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オプティム Research Memo(1):2020年3月期通期は前期比23.0%増収。新規サービスの受注好調(1)

注目トピックス 日本株
■要約

オプティム<3694>は、現代表取締役社長の菅谷俊二(すがやしゅんじ)氏が佐賀大学学生時代である2000年に友人と起業したAI・IoT技術を得意とするベンチャー企業である。 “ネットを空気に変える”がミッションであり、「OPTiM Cloud IoT OS」のデファクトスタンダード化を通じて、第4次産業革命の中心的役割を果たす企業を目指している。従業員数は275名(2020年4月)で、その約8割がエンジニアである。当初から世の中にないサービスを作り出すことを念頭に技術開発を行っており、関連の特許を数多く所有している。大手企業のパートナーは数多く、同社の技術力やポテンシャルは内外からも高く評価されている。2014年に東証マザーズ上場、2015年には東証1部に昇格した。

マルチデバイス対応の管理プラットフォーム「Optimal Biz」は、端末管理市場でのトップシェアを誇る。デバイス管理プラットフォームを進化させ、AI・IoTの新プラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」が完成し、2015年からはITを使って業界に変革を起こす「〇〇×IT(〇〇に業種が入る)」の取り組みが本格化した。最も成果が顕在化しているのは建設業界である。2017年にはコマツ<6301>を含む4社で建設生産プロセスの新プラットフォーム「LANDLOG」がスタートし、パートナー企業及び顧客が増え続けている。農林水産業では、2016年に農業分野でドローンを活用した害虫駆除の実証実験に成功した。2018年には同社が主導する“スマート農業アライアンス”が全国規模で行われ、米や大豆を始めとする作物が本格的に収穫された。学習済みのパッケージサービス「OPTiM AI Camera」製品群は、手軽にAI・IoTを活用できる月額課金プロダクトであり、顧客の導入ハードルを下げることに成功したことにより、普及が進んでいる。

1. 事業内容
同社の事業は、「Optimal Biz」を主体とする既存事業と、「OPTiM Cloud IoT OS」を活用した事業や商品である新規事業に分けられる。創業来、知財戦略に基づく豊富な技術力及び事業創造力を背景に、常に革新的なサービスを提供し新しい市場を開拓してきた。国内市場ではシェアNo.1のサービスを擁し、豊富なライセンス収益を基盤としたビジネスモデルを確立している。また、近年ではAI・IoT・Big Dataのマーケットリーダーとして、各産業のトッププレイヤーと強固なビジネスディベロップメントを推進している。

同社の主力サービスである「Optimal Biz」は、企業向けのスマートフォン・タブレット・パソコン・IT機器などのセキュリティ対策や一括設定の分野で必要不可欠なサービスである。成長する国内MDM(Mobile Device Management)市場でシェアNo.1を継続している。同社は、市場の成長率を超える成長率を達成しており、デファクトスタンダードを獲得している。同事業はストック型ビジネスモデルであり、この安定収益が同社の開発投資を支えている。

同社では、2016年3月に「OPTiM Cloud IoT OS」を発表し、IoT時代の基盤となるソフトウェアを展開してきた。既存のCloudサービス上で動作が可能であり、IoTサービスで必須となる様々な機能が標準装備されており、画像解析やAIの機能が充実している点もポイントである。発表から4年が経過し、AI・IoTプラットフォームとしてエコシステムを形成するための一連の機能を具備するまでに技術的に進化している。

2. 業績動向
2020年3月期通期業績は、売上高が前期比※23.0%増の6,728百万円、営業利益が同166.3%増の256百万円、経常利益が同78.3%増の259百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同939.1%増の117百万円と20%増を超える増収とともに大幅増益となった。売上高は、創業来20期連続となる過去最高売上高を達成した。全社売上高の70%程度を占める既存サービスでは、ライセンス数を積み上げることで順調に推移した。売上の中心である「Optimal Biz」は、拡大を続ける市場において、4年連続国内MDM・EMM市場シェア1位の評価を獲得した。新規サービス(AI/IoTサービス)においても受注が好調であり、前期比90%増以上、全社売上高に占める割合が30%程度となった。特に、先行する建設業界向けでは、「OPTiM Cloud IoT OS」を利用するためのカスタマイズ、環境構築等が売上の急成長につながった。パッケージサービス「OPTiM AI Camera」製品群では、「OPTiM AI Camera Lite」や「OPTiM AI Camera Mobile」などにより、手軽にAI、IoTを活用できるサービスが開始され、普及が始まった。なお、各利益に関しては、公約どおり戦略的な研究開発投資を継続し、企業規模からすると圧倒的に多額の研究開発投資(19億円超)を行った。売上原価で前期比33.5%増、販管費で同13.0%増としっかり費用を使ったが、増収効果が上回り、各利益の大幅増益を達成した。

※2020年3月期より連結決算のため、前期比は参考値。


3. 今後の見通し
2021年3月期通期の業績予想は、新型コロナウイルス感染症の影響が不透明なため、売上高、各利益ともにレンジ予想となった。売上高で前期比10.1〜20.1%増の7,407〜8,080百万円、営業利益で同177.4〜493.9%増の712〜1,526百万円、経常利益で同209.4〜522.9%増の802〜1,616百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同327.6〜777.3%増の501〜1,028百万円を見込んでいる。同社では「研究開発投資の回収が始まる期」と位置付けており、売上高に関しては、創業来21期連続の過去最高売上高を目指す。なお、売上高予想については、巡行速度での成長ケースで前期比20.1%増、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたケースが同10.1%とし、期初時点で顕在化していないリスクが存在している可能性があるため、そのリスクへの対応として最大で10%程度の売上低減を予想に加えた。2021年3月期は、同社の戦略上では「利益計上を開始する期」であり、過去最高利益を目指す。高水準の研究開発投資は維持しつつ、売上高経常利益率20.0%を計画する(経常利益1,616百万円、予想の上限)。一方で、新型コロナウイルス感染症の影響が出た場合(売上低減10%)でも、継続的な研究開発投資を行うことを計画しており、その場合の売上高経常利益率が10.8%(経常利益802百万円、予想の下限)となる。弊社では、リモートワークの普及など新型コロナウイルス感染症の影響は同社にとって追い風になる側面もあることから、売上高予想及び利益予想は上限に近いものになると考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)




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