平和RE Research Memo(5):投資主価値の最大化に向けて取り組む
[20/08/20]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略
1. 中期目標
平和不動産リート投資法人<8966>では中期目標として、今後3〜5年内に1口当たり分配金2,750円、資産規模2,000億円の達成を目指す。2020年5月期には1口当たり分配金を2,550円にまで増やしているが、今後も中期目標を達成するために、外部成長で24円以上、内部成長で197円〜245円、費用削減で50円を計画している。外部成長戦略では、スポンサーパイプラインの活用により継続的に物件を取得するほか、資産入替を継続することで将来の分配金の拡大・安定化を図る。また、内部成長戦略では、大きく膨らんだ賃料ギャップを背景に賃料の増額改定や、LED・空調更新など省エネ対応工事による水光熱費削減などを図る。さらに、費用削減では、引き続き金利費用の低減や継続的な販管費の削減を図る。資産入替を通じた収益力強化とともに、実現益を通じた内部留保の維持・拡充を図る方針であり、潤沢な内部留保やフリーキャッシュを活用すれば、分配金の中期目標は達成できると考えられる。一方、資産規模の拡大については、現在は不動産価格が高騰しているため無理な新規取得をせず、入れ替えを中心に優良物件に投資する方針である。
2. 外部成長戦略
外部成長戦略としては、幅広い物件情報ルートをもとに、今後も継続的な資産規模の拡大を図る一方で、資産入替の検討等も行い、中長期的なポートフォリオの質の向上を図り、着実な投資主価値の極大化を目指す方針だ。そのために、第1に着実かつ健全な外部成長戦略を継続する。すなわち、過熱したマーケットに振り回されず、ポートフォリオの質と収益性の向上に資する物件に厳選投資を行う。また、スポンサーと協働し、開発等、多様な手法による取得機会の拡大を図る。さらに、借入余力を活用した機動的な物件取得を行う。第2に入替戦略の継続的な取り組みも行う方針で、低収益物件、地方エリアに立地する小規模レジデンスを優良なオフィスやレジデンスに入れ替え、ポートフォリオの収益力改善を図る。第3に用途・エリアを厳選する方針で、優良なオフィスとレジデンスの双方への厳選投資や、東京都区部をメインエリアとし、スポンサー・サポートが得られる地方大都市にも厳選投資をする。スポンサー変更以降、資産の入替戦略を積極的に進めてポートフォリオの再構築を図るとともに、稼働率の上昇や賃料改定などにより収益力強化を図った結果、次第に含み益が拡大し、NOI利回りも上昇するなど、ポートフォリオの質が大幅に改善している。今後も同戦略を推進することで、ポートフォリオの更なる改善を図る方針である。
3. 内部成長戦略
内部成長戦略としては、平和不動産グループが培ったデータベースや情報ネットワークを活用することにより、賃貸マーケットの動向を迅速に把握し、きめ細かなプロパティ・マネジメントを行うことで、運用資産の稼働率及び賃料水準の維持・向上を図るなど、積極的かつ効率的な運営管理により、着実な内部成長を目指す。すなわち、第1に高稼働率の維持・向上を図り、スポンサー、PM(プロパティ・マネジメント)会社と連携し適切かつタイムリーなリーシング施策の実施によるテナント需要の取込み、良質な運営・管理、CS(顧客満足度)対応施策の実施によるテナント退去の防止、ダウンタイム(空室期間)の短縮などを掲げる。第2に賃料増額による賃貸収益の向上を目指し、テナント入替時及び契約更改時における賃料増額(是正)を推進する。第3に戦略的な資本投下を行い、物件競争力、収益性及びCS向上につながるバリューアップ工事を計画的に実施する。第4には付帯収入の増加と各種費用の削減を継続する。緊急事態宣言の影響もあり、2020年5月期は賃料増額交渉がしにくい状況にあったが、新型コロナウイルス感染症の収束に伴い、従来の状況に戻ると予想する。
4. 財務戦略
財務戦略では、財務基盤の安定化を図り、持続的な成長を可能とすることを目的として、計画的かつ機動的な資金調達を目指す。すなわち、第1に有利子負債の返済・償還期限の長期化、固定化及び満期の分散化を進めることで市場金利変動の影響を受けにくい財務基盤を構築する。また、AA格への格上げによる信用力の改善と長期安定投資家の拡大を目指す。第2に適切なLTVコントロールによって、金融環境に左右されない安定した物件取得、ポートフォリオと収益の持続的な拡大を図る。第3に資金調達手段の多様化を図り、公募増資によるエクイティ調達、幅広い業態からなるレンダーフォーメーション、投資法人債等、様々な性格の資金へのアクセスを構築する。第4に現在の低金利環境が将来にわたって財務コスト削減に寄与できるように、金融コストの低減を図る。2020年5月末時点の有利子負債残高は846億円であるが、平均調達金利は0.805%と過去最低金利を更新しており、平均調達年数は6.94年である。加えて、新型コロナウイルス感染症拡大で懸念される不測の事態に備えて、大手銀行からの融資枠のコミットメントラインを、従来の60億円から70億円に拡大している。さらに、資金調達手段の拡充のため、投資法人債の発行も実施済である。また、将来の金利上昇リスクに対しては、長期借入金固定化比率を95.0%に高めている。このように、今後も財務戦略により、同REITの成長を下支えする方針である。
弊社では、同REITが特化する東京都区部をメインとする市場は投資機会が豊富にあることから、今後も潜在的な成長力は高く、中期目標の達成は可能であると評価する。東京都区部では、主なテナント層である中小規模の事業所数が多く、オフィスビルに対して引き続き豊富な需要がある。また、東京都では人口増加傾向が続いており、居住用マンションについても堅調な需要が見込まれている。また、強力なスポンサー・サポートの活用によって、着実な成長戦略の推進が可能と考える。すなわち、平和不動産の保有・開発物件、仲介物件、先行取得物件等の情報ソースを活用したり(外部成長サポート)、情報の共有化によって稼働率の向上を図ったり(内部成長サポート)、財務方針、資金調達等のかかる支援や指導を仰ぐこと(財務サポート)ができるのが、同REITの大きな強みである。
既述のとおり、新型コロナウイルス感染症拡大による賃料への影響は軽微にとどまる見通しであり、いずれは収束に向かうと考えられるが、同REITでは、十分な内部留保やコミットメントラインの設定などの対策を講じている。その他の一般的なリスク要因としては、他のREITと同様、稼働率の低下、賃料の下落、金利の上昇等が考えられる。実際、東京都区内において2018年から巨大ビルが大量供給されており、稼働率の低下や賃料の下落が懸念されていた。ただ、同REITでは、オフィス稼働率は既に高水準に達しているものの、対象とする中規模以下のオフィスでは供給が限定的であり、空室率は1%台と好調に推移していることから、今後も高稼働率の維持が可能と見ている。また、市場賃料の上昇が契約賃料の更改ペースを上回っていること(ポジティブギャップが拡大)から、オフィス賃料はさらに引き上げ可能と見られる。レジデンスにおいても、リニューアル工事の実施によって、物件競争力の強化と資産価値の維持向上を図っており、今後も高稼働率の維持と賃料水準の改善につながると見る。当面は金利の高い借入の借り換えに伴い、金融コストはさらに低下する見通しだが、将来の金利上昇リスクに対しては、金利の固定化によりリスクヘッジを進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 中期目標
平和不動産リート投資法人<8966>では中期目標として、今後3〜5年内に1口当たり分配金2,750円、資産規模2,000億円の達成を目指す。2020年5月期には1口当たり分配金を2,550円にまで増やしているが、今後も中期目標を達成するために、外部成長で24円以上、内部成長で197円〜245円、費用削減で50円を計画している。外部成長戦略では、スポンサーパイプラインの活用により継続的に物件を取得するほか、資産入替を継続することで将来の分配金の拡大・安定化を図る。また、内部成長戦略では、大きく膨らんだ賃料ギャップを背景に賃料の増額改定や、LED・空調更新など省エネ対応工事による水光熱費削減などを図る。さらに、費用削減では、引き続き金利費用の低減や継続的な販管費の削減を図る。資産入替を通じた収益力強化とともに、実現益を通じた内部留保の維持・拡充を図る方針であり、潤沢な内部留保やフリーキャッシュを活用すれば、分配金の中期目標は達成できると考えられる。一方、資産規模の拡大については、現在は不動産価格が高騰しているため無理な新規取得をせず、入れ替えを中心に優良物件に投資する方針である。
2. 外部成長戦略
外部成長戦略としては、幅広い物件情報ルートをもとに、今後も継続的な資産規模の拡大を図る一方で、資産入替の検討等も行い、中長期的なポートフォリオの質の向上を図り、着実な投資主価値の極大化を目指す方針だ。そのために、第1に着実かつ健全な外部成長戦略を継続する。すなわち、過熱したマーケットに振り回されず、ポートフォリオの質と収益性の向上に資する物件に厳選投資を行う。また、スポンサーと協働し、開発等、多様な手法による取得機会の拡大を図る。さらに、借入余力を活用した機動的な物件取得を行う。第2に入替戦略の継続的な取り組みも行う方針で、低収益物件、地方エリアに立地する小規模レジデンスを優良なオフィスやレジデンスに入れ替え、ポートフォリオの収益力改善を図る。第3に用途・エリアを厳選する方針で、優良なオフィスとレジデンスの双方への厳選投資や、東京都区部をメインエリアとし、スポンサー・サポートが得られる地方大都市にも厳選投資をする。スポンサー変更以降、資産の入替戦略を積極的に進めてポートフォリオの再構築を図るとともに、稼働率の上昇や賃料改定などにより収益力強化を図った結果、次第に含み益が拡大し、NOI利回りも上昇するなど、ポートフォリオの質が大幅に改善している。今後も同戦略を推進することで、ポートフォリオの更なる改善を図る方針である。
3. 内部成長戦略
内部成長戦略としては、平和不動産グループが培ったデータベースや情報ネットワークを活用することにより、賃貸マーケットの動向を迅速に把握し、きめ細かなプロパティ・マネジメントを行うことで、運用資産の稼働率及び賃料水準の維持・向上を図るなど、積極的かつ効率的な運営管理により、着実な内部成長を目指す。すなわち、第1に高稼働率の維持・向上を図り、スポンサー、PM(プロパティ・マネジメント)会社と連携し適切かつタイムリーなリーシング施策の実施によるテナント需要の取込み、良質な運営・管理、CS(顧客満足度)対応施策の実施によるテナント退去の防止、ダウンタイム(空室期間)の短縮などを掲げる。第2に賃料増額による賃貸収益の向上を目指し、テナント入替時及び契約更改時における賃料増額(是正)を推進する。第3に戦略的な資本投下を行い、物件競争力、収益性及びCS向上につながるバリューアップ工事を計画的に実施する。第4には付帯収入の増加と各種費用の削減を継続する。緊急事態宣言の影響もあり、2020年5月期は賃料増額交渉がしにくい状況にあったが、新型コロナウイルス感染症の収束に伴い、従来の状況に戻ると予想する。
4. 財務戦略
財務戦略では、財務基盤の安定化を図り、持続的な成長を可能とすることを目的として、計画的かつ機動的な資金調達を目指す。すなわち、第1に有利子負債の返済・償還期限の長期化、固定化及び満期の分散化を進めることで市場金利変動の影響を受けにくい財務基盤を構築する。また、AA格への格上げによる信用力の改善と長期安定投資家の拡大を目指す。第2に適切なLTVコントロールによって、金融環境に左右されない安定した物件取得、ポートフォリオと収益の持続的な拡大を図る。第3に資金調達手段の多様化を図り、公募増資によるエクイティ調達、幅広い業態からなるレンダーフォーメーション、投資法人債等、様々な性格の資金へのアクセスを構築する。第4に現在の低金利環境が将来にわたって財務コスト削減に寄与できるように、金融コストの低減を図る。2020年5月末時点の有利子負債残高は846億円であるが、平均調達金利は0.805%と過去最低金利を更新しており、平均調達年数は6.94年である。加えて、新型コロナウイルス感染症拡大で懸念される不測の事態に備えて、大手銀行からの融資枠のコミットメントラインを、従来の60億円から70億円に拡大している。さらに、資金調達手段の拡充のため、投資法人債の発行も実施済である。また、将来の金利上昇リスクに対しては、長期借入金固定化比率を95.0%に高めている。このように、今後も財務戦略により、同REITの成長を下支えする方針である。
弊社では、同REITが特化する東京都区部をメインとする市場は投資機会が豊富にあることから、今後も潜在的な成長力は高く、中期目標の達成は可能であると評価する。東京都区部では、主なテナント層である中小規模の事業所数が多く、オフィスビルに対して引き続き豊富な需要がある。また、東京都では人口増加傾向が続いており、居住用マンションについても堅調な需要が見込まれている。また、強力なスポンサー・サポートの活用によって、着実な成長戦略の推進が可能と考える。すなわち、平和不動産の保有・開発物件、仲介物件、先行取得物件等の情報ソースを活用したり(外部成長サポート)、情報の共有化によって稼働率の向上を図ったり(内部成長サポート)、財務方針、資金調達等のかかる支援や指導を仰ぐこと(財務サポート)ができるのが、同REITの大きな強みである。
既述のとおり、新型コロナウイルス感染症拡大による賃料への影響は軽微にとどまる見通しであり、いずれは収束に向かうと考えられるが、同REITでは、十分な内部留保やコミットメントラインの設定などの対策を講じている。その他の一般的なリスク要因としては、他のREITと同様、稼働率の低下、賃料の下落、金利の上昇等が考えられる。実際、東京都区内において2018年から巨大ビルが大量供給されており、稼働率の低下や賃料の下落が懸念されていた。ただ、同REITでは、オフィス稼働率は既に高水準に達しているものの、対象とする中規模以下のオフィスでは供給が限定的であり、空室率は1%台と好調に推移していることから、今後も高稼働率の維持が可能と見ている。また、市場賃料の上昇が契約賃料の更改ペースを上回っていること(ポジティブギャップが拡大)から、オフィス賃料はさらに引き上げ可能と見られる。レジデンスにおいても、リニューアル工事の実施によって、物件競争力の強化と資産価値の維持向上を図っており、今後も高稼働率の維持と賃料水準の改善につながると見る。当面は金利の高い借入の借り換えに伴い、金融コストはさらに低下する見通しだが、将来の金利上昇リスクに対しては、金利の固定化によりリスクヘッジを進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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