020年3月期の業績
2020年3月期の業績は、売上高が前期比3.9%増の26,220百万円、営業損失が2,252百万円(前期は200百万円の損失)と増収ながら一過性費用により損失幅が大きく拡大した。売上高は、モバイルデータソリューション事業において、円高やMLCの売却というマイナス要因があったものの、需要が拡大しているDIが欧州等を中心に好調に推移し、増収を確保した。また、エンターテインメント関連事業及び新規IT関連事業についても前期の落ち込みから一定の回復を図っている。損益面では、Cellebriteによる第三者割当増資に関連する諸経費(約22億円)が利益を大きく圧迫し、損失幅が拡大した。もっとも、その要因を除けば、各事業で損益改善が進みつつあり、その点は評価できるポイントと言える。また、活動面でも、Cellebriteによる大型増資を始め、アップル向けのPCフォレンジックに特徴を持つBlackBag Technologies Inc.(以下、BB)を完全子会社化するなど、DIの成長加速に向けて積極的な事業展開を図っている。

3. 2021年3月期の業績予想
2021年3月期の業績予想について同社は、コロナ禍の影響を合理的に算定することが困難な状況にあることから、現時点で未定としている。ただ、コロナ禍の影響等を踏まえ、攻めから守りの予算への組み替えを予定している。また、テレワーク時代に合わせた体制の構築(リモート関連サービス・機能の強化等)にも取り組んでいく方針である。

4. 成長戦略
同社の中期的な成長戦略は、これまでのDIやM2M等に加えて、需要拡大が予想されるセキュリティビジネスの立ち上げやAR関連などの新たな成長ドライバーの確立により、成長を加速するものである。弊社でも、既にリーディングカンパニーとして世界開拓を進めているDIはもちろん、圧倒的な技術力と遠隔支援中心のソリューション型にビジネスモデルを転換し成長を目指すAR関連、同社ならではのソリューション提供により裾野拡大への対応を図るM2M関連が、市場の拡大とともに同社の成長をけん引する可能性が高いとみている。新たな経営体制のもと、DI事業の拡大や事業ポートフォリオの再構築により、いかに成長加速と収益性向上を実現していくのか、今後の動向に注目していきたい。

■Key Points
・2020年3月期は増収ながらCellebriteの増資関連費用等により損失幅が大きく拡大
・Cellebriteによる第三者割当増資により約122億円の資金調達を実現。M&Aの積極活用によりDI領域における総合的なプラットフォーマーとして成長を加速する戦略
・2020年4月開催の臨時株主総会を経て、新たな経営体制へ移行。ただ、今後の方向性に大きな変更はないとみられる
・2021年3月期の業績予想はコロナ禍の影響等により合理的な算定が困難なことから現時点では未定

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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