翻訳センター Research Memo(1):2020年3月期はコンベンション事業が伸長も主力の翻訳事業が減収
[20/06/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
翻訳センター<2483>は、翻訳業界の国内最大手。医薬分野の専門翻訳会社として創業し、工業・ローカライゼーション、特許、金融・法務など専門性の高い産業翻訳分野で領域を拡大してきた。現在は翻訳だけでなく通訳、派遣、国際会議運営(コンベンション)、通訳者・翻訳者教育などに多角化し、顧客企業のグローバル展開における幅広い外国語ニーズに対応する。多数の中小プレーヤーがひしめく分散業界において、組織化・システム化された営業・制作機能を整備し、品質・スピード・コストのバランス、大規模案件対応などで他社の一歩先を行く。機械翻訳技術の取込みにも積極的であり、(株)みらい翻訳と資本業務提携するとともに、社内の50%を超える翻訳プロジェクトで機械翻訳を活用する。国内翻訳業界1位はもちろん、世界の語学サービス企業でも上位のポジションである。
1. 事業内容
主力の翻訳事業では、分野特化戦略を推進しており、「特許」「医薬」「工業・ローカライゼーション」「金融・法務」の4分野ごとに組織が分かれ、専門化してノウハウを蓄積している。グループネットワークを生かしたサービスの提案、ICTによる登録者マッチングシステムも強みである。現場で制作を担当するのは約3,000名の登録者であり、翻訳支援ツールを使い効率的かつ品質の高い翻訳サービスの提供を行っている。大規模プロジェクトや多言語対応などに機動的に対応できることも同社の強みである。連結子会社(株)アイ・エス・エスが行う、コンベンション事業、派遣事業、通訳事業はそれぞれの分野でポジションを築いているが、相互に関連していて翻訳事業を含めたクロスセリングが行われ、グループのシナジーが発揮されている。
2. 業績動向
2020年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比3.8%減の11,550百万円、営業利益が同9.6%減の813百万円、経常利益が同9.1%減の822百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同51.6%減の304百万円と減収減益となった。売上高に関しては、主力の翻訳事業の減収前期比393百万円の影響が大きかった。特に工業・ローカライゼーション分野では主要顧客である自動車関連企業及び電機・電子部品関連企業などからの受注が低調に推移し同253百万円減となった。中国経済の成長鈍化などに代表される世界経済減速への懸念から製造業の景況感が低下基調だったことが影響した。医薬分野では、主要顧客である製薬会社向けAI翻訳の共同開発等に取り組むなどサービスの拡充を図ったものの、当期に実施の査察案件が少なかった影響を受け、同148百万円減と伸び悩んだ。コンベンション事業は同105百万円増と売上伸長。通訳事業及びコンベンション事業においては、第4四半期に新型コロナウイルスの影響によりキャンセルや延期となり機会損失があった。売上原価は前期比5.3%減と効率化が進捗した。これは、翻訳支援ツール等を積極的に活用し、翻訳制作の生産性向上に取り組んでいる成果が出始めたと考えられる。結果として、営業利益は、翻訳事業の減収インパクトが粗利率向上効果を上回り、同9.7%減となった。なお、当期純利益が前期比51.6%減と大幅減となったのは、社内システム開発に伴う固定資産の減損損失321百万円を計上したためである。
2021年3月期の連結業績予想は、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を合理的に算定することが困難であるため、現時点では未定としている。戦略に変更はなく、2019年3月期を初年度とした第四次中期経営計画の内容に沿った施策を行う。翻訳事業においては、機械翻訳や翻訳支援ツールなど最先端技術を積極的に活用し翻訳制作の生産性向上、社内業務プロセスの効率化に取り組む。また引き続き主要4分野における分野特化戦略を推し進め、専門性を強化し、シェア拡大を目指す。通訳事業及びコンベンション事業においては、withコロナ・postコロナにおける事業の在り方を模索する1年となるだろう。
3. 成長戦略
同社は、機械翻訳(NMT)を翻訳工程に取り入れ、主要4分野で作業時間の短縮を図る取り組みを行い、明らかな成果が出ている。2020年3月期では、このような機械翻訳を活用した翻訳プロジェクトが約半数となり、社内の業務プロセスとして一般化するまでになっている。
機械翻訳(NMT)を活用した新たなビジネスモデルの構築においても成果が出始めた。2019年12月より、同社、みらい翻訳(同社出資先)、NTTコミュニケーションズ(株)の3社は、主催する「製薬カスタムモデル共同開発」において、新たな製薬企業メンバーの公募を開始した。参加メンバー企業はNTTコミュニケーションズのAI翻訳プラットフォームサービス「COTOHA®Translator」上で、製薬関連文書の翻訳に特化した高精度の自動翻訳を利用することができる。今回の公募に先立ち、第1期メンバー企業(12社)からコーパスの提供を受けて行ったクローズドテストにおいては、既に翻訳精度の大幅な向上効果が確認できている。第2期メンバーの募集は、この成果を踏まえ、さらに取り組みの拡大を目指すものである。
4. 株主還元策
同社は、企業の利益成長に応じた継続的な還元を行うことを方針としている。2020年3月期は、配当金年間42円(7円増)と6期連続の増配、配当性向は45.7%となった。なお、2021年3月期の配当予想については、現時点では業績予想の算定が困難であることから未定としている。
■Key Points
・2020年3月期は減収減益。コンベンション事業が伸長も、主力の翻訳事業が減収
・新型コロナウイルスの影響を合理的に算定することは困難と判断し、2021年3月期の業績予想は未定
・第四次中期経営計画の重点戦略である機械翻訳の活用が進展。翻訳プロジェクトの約半数で機械翻訳活用済み。製薬業界向けAI翻訳共同開発は第2期メンバー募集開始
・無借金経営を継続。短期及び中長期の安全性が極めて高い
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
<EY>
翻訳センター<2483>は、翻訳業界の国内最大手。医薬分野の専門翻訳会社として創業し、工業・ローカライゼーション、特許、金融・法務など専門性の高い産業翻訳分野で領域を拡大してきた。現在は翻訳だけでなく通訳、派遣、国際会議運営(コンベンション)、通訳者・翻訳者教育などに多角化し、顧客企業のグローバル展開における幅広い外国語ニーズに対応する。多数の中小プレーヤーがひしめく分散業界において、組織化・システム化された営業・制作機能を整備し、品質・スピード・コストのバランス、大規模案件対応などで他社の一歩先を行く。機械翻訳技術の取込みにも積極的であり、(株)みらい翻訳と資本業務提携するとともに、社内の50%を超える翻訳プロジェクトで機械翻訳を活用する。国内翻訳業界1位はもちろん、世界の語学サービス企業でも上位のポジションである。
1. 事業内容
主力の翻訳事業では、分野特化戦略を推進しており、「特許」「医薬」「工業・ローカライゼーション」「金融・法務」の4分野ごとに組織が分かれ、専門化してノウハウを蓄積している。グループネットワークを生かしたサービスの提案、ICTによる登録者マッチングシステムも強みである。現場で制作を担当するのは約3,000名の登録者であり、翻訳支援ツールを使い効率的かつ品質の高い翻訳サービスの提供を行っている。大規模プロジェクトや多言語対応などに機動的に対応できることも同社の強みである。連結子会社(株)アイ・エス・エスが行う、コンベンション事業、派遣事業、通訳事業はそれぞれの分野でポジションを築いているが、相互に関連していて翻訳事業を含めたクロスセリングが行われ、グループのシナジーが発揮されている。
2. 業績動向
2020年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比3.8%減の11,550百万円、営業利益が同9.6%減の813百万円、経常利益が同9.1%減の822百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同51.6%減の304百万円と減収減益となった。売上高に関しては、主力の翻訳事業の減収前期比393百万円の影響が大きかった。特に工業・ローカライゼーション分野では主要顧客である自動車関連企業及び電機・電子部品関連企業などからの受注が低調に推移し同253百万円減となった。中国経済の成長鈍化などに代表される世界経済減速への懸念から製造業の景況感が低下基調だったことが影響した。医薬分野では、主要顧客である製薬会社向けAI翻訳の共同開発等に取り組むなどサービスの拡充を図ったものの、当期に実施の査察案件が少なかった影響を受け、同148百万円減と伸び悩んだ。コンベンション事業は同105百万円増と売上伸長。通訳事業及びコンベンション事業においては、第4四半期に新型コロナウイルスの影響によりキャンセルや延期となり機会損失があった。売上原価は前期比5.3%減と効率化が進捗した。これは、翻訳支援ツール等を積極的に活用し、翻訳制作の生産性向上に取り組んでいる成果が出始めたと考えられる。結果として、営業利益は、翻訳事業の減収インパクトが粗利率向上効果を上回り、同9.7%減となった。なお、当期純利益が前期比51.6%減と大幅減となったのは、社内システム開発に伴う固定資産の減損損失321百万円を計上したためである。
2021年3月期の連結業績予想は、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を合理的に算定することが困難であるため、現時点では未定としている。戦略に変更はなく、2019年3月期を初年度とした第四次中期経営計画の内容に沿った施策を行う。翻訳事業においては、機械翻訳や翻訳支援ツールなど最先端技術を積極的に活用し翻訳制作の生産性向上、社内業務プロセスの効率化に取り組む。また引き続き主要4分野における分野特化戦略を推し進め、専門性を強化し、シェア拡大を目指す。通訳事業及びコンベンション事業においては、withコロナ・postコロナにおける事業の在り方を模索する1年となるだろう。
3. 成長戦略
同社は、機械翻訳(NMT)を翻訳工程に取り入れ、主要4分野で作業時間の短縮を図る取り組みを行い、明らかな成果が出ている。2020年3月期では、このような機械翻訳を活用した翻訳プロジェクトが約半数となり、社内の業務プロセスとして一般化するまでになっている。
機械翻訳(NMT)を活用した新たなビジネスモデルの構築においても成果が出始めた。2019年12月より、同社、みらい翻訳(同社出資先)、NTTコミュニケーションズ(株)の3社は、主催する「製薬カスタムモデル共同開発」において、新たな製薬企業メンバーの公募を開始した。参加メンバー企業はNTTコミュニケーションズのAI翻訳プラットフォームサービス「COTOHA®Translator」上で、製薬関連文書の翻訳に特化した高精度の自動翻訳を利用することができる。今回の公募に先立ち、第1期メンバー企業(12社)からコーパスの提供を受けて行ったクローズドテストにおいては、既に翻訳精度の大幅な向上効果が確認できている。第2期メンバーの募集は、この成果を踏まえ、さらに取り組みの拡大を目指すものである。
4. 株主還元策
同社は、企業の利益成長に応じた継続的な還元を行うことを方針としている。2020年3月期は、配当金年間42円(7円増)と6期連続の増配、配当性向は45.7%となった。なお、2021年3月期の配当予想については、現時点では業績予想の算定が困難であることから未定としている。
■Key Points
・2020年3月期は減収減益。コンベンション事業が伸長も、主力の翻訳事業が減収
・新型コロナウイルスの影響を合理的に算定することは困難と判断し、2021年3月期の業績予想は未定
・第四次中期経営計画の重点戦略である機械翻訳の活用が進展。翻訳プロジェクトの約半数で機械翻訳活用済み。製薬業界向けAI翻訳共同開発は第2期メンバー募集開始
・無借金経営を継続。短期及び中長期の安全性が極めて高い
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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