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サン電子 Research Memo(10):新経営体制へ移行するも、引き続きDIへ経営資源を集中していく見込み

注目トピックス 日本株
■サン電子<6736>の成長戦略

2020年4月開催の臨時株主総会により、新たな経営体制へ移行したものの、開示資料等から判断して、今後の方向性に大きな変更はないものとみられる。すなわち、これまで同様、情報通信関連分野のグローバル展開によって成長を加速する戦略と捉えることができる。特に、犯罪捜査におけるデジタル・インテリジェンス分野のリーディングカンパニーとして世界市場の開拓を進めていくため、経営資源の選択と集中を進めていく方針である。また、エンターテインメント関連事業については安定運営を継続する一方、成長性の見込めるセキュリティビジネスの立ち上げやM2M、AR関連の強化など、将来性や収益性の観点から事業ポートフォリオの再構築にも取り組む。ただ、厳しい環境下において、まずは守りの経営を推進する考えであり、これまで掲げてきた2023年3月期の売上高目標を400億円以上(CAGR15%以上)から350億円(CAGR10%)に下方修正した。

1. モバイルデータソリューション事業
成長性の高いDI向けに経営資源を集中することにより、世界的な需要の拡大を自らの成長に取り込む戦略である。特に、独自技術を生かしたデータ抽出の対象機種数を拡大するとともに、インターポールとのパートナー契約締結を始めとしたトレーニングプログラムの充実や、新製品・新サービスの開発(UFEDの優位性が生かされる機能の強化)などにより事業拡大を目指す。また、中長期的にはポテンシャルの大きいデータ分析(AIや機械学習の活用による犯罪捜査の効率化等)やデータ管理の領域へ拡充を図り、持続的な成長を実現する。特に、今回の増資資金をM&Aに生かすことで、DI領域における総合的なプラットフォーマーとして必要となる事業や技術を獲得し、リーディングカンパニーとして確固たるポジションを確立していく戦略である。

2. エンターテインメント関連事業
新たな映像コンテンツにより、アミューズメントの幅を広げる方向性にも取り組んでいく。具体的には、MVR※シリーズの展開により、「商業施設」や「集客施設」を対象として「体験できる仮想のエンターテインメント空間」を作り出し、来店客向けに最高のエンターテインメントを提供していくものである。基本システムをベースに「3Dモデル」「モーション」「ゲームルール」のデータ差し替えによって、共通のシステムを使用しながら、ゲーム性の異なるコンテンツを体験でき、コストパフォーマンスや収益性にも優れた事業モデルを計画しているようだ。

※Multirole Virtual Realityの略。多目的用途に対応するVRシステム。


3. M2M
M2Mについては、需要拡大に対応するための製品ラインナップの強化を図るとともに、BacsoftのIoTプラットフォームとの連携によるトータルソリューション化により差別化を実現する戦略である。特に、「おくだけセンサー」の拡販による成長加速に注力していく。まだ汎用性や手軽さを強みとする「おくだけセンサー」の本格的な導入には至っていないが、今後の切り札としての期待は大きい。また、デバイスマネジメントサービス(ルータや後位端末死活監視、電源制御サービス等)などを通じてRoosterの競争力を高め、大型案件の受注向上にも取り組む。

4. AR関連
「AceReal」については、産業用向け業務支援システムとしての強みを生かし、産業界の改善に特化した製品を開発するとともに、実証実験を重ねている。遠隔支援中心のソリューションに転換して成長を目指す戦略である。特に、土木・建設、保守・点検、製造・物流、インフラ(鉄道、航空、発電)、医療、警備・セキュリティ分野をターゲットにしているようだ。今後は、マルチデバイス対応により、ソリューション中心のビジネスモデルへの転換(機器販売からソフトウェア提供によるサービス売上を軸とした展開)を図っていく。

5. O2Oソリューション
引き続き、テイクアウト予約決済アプリ「iToGoプラットフォーム」による差別化を図る。有効性については十分に確認できたため、アプリ機能の更なる改善や利用率のアップに取り組むとともに、中堅規模のチェーン店などをターゲットとし、まずは規模の経済を狙う戦略と考えられる。また、顧客購買データの活用(顧客嗜好を反映したメニュー開発など)も視野に入れるほか、他事業部とのコラボ企画も進行中のようだ。

弊社でも、今後の成長ドライバーとして、潜在需要の大きさや業績へのインパクトが期待できる1)モバイルデータソリューション、2)M2M、3)AR関連の3つの事業が軸になるとみている。モバイルデータソリューションは、既にリーディングカンパニーとして世界開拓を進めているが、世界規模で拡大している需要(安全、安心に対する社会的な要請)にどう対応していくのか、その戦略に注目している。特に、今回の第三者割当増資が、将来に向けて大きな転換点になる可能性が高く、ソリューションビジネスの強化や予定しているM&Aをどのように成果に結びつけていくのかを継続的にフォローする必要があるだろう。一方、M2Mについては、汎用性や手軽さに優れた「おくだけセンサー」による差別化や、同社ならではのIoTソリューションの提供を通じて、これからの裾野拡大をいかに取り込んでいくのかが成功のカギを握るとみている。また、新たな市場であるAR関連についても、共通プラットフォームの確立により産業分野でのデファクトスタンダードを目指す戦略は、同社の強みが生かせる分野であり、スケールメリットの享受や参入障壁を構築する上でも理にかなっていると評価できる。それぞれが順調に立ち上がってくれば、事業間連携の促進による新たな収益チャンスの獲得にも期待が持てるだろう。就任して1年の木村社長を始め、新たな経営体制には未知数の部分があるものの、DI事業の拡大や事業ポートフォリオの再構築により、いかに成長加速と収益性向上を実現していくのか、今後の動向に注目していきたい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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