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HUグループ Research Memo(4):臨床検査の社会貢献性

注目トピックス 日本株
臨床検査費用の値下げ要求も増えており、業界環境としては厳しい部分があるものの、遠隔医療やデジタル技術の活用などを通じて、今後は「地域医療」がさらに発展していく流れとなっており、検査需要は従来の大病院や研究機関向けから、開業医向けに裾野が拡がっていくものと見られる。我々が将来的に利用することになるであろう高度な地域医療を裏側から支える役割を同社グループは担っている。

加えて、本レポート冒頭でも触れたように、COVID-19に関してもH.U.グループホールディングス<4544>は非常に大きな社会的役割を担っている。試薬製造から検査受託に至る臨床検査において連続したバリューチェーンを有している強みを生かし、同社グループはPCR検査や抗体検査の受託だけでなく、自動化された検査機器ルミパルスを用いた高感度抗原検査試薬「ルミパルス SARS-CoV-2 Ag」や、検査機器を必要としない迅速抗原検査キット「エスプライン SARS-CoV-2」を製造・販売している。これによりあらゆる場面での検査需要に対応しており、COVID-19罹患者の早期発見に積極的な取り組みを行っている。

メディアでよく取り沙汰されている「PCR検査」とは、Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、検体に含まれるウイルスの“遺伝子”を増幅させることで検出する検査方法のことを指す。COVID-19の終息のために必要なのは、ワクチンや治療薬の開発だ。しかし、世界中で集中的に取り組みを進めたとしても、ワクチン開発については一定の時間を要する。むしろ、ワクチンが開発されるまでの段階で重要となるのは、いわゆる「3密回避」など一人ひとりの感染防止に資する行動に加え、PCR検査によって感染者を迅速に把握し、適切に隔離処置や管理を行うことで集団感染などを防止することである。

同社グループは、COVID-19のPCR検査における検体種別に“唾液”を追加し、医療機関からの唾液検体による検査受託を2020年6月2日に開始している。COVID-19の拡大当初は、PCR検査では鼻咽頭ぬぐい液が検体として用いられていたが、保険適用の開始を受けて迅速に対応を行った(唾液の方が、患者の負担とともに検体の採取時の医療従事者の感染リスクが低下する利点がある)。

また、新型コロナウイルス抗原の迅速抗原検査キット「エスプライン SARS-CoV-2」で用いる検体処理液が、インフルエンザウイルス抗原の迅速診断キット「エスプライン インフルエンザA&B-N」においても使用できることを確認したと2020年7月27日付で発表している。流行期をこれから迎えることになるインフルエンザウイルス抗原と目下感染が再拡大している新型コロナウイルス抗原の 2 検査を同一の鼻咽頭拭い液検体で簡便に行うことが可能となるという意味で非常に意義がある。なぜなら、2019年-2020年のインフルエンザの流行は例年に比べて限定的であり、2020年-2021年についても人々の感染予防に対する意識の高まりで大規模な流行にはならないと予想される。どちらに感染しても似通った症状であるが、それぞれ異なった適切な治療を行う必要がある。このことから、同一検体を用いた迅速抗原検査が可能となったことで検査処理効率が上昇し、同社の業績面でも効果を発揮してくることになるだろう。加えて、検査処理効率の向上だけでなく、検体採取とその後の流れが一本化できることで、患者はもちろん医療従事者の負担低減にも大きく貢献することができる。

同社グループは、COVID-19の拭き取り検査の受託も2020年8月3日付で開始している。同検査は、医療機関や飲食店・宿泊施設等の法人をサービスの対象として想定したもので、ドアノブやテーブル、手すり、エレベーターボタン等、人の手が多く触れる箇所を綿棒により拭き取ることによって検体を採取し、PCR 検査を実施するものだ。

さらに、経済活動の本格的な再開という命題を語るうえで避けられないのが、入国制限の緩和だ。緩和について不安視する声も聞かれるなか、同社グループはCOVID-19の感染について、1検体あたり30分以内で逐次検査が可能な抗原検査装置と試薬を全国の主要国際空港を中心に供給することで貢献している。当初の空港検疫では、検査結果の判明まで1〜2日を要したことで、検査対象者が待ちきれずに自宅などへ移動し、感染を広げてしまう事例が報じられるなど、社会的にも大きく問題視されていた背景がある。

なお、同社グループでは、2020年8月12日に迅速抗原検査キット「エスプライン SARS-CoV-2」、及び高感度抗原検査試薬「ルミパルス SARS-CoV-2 Ag」について、CEマークを取得したと発表。これにより、欧州及び中東・アフリカ(一部地域を除く)において体外診断薬としての販売が可能となった。「エスプライン SARS-CoV-2」は、常温での貯蔵が可能であることから、広範な地域においてCOVID-19の検査に貢献できると期待される。 「ルミパルス SARS-CoV-2 Ag」については、唾液を検体に用いることができ、検査工程が全自動化されているため、病院等の医療機関において効率的な検査に貢献できるだろう。


同社は創立70周年という節目を迎え、2020年7月1日付でみらかホールディングスから、現在のH.U.グループホールディングスに社名を変更した。新社名における「H.U.」は「Healthcare for You」を表している。その際に「ヘルスケアにおける新しい価値の創造を通じて、人々の健康と医療の未来に貢献する」というグループミッションを新たに掲げた。 COVID-19の拡大という世界的な脅威のなかで、同ミッションにしっかりと沿う形で、上述のような取り組みを展開している。


(執筆:フィスコアナリスト)





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