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コスモスイニシア Research Memo(6):宿泊事業の苦戦が継続も、主力事業は業況改善へ

注目トピックス 日本株
■コスモスイニシア<8844>の業績動向

3. 事業別の業績動向
事業別にみると、2020年3月期は、レジデンシャル事業が収益改善により減収であったものの2ケタ増益、ソリューション事業が増収かつ2ケタ増益、宿泊事業と工事事業が2ケタ増収と、中期経営計画に沿った積極戦略は順調に進展したように思われる。しかし、期末にかけて新型コロナウイルスの影響で宿泊事業が急減速した。2021年3月期の見通しでは、宿泊事業は期を通じて新型コロナウイルスの影響が残るため損失の予想、それ以外の事業も自粛の影響などにより大幅減益予想になっている。しかし、下期へ向けての巻き返しで、宿泊事業を除いて売上高は一定水準を確保できそうである。この売上高水準ならば利益面で宿泊事業をもう少しカバーできそうにも思えるが、そこが油断禁物ということなのだろう。以下に、事業別業績及び業績見通しの詳細を示す。

(1) レジデンシャル事業
2020年3月期の業績は売上高37,369百万円(前期比3.9%減)、営業利益1,545百万円(同30.5%増)となった。リノベーションマンションの引渡数は増加したが、新築マンションと新築一戸建の引渡数が減少、減少の理由は仕入環境が厳しく事業用地の取得が進まなかったことである。新築マンションで、2019年3月期に比べて高額物件の引渡が多くなったことから販売単価が上昇したが、建築コストの上昇から売上総利益率が低下した。一方、リノベーションマンションと新築一戸建の売上総利益率は改善した。前期に比べ販管費も抑制されたことから、利益は2ケタ増となった。

2021年3月期の業績見通しについて、同社は売上高42,300百万円(同13.2%増)、営業利益600百万円(同61.2%減)を見込んでいる。リノベーションマンションの引渡数はやや減り、新築マンションと新築一戸建の引渡数が増加、シニアマンションは北海道で2プロジェクトが販売開始予定である。販売単価は平常化する予想だが、シニアマンションなど2022年3月期以降引渡予定の物件の販売費が数億円先行し、新型コロナウイルスの影響もあり、営業利益率は低下する見込みである。新型コロナウイルスの影響としては、営業活動の自粛や販売進捗遅延に伴う契約・引渡の減少、一部物件の採算低下などが想定されている。現状、モデルルームはゴールデンウィーク後徐々に再開、懸念された工事中止も大きな影響はなく進行を再開したもようである。このため、一定程度の進捗遅れや販売費の先行などを考慮してもやや保守的な計画になっているように思われる。しかし、特に2021年3月期上期は手探り状態の動きとなりそうである。

(2) ソリューション事業
2020年3月期の業績は、売上高47,440百万円(前期比8.4%増)、営業利益4,887百万円(同41.4%増)となった。投資用不動産の市場が活況で投資用不動産等の販売が好調に推移したことに加え、不動産賃貸管理等で転貸戸数が増加、不動産仲介その他の売上高も増加し、増収増益につながった。特に2018年3月期より販売を始めた共同出資型不動産が顧客に人気となった。なお、一棟物件の売上総利益率が改善、契約進捗率、不動産サブリースの転貸戸数は順調に伸び、空室率も低位で推移した。

2021年3月期の業績見通しについて、同社は売上高45,500百万円(同4.1%減)、営業利益2,500(同48.8%減)を見込んでいる。前期の販売好調の反動に加え、新型コロナウイルスの影響により営業自粛や店舗区画等の賃貸条件悪化などによる一部物件の販売収益の低下などを見込み、売上総利益率が低下する見込みである。ただし、投資用不動産は顧客次第の面があり、業績が上に振れる可能性も残る。

(3) 宿泊事業
2020年3月期の業績は、売上高12,730百万円(前期比25.8%増)、営業利益1,162百万円(同37.9%減)となった。新たにアパートメントホテル「MIMARU」7施設399室が開業するなど、運営物件の稼働施設数が増加したことで2ケタ増収となった。一方、2020年の年明け以降の新型コロナウイルスの影響により、3月には平均稼働率が15.6%まで下がり、平均客室単価、平均滞在日数も大きく下落するなど急激に事業環境が厳しくなった。通期の客室稼働率が64.9%と前期比17.3ポイント低下したほか、前期における高収益物件の販売の反動もあり、減益となった。

2021年3月期の業績見通しについて、同社は売上高5,300百万円(前期比58.4%減)、営業損失1,500百万円(同2,662百万円の減益)を見込んでいる。2020年5月末までに「MIMARU」15施設中11施設が休業を実施するなど、2021年3月期に入っても3月同様の厳しい傾向が続いている模様である。このため、ホテル運営については2021年3月期の稼働率前提を9月までが3月レベル程度、10月以降徐々に回復するが期末までに完全には回復しないと見込んでいる。ホテル販売については一部物件の販売時期を延期するほか、2021年3月期に新規開業予定の大阪・京都の4施設133室を一部延期する可能性もある。しかし、外国人を中心に観光客の宿泊需要が拡大するという大きなトレンドが「コロナ後」に復活すると期待されることから、中長期的な成長戦略に変更はないと思われる。しかし外国人観光客数が回復するまでは、これまであまり訴求してこなかった日本人の宿泊需要を取り込むことを考えている。

(4) 工事事業
2020年3月期の業績は、売上高13,706百万円(前期比17.5%増)、営業利益349百万円(同4.6%減)となった。建設工事の受注が増加し2ケタ増収となったが、コスモスモアの本社移転費用で販管費が増加し減益となった。2021年3月期の業績見通しについて、同社は売上高12,500百万円(同8.8%減)、営業利益200百万円(同42.7%減)を見込んでいる。新型コロナウイルスの影響により受注減少や一部案件の竣工遅延を想定している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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