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ダイコク電 Research Memo(5):業界が転換期を迎えるなかで、将来を見据え持続的な成長基盤を整備

注目トピックス 日本株
■決算動向

1. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、個人消費の冷え込みと東日本大震災の影響とが重なった2011年3月期に業績の落ち込みがあったが、その後はパチンコ業界が縮小傾向にあるなかでも、ダイコク電機<6430>の業績は順調に回復した。特に高い市場シェアを誇る「情報システム事業」は、2015年3月期まで3期連続で過去最高の売上高を更新しており、同社の業績を支えてきた。ただ、2016年3月期以降は、業界におけるマイナス材料(自主規制や「回収・撤去」の影響、「新規則」に伴う先行き不透明感など)に加え、2020年に入ってからの新型コロナウイルス感染症拡大の影響も重なり、売上高は低調に推移している。

また、利益面では、「情報システム事業」が同社の収益源となっており、業績の回復とともに高い利益率が維持されてきた。2014年3月期から2017年3月期までは次世代製品群向けの研究開発費の増加等により低下しているが、その分を考慮すれば、高い水準を確保してきたと言える。ただ、2018年3月期以降は、次世代製品群向けの研究開発費が一巡したものの、売上高の低迷等により利益率も過去の高い水準には戻り切っていない。一方、MGサービスの伸長などストック型ビジネスモデルへの転換は着実に進んでおり、その点は収益の下支え要因となっている。

財務面では、財務基盤の安定性を示す自己資本比率は、内部留保の積み上げ等により上昇傾向にあり、2020年3月期は71.2%の高い水準となっている。また、短期の支払能力を示す流動比率についても、潤沢な現金及び預金を中心に235.4%の水準を確保しており、盤石な財務基盤は事業存続はもちろん、今後の成長に向けた原動力として強みと言える。一方、資本効率性を示すROEは2015年3月期以降、低調に推移してきた。いずれも最終損益の落ち込みによるものであり、2015年3月期は取引先メーカーの自己破産に伴う損失、2016年3月期は自主規制の影響に伴う専用部材(パチスロ遊技機関連)の評価替えに伴う損失が原因となっている。

2. 2020年3月期決算の概要
2020年3月期の業績は、売上高が前期比5.6%増の32,922百万円、営業利益が同6.3%減の1,431百万円、経常利益が同4.2%減の1,674百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同16.0%減の1,061百万円と増収ながら減益となった。ただ、計画に対しては売上高が若干未達となった一方、利益面では大きく上回る着地となっている。

売上高は、「情報システム事業」が計画を上回るペースで伸長した。特に、新たに市場投入したAIホールコンピュータ「Χ(カイ)」の入れ替え(システムアップ)が増収に大きく寄与。また、情報公開端末「REVOLA」なども好調に推移した。一方、「制御システム事業」は計画を大きく下回る減収となった。市場全体の新台販売台数減少に伴う遊技機メーカーの販売計画見直しなどにより、表示及び制御ユニットの販売が下期にかけて大きく落ち込んだ。

利益面では、増収により売上総利益が増加したものの、「Χ(カイ)」リリースに伴う減価償却費や販促費(展示会等)が増加したことから営業減益となり、営業利益率も4.3%(前期は4.9%)に低下した。ただ、計画に対して上振れたのは、MGサービスの伸長などにより「情報システム事業」の利益の伸びが大きかったことが要因である。

財務面では、総資産が前期末比2.3%減の42,702百万円と減少した一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同1.7%増の30,406百万円に増加したことから、自己資本比率は71.2%(前期末は68.4%)に上昇した。

事業別の業績は以下のとおりである。

(1) 情報システム事業
売上高は前期比7.7%増の26,354百万円、セグメント利益は同13.9%増の3,104百万円と計画を上回る増収増益となった。新たに市場投入したAIホールコンピュータ「Χ(カイ)」(既存ホールコンピュータからの入れ替え)が、新機能の追加、提案活動の強化により増収に大きく寄与した。また、厳しい市場環境が続くなかで、新規ホールコンピュータの導入には苦戦したものの、情報公開端末「REVOLA」※1が好調であったほか、上期好調に推移したCRユニット「VEGASIA」シリーズ※2についても、下期において新規店舗や大規模改装が減少した影響により伸び悩んだものの、計画を上回ることができた。利益面でも、収益性の高いMGサービスの伸び※3や付加価値の高い提案営業などにより大幅な増益を実現し、セグメント利益率も11.8%(前期は11.1%)と上昇した。

※1 高級感のあるスタイリッシュなフォームと多彩なコンテンツが市場で高い評価を獲得。
※2 顔認証カメラが標準装備され、ファン動向が把握できるところに最大の特徴がある。特に、データ分析による最適な機種構成の実現のほか、セキュリティ機能の強化が高い評価を受けている。
※3 MGサービス売上は前期比4.9%増の4,672百万円と着実に伸び、収益の底上げに寄与した。特に、周辺エリアの集客状況を表示する商圏分析サービス「Market-SIS」の普及に注力している。


(2) 制御システム事業
売上高は前期比2.1%減の6,598百万円、セグメント利益は同83.9%減の78百万円と計画を下回る減収減益となった。上期業績が好調であったものの、これまでホールの稼ぎ頭となってきたパチンコ主力機種の認定切れ(撤去期限)を2019年12月末に迎えたことや、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が重なったことにより、下期に入ってからは不安定な市場環境が続いた。特に、パチンコ遊技機向けの部品販売は好調に推移した一方、市場全体の新台販売台数減少に伴う遊技機メーカーの販売計画見直しやリユース率の上昇により、表示及び制御ユニットの販売が下期にかけて大きく落ち込んだ。また、見込んでいた新機種のリリースが延期されたことも下振れ要因となったようだ。利益面でも、表示ユニット等の落ち込みや研究開発費の増加により大幅な減益となり、セグメント利益率も1.2%(前期は7.2%)に大きく低下した。

3. 総括
以上から、2020年3月期の業績を総括すると、厳しい市場環境が継続するなかで、上期は好調に推移したものの、下期の業績が失速し、回復に向けた道筋をしっかりと示すことはできなかった。ただ、「情報システム事業」において、今後の切り札となるAIホールコンピュータ「Χ(カイ)」が順調に立ち上がってきたことや、付加価値の高い新製品群の伸びにより計画を上回る増益を実現したことは評価すべきポイントである。特に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響も加わり、先行き不透明感がさらに高まるなかでも、同社の強みであるデータ分析やセキュリティ機能が市場からしっかりと高い評価を獲得できたところは、将来に向けて明るい材料と言えるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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