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ランドコンピュ Research Memo(8):「今変われない企業に未来はない」(2)

注目トピックス 日本株
■ランドコンピュータ<3924>の今後の見通し

3. 新型コロナウイルス感染症拡大の影響
2020年5月末時点で、東証に上場する3月期決算企業の56.4%(1,266社)が2021年3月期の業績予想を未定もしくは非公開とした。ITサービス業界トップのNTTデータは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、特に海外事業に関する合理的な算定が困難であることを理由に、業績予想を未定とした。

新型コロナウイルス感染症拡大による経済の落ち込みは、リーマン・ショック時を超えると予想されている。日本の実質GDP成長率は、2008年度がマイナス3.4%、2009年度がマイナス2.2%であった。国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しでは、2020年の日本の実質成長率は1月予想が0.7%であったのに対し、4月予想ではマイナス5.2%へ、6月予想ではマイナス5.8%へ下方修正された。6月予想の2021年の実質成長率は2.4%が予想されている。

2008年9月に発生した米国サブプライムローン問題に端を発したリーマン・ショックでは、企業業績が長期的に悪化した。2007年度の全企業の売上高を100とすると、2009年度は84.7まで下落した。経済産業省が集計する「特定サービス産業動態統計調査」の情報サービス業の売上高は、2007年度が11兆2,380億円だったものの、四半期ベースでは2008年10月〜12月期から前年同期比で減少に転じ、12四半期にわたり減少傾向が続いた。2007年度の情報サービス業の売上高を100とすると、2011年度に88.6まで下落し、10年後の2017年度にようやく100を回復した。

また、厚生労働省の「労働経済動向調査」が示す正社員等労働者の過不足状況判断指数(=不足−過剰、D.I.)を見ると、2007年2月時点調査で調査産業計が29でピークを付けたのに対し、情報通信業は49と人手不足度合いが大きかった。調査産業計のD.I.は、2009年5月調査では-15(正味過剰)でボトムに達したが、情報通信業は1四半期遅れて-11で底打ちした。これは、ITサービス業の場合、進行中のプロジェクトを途中で中止するわけにはいかないためタイムラグが生じるようだ。直近のD.I.のピークは、2019年2月時点となる。調査産業計は45、情報通信業が58であった。人手不足の状況は、建設業(65)、運輸業・郵便業(58)、学術研究、専門・技術サービス(57)、不動産業、物品賃貸業(50)、医療、福祉(50)と幅広い産業に広がっていた。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた後の2020年5月調査では、D.I.が調査産業計で24まで下がり、情報通信業は33となった。同社の場合、外注先から仕事の打診が入るなど人手不足感の緩和が感じられる。緊急事態宣言により事業運営に制限を受けた宿泊業、飲食サービス業のD.I.は2019年2月調査の33から2020年5月時点で0へ急降下した。同様に、生活関連サービス業、娯楽業が27→10、製造業が42→11、金融業、保険業が19→13、卸売業、小売業が29→15へと低下した。

同社は、2015年上場のためリーマン・ショック時の財務データを入手できない。そこで、NTTデータと金融業界のウエイトが高いSRAホールディングス<3817>のリーマン・ショック前後の業績動向を見てみた。NTTデータは、売上高こそ落ち込まなかったものの、2007年度の水準を100とすると、2010年度の営業利益は81.6まで下落した。SRAホールディングスは、2010年度の売上高が73.6、営業利益が54.6となった。営業利益は2018年度に最高益を更新したが、売上高はいまだに当時の水準に戻っていない。

今回は、DXに象徴されるデジタル化により、新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越え、経済を活性化させる方向にある。成長分野での事業機会獲得が、企業業績へのダメージを限定し、回復を早めることとなるだろう。

4. 政府は「デジタルガバメント」を推進
日本のIT化は、特に行政、医療、教育で遅れが目立つ。日本政府は、2001年1月に「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」(IT総合戦略本部)を設置し、「e-Japan戦略」を策定した。また、同年6月に、新たなIT戦略(世界最先端IT国家創造宣言)を閣議決定し、2003年までに実質的にすべての手続きをネット化するとしていた。しかしながら、2019年3月末時点で、55,000以上ある国の行政手続きのうちオンラインで完結できるものはわずか7.5%しかなかった。省庁別では、オンライン完結率が最も高い財務省でも24.1%にとどまり、低いところでは農林水産省の1.3%、次いで国土交通省の2.8%となっている。新型コロナウイルス感染者数の集計作業に、一部で紙とファックスを使用していたため、現場の処理が混乱し、集計ミスや全国情報の迅速な把握が困難となった。また、特別確定給付金の申請では、オンライン申請のチェックを手作業で行うなど、アナログ国家の烙印を押された。テレワークを実現するうえで障害となっているのは、行政とビジネス慣行の「対面・ハンコ・紙」である。政府や自治体は、企業や住民にテレワークと“ステイホーム”を要請しながら、実際はそれを妨げている。

世界銀行の2020年版事業環境ランキングにおいて、日本は190ヶ国中、「総合」で29位だった。10分野のうち、最も順位が高いのが「破綻処理」の3位、最も低いのが「法人設立」の106位であった。商業登記のオンライン申請では、2018年の利用率が1%に届かない。スイスの有力ビジネススクールIMDが発表した2020年版の国際競争力ランキングでは、日本は34位と過去最低の水準に落ちた。1989年は1位であったことから、国際競争力でも「失われた30年」であったと言える。項目別で足を引っ張ったのは、「政府効率」と「ビジネス効率」である。デジタル化が遅れているため、「マネジメント慣行」は63ヶ国中62位だった。

これに対し、2020年6月の「骨太方針」を巡る会議で安倍首相は、「国・地方ともに行政サービスをデジタル化し、デジタルガバメント(電子政府)を国民目線で構築していくことはもはや一刻の猶予もない」と述べた。社会や行政のデジタル化を推進し、対面や押印を求める規制と慣行の見直しを掲げた。「IT総合戦略本部」は、「デジタル強靱化社会」の実現のため新たなIT戦略をまとめ、来年の通常国会で法制化を目指す。

また、日本の教育現場におけるIT化は、国際的に見て大いに遅れている。経済協力開発機構(OECD)は、15歳児を対象に国際学習到達度調査(PISA)を3年ごとに実施している。2018年調査では、日本の「読解力」の順位が前回の8位から15位に急落して話題となった。PISAは、2015年調査からCBT(コンピュータを使用した試験)に切り替えており、その時も「読解力」の順位が4位から8位に低下した。日本の子どもたちがデジタル機器の操作に不慣れなことが成績に響いていると言われている。PISAと同時に実施された2018年のアンケート調査では、1週間の授業で「デジタル機器を使用しない」と答えた日本の生徒は、国語が83.0%、数学が89.0%、理科が75.9%を占め、いずれもデジタル機器の使用率でOECD加盟国の中で最下位であった。日本の教育現場のデジタル対応は、20年遅れていると言われた。

政府は、小中学校の児童や生徒全員にパソコンを支給する「GIGAスクール構想」を、当初目標の2023年度から2020年度中に前倒しした。ちなみに、2020年3月の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の教育担当閣僚級会合に参加した11ヶ国中、新型コロナウイルス感染症拡大による休校中にオンライン指導できなかったのは日本だけだった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)




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